2-1 人見知りには厳しい

 異世界に来てから1ヶ月が経った。1ヶ月も経つと俺達は得意不得意な事が段々と分かってきた。そして距離も少し縮まった。俺は全員の事を名前で、敬語を使わず話せる様になった。しかし距離が離れていった人も居る。来弥と嵐央は何故か少し暗くなった気がする。


 とは言ったもののここ何年も俺は心を開いた記憶がなく一定の距離からずっと動かない。今日も外で皆は一緒に訓練をしているが、俺はずっと1人で城内の図書館に篭って本棚の裏の隙間に篭っている。訓練は夜に1人で静かに行っている。やはり俺は人付き合いが苦手だ。


「はぁ……、」


 と溜息をつく。俺が読んでいるのはルイス国王の進めで炎魔法や火関係のスキルに関する本だ。


「…お前は皆と一緒に外へは出んのか?」


 ページを捲り、次のページを読み始めたところでその声に気付いた。


「まぁ……って!?」


 ばっ、と顔を上げるとルイス国王が見下ろしていた。そして何故かルイス国王は隣に座ってきた。


「ルイス国王、なんでここに…?」


 誰にもここに居ることは言ってないのに……


「ルイスでよい、敬語も要らぬ」


「え、えっとじゃあ……ルイス、」


 明らかにルイスの方が目上なのに、流石一国の王だな、


「……我も夢庵で良いか?」


「あ、うん。そしたら改めて宜しくルイス!」


「あぁ。夢庵、宜しくな!」


 この人って、こんな顔できるんだ。ルイスは絵に描いたような満面の笑みを浮かべた。少し、いやかなり怖い人だと思っていたけど、この人もしっかり人間をしているんだなと思った。


「……ところで、ルイスはなんでここが分かったんだ?」


 ただでさえ広い図書館なのにここはかなり奥だし、本棚と壁の小さな隙間だから中々見つけられないはずなのに……


「ここは俺の城だぞ?こんな所とっくに見つけてるに決まってるだろ、?」


 あ、そうか。

 そういえばそうだな、ルイスは産まれた時からこの城に居るんだもんな、それはバレるよな、

 俺って言ってた……やっぱり役作りなのか?


「良いよな、ここ。俺も昔よくここに逃げ込んでたよ」


「え?」


 逃げ込む?昔?


「俺は乳母が嫌いだったんだ。朝起きたら夜寝るまでずっと法律や礼儀作法、剣術武術に外国語その他沢山を叩き込まれる。遊べる時間なんてなかった。そんな時にここに逃げ込んで泣いていたんだ。ここならメイドたちにもバレないからな、」


 今となっては苦い思い出だよ、とルイスは笑う。王様っていうのも大変なんだな…そうだ、あの時なんで2席空いていたか聞いてみるか


「なぁ、1か月前に晩餐会を開いただろ?あの時なんで2席空いてたんだ?」


 しまった。俺がそう言うとルイスは下を向いて暗い目をしてしまった。触れてはいけなかったのかもしれない。


「……俺達はもともと9人兄妹なんだ。俺は3番目第2王子だった。1番上、長男の第1王子はレオン・ジェネア・ケルラ。2番目には長女の第1王女イルゼ・ジェネア・ケルラ、レオンは3つ、イルゼは2つ上の兄上と姉上だ。2人は魔人軍が進行し始めた半年程に兄上は軍の統率者として、姉上は救護班として軍と共に王都を出て、隣国との連合軍計2万人と魔人軍の対処に向かった。だが帰ってきたのは兄上の剣の柄とこれだけだ。」


 ルイスは服の内側から1つの古びたようなペンダントを出した。恐らく緑色だった宝石が金色だったであろう装飾の中に埋め込まれている。


「古びている様に見えるか?」


「え、あ……うん。かなり、」


 ペンダントは所々錆?のような黒みがかった赤茶色のものが付着している。


「これは血だ。沢山の者達の血、姉上の血も混ざっている。このペンダントは出軍の際に姉上が付けていたんだよ。」


 血……!?


「……ごめん」


「いや、これだけでも戻ってきた事を喜ばなければこの先やっていけないからな、」


 ルイスはそう言って笑ったけどやっぱり寂しい目をしていた。




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こんな俺らにどうやって世界を救えと!?(仮) @tyeri_sakura

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