KAC20243「はこばなし」

「これで箱物は全部運び終わったね」


「内見の時よりずいぶん狭く感じねえか?」


「荷解きした梱包はお払い箱になるし、余裕出るんじゃない?」


「そんなもんか」


「予備校併設なんて豚箱!バッファロー怖いし……!なあんて悲鳴あげて心細くしてたあの下宿よりはのびのびできると思うけど♪」


「こ、怖かねぇし!それに一緒に住むのはお前が心配だからであって……」


「はいはい、骨箱を叩いてないで手を動かす」


「ぐぬぬ……」


「箱買いしたお菓子を用意してます」


「む。はやく終わらせるとするか……しかし高校生の2人暮らしだってのに親父さん、よく許してくれたよな」


「ふふ。僕もいい加減箱入り娘じゃないからね!って……そもそも僕を“娘”にしたのは親友だったんだけど?」


「そこはほら、俺も一蓮托生で女になっちまってるわけだし……って。そういえば、親父さんは俺達の関係知ってんの?」


「え、えーっと。女の子同士なら間違いも起こらないって事で納得させたというか……?父さんも今更重箱の隅をつつくようなこと言ってこないだろうし大丈夫でしょ。きっと」


「信じていいんだな?」


「たぶん?それにたとえ親でも百合に挟まる男ってのは古来よりパンドラの箱なんだよ……」


「そもそも間違い起こしまくってる上に、元男が原材料の百合なんだがな?」


「ま、まあ?父さんの様子見なんて、すりこぎで重箱を洗うようなものだし?その時だけ淑やかにしとけば良いでしょ」


「ガバガバ説得の割にお前結構ずる賢い、いや、あざといよな」


「重箱の隅は杓子で払えとよく言うし、いざとなればそこら辺の寛容さを引き出すツボは知ってるよ?」


「やっぱりあざとい……だがそれも好き」


「純粋乙女の猫かぶり、開けて悔しき玉手箱♪」


「楽しそうだなあ……ところで、さっきから続く箱にかけた御箱もどき、その心は?」


「ホワイトデーにあたって眼前の恋人に箱推し……かな?」


「落ちてねえのに、堕とされた自分のチョロさが憎いぜ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

KAC2024 となりわに @tstel

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ