第20話 アマデウス発進!

 その後すぐの話になる。どうやら第二王子の暴走を止めるために、後追いで五騎の人騎が駆けつけてきたようだ。その人達とは戦闘にはならなかったが、リュウドの予想通りに機体の返還を要求されたようだ。


 あとはそれとは別に正式な謝罪をしたいと王都に招かれることになった。それはリュウドたちだけでなく、俺たちに対してもだ。正直な所面倒くさいしこの世界の権力者と関わりたくないという思いもあったが、一度話し合っておけば他の施設への訪問もある程度スムーズに進むのではないか、と姉さんと共に結論付けた。


 ただし施設の開放や技術の譲渡などは絶対にしないという事を使者には伝えてもらい、それでも良いならお招きに預かるということになった。そして一週間ほどたった頃に再び使者が訪れて俺たちは王都へ向かうことになった。


 壊れた機体は最低限動けるところまで修理をしてからお持ち帰りしてもらった。第二王子も一緒にセレスティアといっしょにドナドナしてもらったようだ。このあたりは俺たちは関与していないので、いつの間にか終わっていた話だ。


 あと結局あの黒い陽炎と黒い魔法のことはわからなかった。リュウドには第二王子に尋ねてもらったのだけど、最初に倒れた以降のことは覚えていないらしい。砕けた魔石を回収してアーシアに解析してもらったが結局何もわからなかった。


 リュウドたちに魔法のことを尋ねても、人には使えずに魔物がたまに使うものということくらいしかわかっていないのだとか。魔物の体内で作られる魔石と、魔物だけが使える魔法の存在、それだけでも魔石がキーとなっているのだろうな。


 仮に原因が魔石なのだとすると、俺たちの使っているディーヴァにも魔法的な何かが隠されているのかもしれない。ただあの黒い陽炎を見た感じではろくなものでは無いというのはわかる。その辺りは各施設を回ることでわかる事を期待したい所だ。


「それにしてもこれはすげーな」


 街の外には見送りのためか人がごった返している、その人達がこれ以上近寄らないように多数の人騎が囲んでいる。そんな中リュウドが俺たちの大型輸送艦を見あげて声を上げた。元々はディーヴァ一体だけが収納できるトラックで旅をするつもりだったのだけど、今後のことも考えてこの大型輸送艦で旅をすることにした。


 この大型輸送艦ははかなり大きく、ディーヴァクラスの機体が三騎乗せられるほどの大きさがある。全長約二百メートルあり空を飛ぶことが出来る。ただこの世界で空を飛ぶというのはかなり危険なようだ。いつかみたドラゴンやワイバーンだけでなく、宗教的にも空を飛ぶ行為は極力しないほうが良いようだ。


 この大型輸送艦は陸での運用も出来るようになっているので問題はない。それとこの大型艦は居住スペースも有り、ある程度の自給自足できる小型農場設備もあったりと至れり尽くせりになっている。


 実はこの機体は地球で作られたものではなく、魔王討伐に向けて新たにこの世界で作られたもののようだ。ただ魔王討伐のたびには完成が間に合わず今回の旅が初運用となる。


 さてここで旅の仲間の紹介だ。

 まずは姉さんの体を持つケイカ、俺だな。次にキュートな白猫の姿をしている俺の姉さんであるケイナ。そしてこの大型輸送艦を全面的に運用するヒト型補助ロボットのアーシアだ。アーシアまで来て施設はどうするのかと思うだろうが、あの施設は俺達がたどり着くまでの状態に戻すのでアーシアは必要なくなる。


 本当ならアーシアは施設運用を任せようと思ったのだが、俺たちが戻ってこれない可能性も考慮して共に旅をすることになった。それになんとなくアーシアも俺達に着いてきたいように感じたんだよな、そんなことあるはず無いのにな。


 お次はゲストだな、王都まで限定のゲストとしてリュウドとイリナの二名だ。流石に領主一族が全員領都を離れるわけにはいかないのでセリカだけは残ることになったようだ。


 その辺りの采配は俺たちは関わっていないので何があったかはわからないが、リュウドの頬に手形が付いていたことからなにかはあったのだろう。そういうわけでそれに合わせて、二人のイーファもこの大型輸送艦に乗せられている。


 王都まで向かうルートはなるべく他の街などは寄らないで進むことにしている。王都までこの大型輸送艦の移動速度だと何事もなければ二日ほどで着くから寄る必要がない。寄ったら寄ったで面倒事が起きるのは目に見えているというのもある。


「それじゃあ、姉さんそろそろ出発しようか」


「そうね、色々と世話になったわねセリカ」


「いえ、こちらこそお世話になりました、旅の無事を願っておりますね、ケイカさんケイナさん」


「ありがとう、また会いに来ます。俺たちの拠点はここの研究施設ですから」


 セリナに別れを告げて大型輸送艦に乗り込む。艦長席には俺が座り、すぐ横に姉さんが座れるスペースが作られておりそこで姉さんが丸くなる。反対側にはアーシアが座るが操縦や索敵などはアーシアにまかせている。リュウドとイリナがゲスト席に座りシートベルトをしてもらう。


「セリカ様、セリナ様、よろしければこの輸送艦に名前をつけていただけませんか?」


「あーそれもそうだな、輸送艦っていうだけじゃあな」


「確かにそうね、なにかいい名前はないかしら」


「名前な、俺も考えても良いのか?」


「いい名前なら採用するよ」


「アマデウスとか」


 イリナがポツリと呟いた。


「アマデウスか、確か神の愛とかだったかしら」


「アマデウス、アマデウス、うん良いかも知れないな、それじゃあ今日からこの輸送艦はアマデウスと命名する」


「えっ、本当に良いの? 昔読んだ本に出てきた名前なだけなんだけど」


 名前を採用したらイリナ自身が驚いている。


「それじゃあアーシア頼む」


「かしこまりました。アマデウスを走行モードに移行します」


 アーシアの操作の元アマデウスが移動の準備を始める。艦橋のモニターには外の人達がざわめいているのが見える。最初の目的地は王都、それが終われば第一研究所だ。そこで俺の体が再生できればいいが無理なら他の施設を回らないといけない。仮に第一研究所で体を再生できたとしても、他の施設の状況なんかも確認したいと思っている。その考えは姉さんとアーシアとも共有している。


「よし、それじゃあ目指すは王都、アマデウス発進!」


 俺の掛け声と共にアマデウスは東へと進み始めた。


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 これにて第6回ドラゴンノベルス小説コンテスト中編用の作品は狩猟となります。


 最後によろしければ★での評価などしていただけると嬉しいです。

 既に入れているよという皆様には心からの感謝を。


 これの続きはまあ結果次第ですね。もしかすると長編に書き直してなにかのコンテストに出すかも知れません。

 ただただ時間がですね、ウボォーと吐きそうなほどありませんのよ。


 それでは皆様ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございます。

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姉猫異世界巡り~実験機乗りの最強姉弟冒険譚~ 三毛猫みゃー @R-ruka

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