第32話

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 最後に追記があります

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「で、なんで背中に乗っかっているのさ」


 あの後、岬は私の胸で散々泣いた。

 鼻水とか涙とかでぐっちょぐちょになったのだが、まあそこはいいとする。

 しかしながら、通行人にギョッとした視線を向けられた時は少し恥ずかしかったんだけどね。


 とまあ、そんな訳で散々泣いた彼女が落ち着き出したんで、私は病室に帰ろうとした。もう夜11時に差し掛かろうとしているし、そろそろ戻らないと不味い時刻だ。


 だから帰ろうとしたのだが、彼女が私の背中に乗って離れようとしない。

 側から見たら背丈も同じくらいで姉妹がおんぶしている様に見えるかもしれないだろうが、こっちにしてみればかなり恥ずかしい。

 

「やだ、離れたくない」


 そんな事言われてもなあ。

 べっとりと張りつかれる方にしてみれば邪魔くさいんだよな。

 まあ、今は彼女を無理やりひっぺがすなんて事はやめといた方がいいだろうが。


「仕方ない、か」


 はあ、と溜め息を吐きそのまま歩く。

 てか私はこのまま病室に戻るつもりだが、岬はどうするつもりなのだろうか。


「で、どうするのさ。私はこのまま病院に戻るつもりだけど」


「一緒に寝る」


 おっと、そんなこと言われたらおぢさん照れちゃうじゃないか。

 

 ──なんてコメント民アイツらだったら言うんだろうな。

 私は別に照れたりしないが。

 まあ、岬は一見すると可愛らしい美少女だからこっちとしては悪い気はしないけどね。


「じゃあ、一緒に寝ようか」


 そう呟き、一緒に病院まで帰った。



▼△▼△


 

 私は現在入院している冒険者向けの病院だが、シャワーは基本的に9時から12時までの間だ。

 帰ってきた時には11時45分だったので、大急ぎでシャワー室に駆け込んだ。


「やっべ、時間が・・・・・・急ぐよ」


「うい」


 そう言って岬を連れてシャワー室に入る。

 まあ、病院のシャワーは患者専用だから本来は岬は入れないのだが、今回は秘密で連れ込んだ。

 だってどっちもびしょ濡れだからね。 

 雨と涙?でベトベトなのだ。

 このままシャワーを浴びねば気持ちが悪い。


 という訳ですぐさま服を脱ぎ素っ裸になる。

 

 岬も私同様に服を脱いだ。


「あれ?」


 てか、よく考えたら私、今推しの裸を見てるじゃん。

 ファンの誰も見たことのない彼女の一糸纏わぬ姿。

 やっべ、そう考えると背徳感すごいな。

 肌真っ白で綺麗だし。

 毛穴なんて本当に同じ人間か?ってくらいないし。

 あそこツルツルだし。

 

 あー、やばいな。

 犯罪臭がプンプンする。


「・・・・・・なに見てるの」


 推しの一糸纏わぬ裸を見ていると、怒られた。


「ハイ、スンマセンデシタ」


 と言うわけでそんな茶番をしながらさっさとシャワーを浴びた。



▽▲▽▲


 

「えーっと、君?これから寝る準備をするんだけど、ちょっと待っててくれない?」


 うーん?

 岬の事ってなんて呼べばいいのだろうか。

 あなた、は違うし、お前も違うしな。

 岬って呼ぶのもなんだか変だし。

 君はちょっと突き放した感じだしな。

 どう呼べばいいのだろうか。


 なんて悩みつつ、シャワーを浴びてスッキリした私たちは就寝準備をしようとしていた。


「・・・・・・ボクの事は君、じゃなくて岬って呼んで」


 少し照れた表情で岬はそう言った。

 

「了解。じゃあ、岬。この部屋にはソファーがあるから私があっちで寝るよ」


 この部屋は、尾間さんが取ってくれたものだからそこそこグレードが高い。

 よく医療ドラマとかで金持ちが泊まっているような部屋だ。

 とまあ、そんなお部屋であるため、当然ソファーも備え付けられているためあちらで私は寝ることとしようか。

 流石に同じベッドで寝るってのは不味い気がするからね。


「いや、一緒のベッドで寝る」


 はあ?

 そんなこと言われても、ねえ。

 ちょっとそれは世間が許しちゃくれませんよ。

 えっと、何?推しと同じベッドで寝る?

 なんだそれ。

 大好きな彼氏と一緒に寝るようなもんじゃん。

 実質ちょめちょめしてるようなもんだよ。 

 アウトだよ、アウト。


「ダメです」


 ここは大人として対応する。


「嫌だ」


「ダメなものはダメです」


「いーやーだー」


「頬っぺたを膨らませてもダメです」


 クソ可愛い。

 正直このまま抱きついて愛でてしまいたくなるくらいには可愛い。 

 風呂上がりにより濡れた髪の毛、火照った頬。

 どれをとっても超一級品レベルで可愛いのだが、何よりもそんなウルウルとした目をされたら心が揺らいじゃうじゃないか。


「ダメ?」


 やばい。

 ああ、やばい。

 推しにそんなつぶらな瞳で頼まれてしまったら断れないじゃないか。


「・・・・・・いいよ」


 私って案外チョロいのかもしれないな。

 そんな感想を抱いた。



▽▲▽▲


 

「スー……スー……」


 腕の中で岬が安らかな寝息を立てる。

 彼女の髪から、シャンプーと何やらよく分からないいい匂いが漂ってくる。

 私は洗髪はシャンプーとリンスだけで済ますから、なんでこんなにいい匂いがするのか分からない。

 なんでだろうか?


 ともかく、いい匂いがするという事には変わりなし。

 さらには眼前には美少女の安心しきったお顔が。

 その表情は陽だまりで丸まる猫のようだ。

 ちょっと気を抜きすぎじゃないか、と思ってしまうが、まあ仕方がないだろう。


 なにせ今まで頼れる人間がいなかったのだ。

 私もそうだったが、ようやく友達に頼るって事がなんなのか分かったのだ。

 佳たちには精神的に助けてもらったものだ。

 だから、今度は他者に施す番であろう。


 年数は私よりも上だが、今まで誰にも頼れなくて苦しんでいたのだ。

 どれだけ歳を取ろうとも、苦しさは和らがないのだ。

 誰かがその心を救ってやらねばならない。


(岬には幸せになって欲しいな)


 まあ、そんなこんなで長く考えたが、結局はそうなのだ。

 推しには幸せになってもらいたい。ただそれだけだ。


 こうやって、目の前でスースーと寝息を立てる猫みたいな推しにただただ幸せになってもらいたいのだ。

 そして、私はその手伝いをする。


(こういうのが母性なのかもしれない)


 ふとそう思った。

 

(まあ、少なくとも岬はきっとこれからもっと羽ばたくだろう。それまでは私がお手伝いをしようかな・・・・・・)


「スー……スー……」


 密かにそんな決意をしつつ、瞳を閉じる。 

 今日はもう疲れた。

 そろそろ寝るとするか。 



《完》




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追記


 ほっっっっっっんとうに申し訳ありません!

 もう、本当に、申し訳ありませんでした!

 

 こちらの方、最近更新できていないのですが、新作を執筆していたせいです。あと、リアルが忙しくなってきたから。

 ですので、大変申し訳ありませんが、この物語は一度ここで打ち切りとさせていただきます。


 本当に、本当に、すいませんでした!


 楽しみ待ってくださった皆様の期待を裏切るような真似をした作者ですが、新しく書いた新作の執筆がとても楽しかったのです。ですので、恐らくとても面白いと思います。


 こんな最低な作者ですが、まだ見捨ててないよって人は、新しい方からコンテンツをお求めください。


 新作

 ↓

【闇の暗殺者はお嬢様にTSする様です】

 https://kakuyomu.jp/works/16818093076338170501

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