この美しく残酷な世界

@ky-maronn07

第1話 幼女との出会い

「私はこの時の事を、あの幼女の事を、あの忌々し戦争の事を、一生いや何生も忘れないだろう。」



1923年、冬その少女は敵国貴族の薄暗い奴隷部屋にいた。

「2班は3階を!4班は2階から1階を奴隷がいないか隅々まで調べろ!!。」

(ガチャガチャ)と銃や金具がぶつかり合う音が響く。

1922年、奴隷制度を支持するイングルシア帝国率いる東側諸国、

奴隷制度撤廃を支持するアスラ国率いる西側諸国との間で意見が割れ敵対関係に陥ってしまった、以降東側諸国と西側諸国の関係はますます悪化していきとうとう1923年冬、アスラ国はイングルシア帝国に宣戦布告した。



そして現在、我々第七中隊は、前線の後処理をしていた。

「ザッスマンとウィリアムは私と一緒に地下へ」

そう言って私と部下二人は地下へ降りていく。

「酷い有様ですねアリス少尉、、、」

目の前には全身丸焦げになっている死体、痩せこけている死体、鞭の傷跡が残っている死体目をつむりたくなる様な風景が飛び込んできた。

「、、、ここはの下級貴族奴隷部屋だここでは拷問や強姦、強制労働は当たり前吐き気がする。」



1秒も満たないとても長い沈黙の後

「この部屋で終わりか?」

「誰かいます!!」

そうウィリアムが声を荒げた瞬間私は目の前に広がる光景に理解ができなかった、肌や髪まつ毛、体の細部に至るまで白く美しい幼女がウィリアムの首を刺している、



「ザッスマン!」

「はい!?」

「上に上がって応援を呼べ!!」

「、、、わかりました!」



ザッスマンが勢いよく階段を駆け上がると同時に銃を構える。

「なぜ刺した」

「・・・」

「無視か、、」

徐々に距離を詰め。ついにアリスの間合いに入ろうとした瞬間、幼女がアリスを押し倒す。

「ガシャン」

衝撃で握っていた銃を落とした音が部屋に響いた。

「おうぇッッ、、、」

息が詰まるような感覚の中私は幼女の振り下ろす鋭利なガラスの刃を手でで受け止めた。



「ガラスを放せ」

「・・・」

「私たちは君たちを助けに来た!」

「・・・」

 絞りだした私の声は薄暗い部屋に木霊した。



(やむを得ない)

そう言って私は目の前にいる幼い子供と戦う覚悟を決めた。

一呼吸し、精一杯の力をこめ地面を蹴り上げ彼女を頭上に投げ飛ばした。

しかし空中で体をひねり地面に足をつけた。

(あの体制から受け身をとった⁈)

両者一息もつく暇もなく攻防を繰り返す、時間にすれば数秒か数十秒たったある時アリスは見落として事に気が付く。



(あの幼さでなんて身体能力だ仲間にすれば戦力向上につながるかもしれない)

(戦力?)

(私は何に疑問を抱いているんだ、、、!!)

(ウィリアムは!?)

(ッッ!)



思い込んでいた刺された傷は浅いものだと、命にかかわる重傷ではないのだと思い込んでいた、そう気がついてしまった、いや気ずかされてしまった。

(忘れていた激し戦闘の中で私は自分の事しか考えられなくなっていた、仲間が刺されている事を、、、)

そこにあったのは受け入れがたい現実だった、さっきまで一緒に行動していた仲間が命の光をうしなった物へと変わっていた。

「・・・」



私の中で行き場のない悲しみと怒りが互いに共存していた。

そして私は目の前の敵と戦うことを決めた。

湧き上がる怒りを足に力を籠め、一気に懐に潜り込んだ。

「!?」

幼女はアリスの強い憎しみにもとらえられる形相に少し泣きそうでそこでようやく年相応に見えた。

(何で今更そんな顔・・・)

「ふんんっ!」

私は目の前にいる仲間の仇に拳で力一杯顎を殴った。

壁際に倒れこんだ幼女はゆっくりと気を失ってた。



「生死を確認しないと、、、。」

仲間の生死を確認するため、ゆっくりとゆっくりとまるで泥沼に足が浸かっている様に重い足を引きずって、仲間の前まで歩み寄る。

生きているかもしれない限りなくゼロに近い可能性を信じて。

「そうだよ確認するまで分からないじゃないか。」

そう言って亡骸の脈を図った、だがかえってきたのは返事をしない動脈と指先に伝わる少しずつ冷たくなる体温だけだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

この美しく残酷な世界 @ky-maronn07

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ