第44話 引き渡しと解放

 そうして、ボスを部屋から引っ張り出すと、他の奴らもついてくる。

 周りからの銃撃を食らいながら、ビルの外へと出てくる。


 俺達は、平気で燃えさかる炎の壁へと姿を消す。流石に、ついてこられないようだ。


「ここって、消防とかも無いんだな」

「燃えれば、それに乗じて脱出できるとか考えていそう」

 シーヴはそう言いながら、めがねをくいっとする。

 鼻が低いから、下がるんだろう。

 外せば良いのに。

 言わないけどね。


 町の外へ引きずり出し、州長達に渡そうとしたら、控えていた隊員の数人が、小銃を構えて、俺達に向かって発砲する。


 そいつらに向かい距離を詰める。

「くそう。ボスを……」

 潜入した隊員がいたようだ。

 雷撃を喰らわせて、取り押さえる。


 州長は目を見開いているが、俺は強引にボスを渡す。


 その後、燃えさかる町に向かい、雨を降らせる。

 雨と言うより、滝のようだがまあ良い。


 ついでに、町を囲うボロい壁をぶち壊す。


 壁を、家の壁にしていたようで、いくつかのバラック小屋が崩れ落ちる。

 住人達は驚いていたようだが、そっと手を上げる。

 こっちには軍が居て、銃口を向けているからな。


 こうして、予定されていた掃討作戦が、今から執り行われる。

 再三の攻撃行為に関する、自衛のための反撃。

 そして犯罪者の逮捕が、執行される。


「いけえ。殺っちまえ」

 殺伐としたかけ声だが、今まで家族達を攫い極悪なことを続けてきた報い。

 同情はしない。余所の星からお客さんも来たことだし、少し人類は進化した方が良い。


 突入をしていく兵達の顔に、妙な狂気に近い感じが、見え隠れする。


 抑圧されてきたもの、今それを自らの手で破壊をする。

「俺もあんな顔をしてる?」

 ついシーヴに聞いてしまう。

「息吹は、その時によって違う。嬉しそうだったり、悲しそうだったり、この前の闇の時は楽しそうだったニャ」

「あれは、死にそうだったけれどな」


 そっと腕を組んでくる。

「今は悲しそうニャ」

「そうか」


 やがて音が止んできて、奴らの仲間だった奴らが引きずり出されてくる。


 次々にバスへと乗せられ、収容所へ連れて行かれるそうだ。


 収容所と呼ばれているが、刑務所だ。

 組織の連中と、ボスは分けられる。


 そして、住民達が引きずり出されてくる。

 治療を受けたり、社会的リハビリをしたり。


 受け入れ用の、集合住宅は造ってある。


 まあそんな事を繰り返して、やはり、徐々に世界を安定させていった。

 スローガンは、世界に平和を。


 そして、月日は流れ、ファジェーエヴァから、最後の移民が出発をした。

 

 代表エイミー=アンジェラ=リンジー=エルズバーグたちは、移民船から、敬礼をしながら別れを済ませる。

 もう星は冷え、何年もしないうちに、生き物は生きられなくなるだろう。

 この船には、ノアの箱舟よろしく、固有種の一団が積まれている。

 外来生物なので、地球上では放すことはないが、一応連れてきているようだ。


 生命体が発生していない、移住可能な星が見つかれば解放すると聞いている。


 そうして彼女達が旅を終え、地球に来て落ち着いた頃。

 

 地球において、投票を行った。

 まだいくつかの日本じゃ無いところがあるが、そこにも声をかけに行った。

 いくつかの殴り合いの末、快く投票に参加をしてもらうことになる。


「彼女達は、ファジェーエヴァ。他の星からの移民です。不幸にも探査船の故障から双方にとって不幸な出逢いとなりましたが、これから先、同じ事が起こることは予想されます。旧世界は滅び、新たなる世界が始まった今。正式な、中央政府を立ち上げ。地球を管理しようじゃありませんか。旧国際連合のような中途半端なものでは無く。決定権を持ったものです。そうしなければ、地球は有事において非常に脆く、決定においても、何かが決定される前に滅ぼされる可能性があります。事故ではありましたが、一方的な攻撃に対処できず、なすすべ無く蹂躙された。歴史が物語っています。今こそ、地球の意思をとりまとめ管理する中央政府樹立を行いたいと思います」


 空に浮かぶモニターに、代表エイミーや獣人たちが数名。

 そして、なぜかじいちゃんが日本の代表。


 俺達は、脇でその様子を見守っている。


「それでは、投票をお願いします」

 モニター上に、イエスとノーの票数が表示されている。


 まあ圧倒的多数で、イエスとなるのが判っている茶番。

 だがそれにより、中央政府の樹立が決定された。

 これにより組織はできる。


 一応ノーを入れた場合は、特別自治国として存続するが、他国のため、為替や関税が必要になる。

 それに、技術も含めて、旧世界にあったものしか輸入できない。


 反論はあったようだが、「他国なので防衛手段です」そう言う内容の書面が、正式な回答として、返された。


 こうして、例の事故から八年。


 地球は、統一政府を樹立した。


 まだ、知られていない闇の存在に、いくつか残る自治国。

 問題はいくつかあるが、手を取り歩んでいこう。


「さて、次の議題だが……」

 未だに、重要な項目は、神谷家の茶の間で決定される。


「お前たちの結婚式はどうする?」

「するー」

「したーい」

「したいけれど、放送とかしないよね」

 それを聞いて、じいちゃんはにやっとする。


「当然するさ」

「じゃあ。やだ」

 それを聞いて、シーヴが、笑いながら突っ込む。


「じゃ杏は、家で留守番」

「何それ…… そんなの、駄目に決まっているでしょお」


 神谷家の茶の間は、いつも賑やかなようだ。



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 ざっとプロットを書いたときには、いけると思いましたが、意外と構成が難しく、短い話しになりました。

 お読みくださりまして、ありがとうございました。

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発見された地球。それは恩人である勇者の母星だった。なぜか起こった攻撃。両者は手を繋ぐ道を模索するにゃ。 久遠 れんり @recmiya

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