第5話 転移先

(そうして、転生した俺が一番最初に見たのは洞窟でした。なんでって思ったけど俺が吸血鬼だからそういう配慮をしてくれたのね。ありがとうシュリカ、けどこれじゃあどこにいるのかわからないね)


「まあいいやとりあえず出口が見えてるけど明るいから完全にお日様が出てるな。あと体全体がチクチクして痛いし——は? 俺、全裸じゃん、えっ嘘でしょ、服はどこへ?」


 奏水かなみは転生した際に肉体と魂だけをこちらの世界に移動させたから服などの所持品は一切持っていないのだ。


「どうやって服を得るかが第一目標か、葉っぱで隠すか? いや無いな、絶対透けるし、なら動物でも殺して革で作るか、けどどうやって服に加工するかが問題だからこれもない、じゃあ奪うか」


 至ってシンプルと思いながらそう言った奏水は夜にならないと行動することが出来ない為、吸血鬼となった今の自分に何が出来るのかを確かめて時間を潰すことにした。


「えーと、まずは太陽の光を浴びたらどれぐらいやばいのかを確かめた方がいいな」


 洞窟の出口、太陽が出ている方向に進んで行く度に奏水は体が焼けるような痛みに襲われた、流石にやばいと思った奏水は途中で引き返し元いた場所辺りまで戻ってきた。


「あーっ、やっば!! これは駄目だな体がちょっと焦げてるし今の一瞬で動くのもきつい、太陽の下に出るのは絶対に駄目だ。はぁー、死ぬかと思ったぁ、——うん?」


 奏水の体は体全体が焼け皮膚が剥がれ落ちたりしている箇所もあった、そう思ったのも束の間、彼の体が少しずつ再生し始めていたからだ。


「へぇーこれが吸血鬼の再生能力かもう痛みもおさまった、結構すごいなこれ。じゃあ次は自分の意思で血を操れるようにしないとだ、とりあえずそれらしくやっておけば大丈夫かな?」


 それから奏水の体感約10分がたった頃痺れを切らした彼は立ち上がり文句を叫んだ。


「そもそも使い方を教えられてないから出来るわけねーだろ!! ていうかまじでどうしようこのままだと再生するだけの吸血鬼になっちゃうよ。ていうかどうやって血を操るんだよ、全然わかんねーよ血を体外に出して武器にするとかさぁ…………そうじゃん体外に出して使うってシュリカが言ってたじゃん」


 シュリカとの会話を思い出しながら洞窟の壁を思いっきり殴り始めた奏水は手から血が流れ始めた瞬間に血の流れている手に意識を集中させ傷口から流れる血をナイフの様な形になるようにイメージし始めたが、その前に傷口が塞がってしまった。


「はあ〜。その前にまず傷口が自動で修復されるのをコントロールしろって言うのかよ。けど今ので少し感覚を掴めたところだから多分すぐできるようになるな」


 

「……できた。……っしゃあー!」


 ようやく血を操ることに成功した頃にはもう洞窟の出口が薄暗くなっていた。


「もう夜じゃん、時間経つの早すぎでしょ、まあいいや今から武器を作ればいいからな」


 そう言いながら再び手から流れている血を頭の中でナイフの形にする様イメージしながら体外に出た血液を液体から固体に変え血を固めたナイフを作り上げた。


「作れたぞー!! けど形が不恰好過ぎない? 多分大丈夫だと思うけど、これで武器も手に入ったし洞窟周辺の探索に行きますか」



 




 

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死んだけど、目の前の女神?に異世界転生できるって言われたけどマジ! @kidknt

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