ラスト一行のインパクト。その破壊力があまりにも強すぎて、読後しばらくはこの作品のことで頭がいっぱいになりました。
『ぼくのお兄ちゃん』。タイトルの通り、ほのぼのとした感じで話が進みます。
『論理クイズ』の問題を解いている『僕』が、お兄ちゃんに答えを聞きます。
『三人の内、二人が正直で、一人が嘘つき。三人の証言を聞き、花瓶を割った犯人を当てましょう』
たまに見かけるタイプの有名な問題です。解いた経験のある人は少なくないでしょう。
本作は、そんな有名なこの論理クイズを巧みに使い、『ある強烈なインパクト』を醸し出してくれます。
読み進める中で『僕』と『お母さん』のやり取りを聞き、「ああ、そういうタイプの話か」と一旦は理解した気になれます。
……でも、それはあくまでも『一旦は』という話。
その先、ラストの一行で待っている『あるセリフ』を見たことで、世界観が一変しました。
最終的に読者を強烈に巻き込む形で終わりを迎え、じわじわじわっと想像力を刺激されるようになっていきます。
「これは、こういうことか?」、「いや、この可能性も……」、「まだ、第四の人物がいる可能性だって!」と、いくつものパターンを思い浮かべることでしょう。
とても遊戯性が高く、強烈に心に残る稀有な一作です。