第3話 てんかん~誤解②

二度目の来院。

彼女の表情は明らかに変わっていた。

多少の効果はあったようだ。顔に赤みがさしている。


「現在は、どれくらいの頻度で発作が起こりますか?」


彼女は、二週間に一度程度発作があるといった。

この言葉を受けて、私は彼女にこうアドバイスをした。


「では、次にこちらへ来れるのはいつですか?」

「ちょっとわかりません……」

「では、次にここへ来るまで、絶対に発作は起こさないと決意してください」


彼女は、非常に意志の強い眉毛で「はい!」と力強く答えた。

私は、これは見込みがあるかもしれないと感じた。


それからほどなく一か月が過ぎた。

彼女からの連絡がなかったため、私はあらかじめ聞いておいた連絡先にメールを送った。

多少の不安はあったからだ。

もし、彼女が、「発作を起こさないと決意したのに起こってしまった」と落ち込んでしまわないかという不安だ。

ところが、彼女からの返信はこうだ。


「先生、あれから発作はありません!」


「それはよかった。でも、なるべく早く来てくださいね」

私はそう返信し、次の一手を思案した。


漢方学的には、脾の働きをよくし、血を養い、陰を補う施術しなければいけない。

緊張が強ければ、熄風や理気も必要だし、疲労が強ければ、補腎も必要となる。


霊的にはどうだろうか。

今のところ、奴の姿を見てはいない。

感じてもいない。

しかし、てんかんである以上、必ずなんらかの影響があるはずだ。

ましてや、発作は彼女の理性の弱ったときに起きている。


そもそも、憑依とは、憑依する霊が抱いている「悲しみ」「苦しみ」「怒り」そうしたネガティブな念と同じものを抱いたとき引き寄せられて結びつく。

持続的に抱いていれば、常連が憑くし、突発的につく場合もある。


発作が出たとき、彼女がどんな思いを抱いていたのか。


それがわかれば、奴を追い出すことができるのだ。


そんなことを何日か考えていると、彼女が来院した。

発作が出てしまったという。


そのとき、彼女はどんな感情を抱いていたのだろうか。

「それが、わからないんです。実は、眠っている間に発作があって……」

「夢は? なにか夢を見なかった?」

「夢はとくに見ていません……」


通常の診察をつつける。

「立ち眩みは?」

「そういえばなくなりました」

「寝汗は?」

「寝汗もなくなりました」

「耳鳴りは?」

「耳鳴りも」

「目のかすみは?」

「目のかすみも!」


症状自体は、改善し始めている。

「でも、まだ唇がカサカサで真っ白なんだ。だから油断はできない。私は、この唇の状態と発作が関係していると感じるんだ」

私は彼女にそう告げた。



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