全国の佐藤さん廃止します

全国の佐藤さん廃止します

『ビリリリリリリリリ、ビリリリ…』

時計の針は7時30分を回っていた、遅刻じゃん。社会人になって遅刻とかダサい。

「しゃーないか」

神崎晴翔かんざきはると 30代童貞

この歳になっても童貞かよ、彼女作りたい。いやまぁ?彼女がまだできない俺かっこいいじゃん?

なんか最近の若者は出会い系アプリで出会ってセックスしてカップル誕生!とかさ?変わったねー世界は!


さ、そろそろ朝ごはん食べるか。食パンあるけど放置しすぎて腐ってんだよな。いや食えるか、気合いで食べよう!


ゔぅえ、いやまてまてまて死ぬ死ぬ。「気合いで食べるか」ってアホか、こっちは命かかってんだよ。

まぁさておきニュース番組を見るためにテレビをつけるか、ニュースキャスターさん可愛いんだよね。


『続いてのニュースです───』

「えええ、可愛くないー。残念だわ」

くそくそくそ!あー可愛いニュースキャスターさんがよかったんだけどー。


『政府から佐藤さん廃止法を発表しました』

佐藤さん廃止…?

「は?」


佐藤…佐藤?

政府よ、何が佐藤廃止法だ?有名人もザッといなくなるんだぞ、可愛い女の子も、そして俺の大親友も。


『このことに政府は「500年後の日本人、全員佐藤さんになるというところから廃止を決定しました」とのことです。』

「政府って偉いか?10年前はお前も少年だったろ」

そうだった、俺も10年前は少年だったんだろ?教室の端っこで本を読んでいた陰キャ。陽キャに机を囲まれることもあった。


「佐藤廃止か」

何故こんな2次元みたいなことが起きる?笑える。俺はこれが夢なのではないかと現実逃避し始めてきた。

頬を叩く、痛みは感じる。イヤホンして音楽を聴く、やっぱりこれはいい。


夢じゃなかった、これが夢で遅刻したことも消えればいいのに。


「佐藤ともっと青春しとけばよかったなー」

俺は後悔した。

「佐藤ともっとゲームしとけばよかったな」

佐藤と一緒にやるゲームは楽しかった。

佐藤に勧められた音楽も佐藤と喧嘩した日も全てが尊く、そして遠く見えてきた。


『全国の佐藤さん逃げてください』


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

全国の佐藤さん廃止します @Ace_niko

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ