いちごの君へ

菜月 夕

第1話

 風がパッと吹き上げ、前を歩いていた女の子のスカートを捲りあげてその白いイチゴ模様のついた可愛いパンツを僕の目に焼き付けた。


 眼の前で病魔におかされて弱ってしまった妻、あの時の女の子だったイチゴの頬も色褪せて今にも命の灯火を失いそうだった。

 なんとかしないと。

 この病気も今なら、もっと早く見つかっていたなら完治していた。その時に戻れたら。

 私は今まで研究していた時間理論を利用したタイムリープでその時に行って彼女に予防薬を投与した。

 何故だ。戻っても彼女は別な病魔でイチゴの頬は病んで青かった。

 今度はその病気の特効薬を過去に!


 眼の前で毒を吐く唇は毒のイチゴのようだ。

 あの時に知り合って妻になった彼女はその唇でいつからか毒を吐いて僕を苛む。

 だから過去に戻って彼女にあの病魔を植え付けたはずなのに、現在に戻っても相変わらず毒を吐き続けている。今度は別の病気で……。


 こんな事があるはずがない。時間は改変できないものなのだろうか。

 いや、時間改変の痕は残っている。しかし僕のつけた痕の上書きが窺える。

 可能性はあった。

 幾つもの{もし}で分岐していく平行世界。その根源は愚かにも妻を殺したくなるほどの僕、もこの世界の僕の根源も一つだ。


 そうだ、愚かにもこんな妻を愛し続けている僕もこちらの僕も同じ僕だが、その過去は同じでそれをお互いに変えようとしていたのに違いない。

 こんな泥仕合を終わらせねば。


「「そうもっと過去へ」」


 テレビで天気予報が丁度流れてきて今日は風が強くなると中位喚起をしていた。

 そうだ今日は二時間目には体育だ。風でスカートが捲れて見られても嫌だし、スカートの下には体育の準備も兼ねてあれを履いて行こう。


 そして風がパッとスカートを捲って僕の前の女の子の下着を晒した。

 ちっ、体育のブルマを履いてるんじゃん。

 カボチャのブルマに変わった未来はまだ知れない先だった。

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いちごの君へ 菜月 夕 @kaicho_oba

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