第2話 推し活は下らないどうしようもないもの

 私は、異世界の自称女騎士を居候させている。

 別に、好きでさせてるわけではなくコイツが何を仕出かすか分かったものじゃないから。

 アーシアが、私の家へ来て1ヶ月半月経ってから今日は大切な、推しのライブがあったことに気が付く。


「あ~!! 今日、地下で私の大好きなアイドル。デビルワールドの木下たくみ《きのしたたくみ》くんのライブがあったんだ! 行かないと!」


 私は、急いで家のドアを開けようとした瞬間、アーシアがお菓子を食べるのをやめて、出ようとしたのを止めようと待てと口をだしてきた。


「何よ! 邪魔するき!」


「それはなんだ? 滅茶苦茶気になるから連れていけ」 


 私は、アーシアがアイドルのことを全く知らないと言ったことに、反応してその場でズッコケる。


「はぁ~!? あんた、そんなことも知らないの!?」


 私は、改めてアーシアに説明する。

 この世界では、アイドルという皆の人気者で素晴らしい容姿を持った、イケメンや美女がそれで歌をうたったりしてCDやグッズを売って金を稼いでる職場のことを。


「そうか……そのようなものがあるのか……」


 アーシアは、一旦アゴに手を当て考えるポーズをしながら、迷っていたものの急にこちらに顔を向けて、私もそれを実際に見てみたいと言って聞かなかった。

 どうやら、アーシアにとって全く予想がつかないらしく、興味本位の好奇心が勝りこの女はそういうことと食欲に関して、弱くすぐにアルバイトを始めて難なく仕事を覚えてこなすが、店長や客にキレてすぐにクビになる。

 本当に、この女は厄介。


「それより……早く! このせんべいという菓子を買ってきてくれ! 腹が空いてならん! 金なら、五百円とやらを渡すから!」


「はいはい! 分かった! コンビニ行って買ってくるから! 待ってなさい! 全く……」


 アーシアは、腹を出して爪でかゆいのか掻いていた、私があげたダサイ要らなくなった大食漢Tシャツを着ながら。

 アーシア、あんた前にご飯3号くらい一人で食ったくせに、よくそんなに食べれるは。

 アーシアの、食欲には圧巻されっぱなしの私ではあるが、それも暫く経って慣れてるがそうなっている自分も怖い。



 翌日、私はパパ活をしていたがアーシアに出くわしてしまった、貸しビデオ屋兼ゲーム屋の店のラオにおじさんと行った時の話。


「いらっしゃいませ!」


 アーシアは、制服に着替えていてもひときわその容姿と、髪色で目立っていた。

 私が、仕事を探してやったのだがふむ良さそうだと、偉そうな態度で吟味して評価していた。

 アーシアは、ビデオと言う物を見たことが無いらしく、拾ってから1日過ぎた頃に暇潰しで話題のアニメ、トップアイドル物語を見てたら私よりアーシアがはまってしまい、色んなDVDを借りてきてくれとせがむので、仕方なく毎回パパ活の帰りにやっていたら、調子に乗ってこの始末。

 この女騎士には、困らせられてばかり。


「甘寧! パパ活とやらか?」


「まあ……そうね」


 アーシアは、空気が読めないのかこういう言ってはいけない発言をすることが多い。

 いい加減、店長さんとかにもそれで怒られているのがやめてほしい。


「ちょっと! アシさん! お客さんに失礼でしょ!」


「すみません! 店長!」


「すみませんじゃないよ……そのせいで、この前もお客さん帰っちゃったんだから」


 アーシアは、空気が読めなく特にスケベ系のビデオを借りにくる客に、ほーいい趣味してるなといい意味不明な評論家ぶったことを言っては、店に迷惑かけて二度と来なくなるのは結構ある。

 アーシアが厄介なのは、それでも顔とか良かったり人に優しかったり、子供とかには滅茶苦茶人気があるので気にいられてるから、なかなか辞めさせられないとか。



 特に、オタクみたいなボーダー服を着ていてメガネをかけている、見るからに私からしたらあり得ないキモいのからも好かれている。

 ソイツらに、コミケとかに誘われたりしてコスプレとか言うイベントごとに参加させられそうになるが、興味がないという理由で断っている。

 物好きで、金をやるからやってほしいという連中もいる、私にはこの女の何処がいいのか分からない。



 夜になり、アーシアがバイトから帰ってきていた、私が家に着いてドアを開けるなり、第一声が腹が減ったから飯を作ってくれだった。

 私は、お前の嫁じゃないんだよ。

 アーシアは、私の愚痴と文句をスルーしてテレビを見ながら待っていた。

 私は、アーシアの大好物のシチューを作ってやり、喜んで旨そうに満足げに食べる姿は何か見ていてホッコリしてくる。

 アーシアに、最初料理を教えてやったのだが包丁を持っている剣のように、振り回すので出来そうにないし危ないのでやめさせた。

 よく、それで今まで生きていけたと思う、本人いわく騎士だからそのようなことは、ほとんど外食で済ませていたと言っていたが、たとえ異世界人でも出来るだろうと思う。

 私の方が、アーシアが上手いというのでしょうがなくやっているが、やりたくないことにはかわりない。

 アーシアに、対褒められてしまうとやってしまうが、いつもコイツの口車に乗せられる。

 アーシアの魅力は、最近コミュニケーション能力にあると気が付いた。



 それから、いよいよライブの前日カレンダーの文字を読んでいたのか、また行きたいとせがんできたアーシアを私は、適当な理由でも付けて誤魔化そうとしたら、アーシアには全然通じず頑固な一面を見せる。


「連れていけ! 甘寧! 行きたい!」


「だから! ダメだって!」


 私が、何度も言っても聞かないしつこさだけは一流の騎士である。 

 アーシアは、私をじっと睨み付けて鋭い眼光で蛇が獲物でも逃がさないように見てくる。


「あんた! どうせ、あっちで問題起こすでしょがぁ!!」


「そんなことはない! 私は、誇り高き騎士だ! 恥知らずの、その辺小物と一緒にしては困るな!」


 私は、ため息をつきアーシアを見てみてると威張っていて、腰に手を当て鼻息を荒くし堂々とした姿勢に折れる。


「分かったわよ! ただし! 迷惑かけるんじゃないわよ!」


「無論だ! 私を何だと思ってる! 国家直属魔王選抜騎士団のリーダーだ! 誇り高き騎士に二言はない!」


 アーシアの何処に、そんな自信があるのか分からない。



 アーシアと私は、ライブの日になったので会 場に来ていた頃で、盛り上がって歌をうたい終わって最後になる時、アーシアが突然キレて壇上に上がり指を差して怒鳴る。


「何だ! このワケわからんグッズとやらは! しかも、CDとか言うのも高すぎる! 五千円は取りすぎだ! どんだけ、ぼったくるんだ! ふざけるな!!」


 デビルワールドのファンは、アーシアの文句と言うかクーレムに一斉に怒りだす。


「何よ! この女!」


「私達の、推しに文句つけるの!」


「ふざけてるのはそっちでしょ! あんたみたいなのは、壇上に上がるな! それに、こんなことしてすむとおもってるの!」


「すみません! うちの、世間知らずのにわかバカ騎士が」


 私は、何とかことを納めようと謝り通していたが、アーシアの反省してない態度を見てか、私の言葉は届かない。


「ちょっと~、困るな~僕たちのライブを荒らしてもらっては」


「本当に、やめてよね~」

 

「確かに、安くはないかもしれないが他のファンの皆納得してるんだから」


 アーシアは、アイドル達四人の意見を聞いても全然納得せず、そっちの方向を険しい顔をして目を離さなかった。


「それにだ……このブロマイドとか言う、写真はなんだ! お前らの、写真はネットとかいう物に滅茶苦茶あっただろ! 買う必要ないだろ! それに、この下品な人形は全く好かん! 服を脱がせたら、下半身裸だろ! 明らかに、こんなもの売ったり、買ったりする奴らの考えが可笑しいだろ」


「そんなことを言ってもな~、皆それを楽しみにしてるし」


 アーシアは、毎回こういう余計なことをするからイベント事に呼びたくない。

 アーシアの言ってることは、一見正しいように見えるが私達ドルオタには関係ないどころか、迷惑その物でしかない。

 だから、来るなって言ったのに。


「あんた! アーシア! いい加減しろ!」


「いた! 叩くことないだろ……甘寧!」


「あんたが、ここまでしないと分からないだからでしょうが! どうするのよ! あんたのせいで、賠償金払わせられるのよ! いい加減にしなさい! この! 頑固大食い、脳筋バカ騎士女!」


「脳筋バカ騎士女は、酷いぞ! 甘寧!」


 アーシアは、そこまで言うことないじゃないかというように言っていたが、私は何時もの勝手きままな行動に腹が立っていたこともあり止まらなかった。

 アイドル達は、そんな私達を見てケンカの仲裁をしようとお互いの間にたつ。


「まあまあ! お二人さん、今回は賠償金は請求しませんので取り敢えず出ってもらえますか?」


「すみませ~ん、行くわよ! クソ騎士女!」


 アーシアは、肩を掴もうとした私を振り払い再び、アイドル達の元へと近づきクレームを入れる。

 本当に、恥ずかしいのでこれ以上やめてほしい。


「それに! こんな奴らの何処がいいのだ! 貴様ら、ドルオタと言う奴らはただ金を言い様に取られているだけじゃないか!」


 アーシアは、この場にいるドルオタをも敵に回してしまった、私はこんなイカれた女を拾ったことを頭を抱えながら後悔する。


「あんたね! 言っていいこと悪いことがあるわ! それは、ドルオタの禁句言葉よ! それに、彼らは私達に唯一優しく接してくれる男性なの! それが、分からないの!」


「そうよ! そうよ!」


「分からない……金を出してまで、そこまでして優しくされたいのが! 私は、気を遣ってもらって出る言葉なぞに、価値はないと思うから」


 ライブ会場全体が静まり帰る、そんな最中アイドルの一人で私の推してる、木下たくみがこの場をどうにかしようとする。


「とりあえず、ケンカはやめようよ。ね! 皆、楽しみにこのライブを来てるんだし」


「何を言ってるんだ! この! 女の金を巻き上げるしかない俗物が! 恥を知れ! 大体、何処がまともな職業だ! 甘寧が、言っていたこと違いすぎる! 結局、人の思いを利用して金を取ってるだけのろくでもない奴らの集まりじゃないか! いい加減にしろ!」


 私達ドルオタは、確かにそうかもしれないでもそれでも離れられないのだ、誰にも相手してもらえなくていじめとか嫌なことから逃れたくてここに来てるものもいるから。

 まあ、アーシアが言ってることの方が正論ではあるが。


「こら! アーシア! とにかく! 失礼だし! 帰るわよ! おさがわせしてすみません!」


 私は、アーシアのシャツの後ろの襟を引っ張り連れて行こうとする、だが木下たくみがアーシアに熱い視線を送っていた私達が出てくまで。



 それから一日が経って、家で最近バイトして稼いだ金で買ったスマホを見ているアーシアは、突然液晶画面を見せてきて質問する。


「何か、この前会ったアイドルからレインを聞かれて、答えらしょっちゅう連絡が来てうるさいんだが?」


「はぁ~、来るわけないでしょ! あんた、何か詐欺に引っ掛かってるんじゃない?」


「本当か? じゃあ、これを見ろ!」

 

 アーシアのスマホを見ると、間違いない木下たくみの番号だった。

 しかも、お忍びでデートをしたいという内容、この女は私が何年もかけてファンをしていても、やれなかったことを容易にしてくれた。


「ふざけるな!! 何で、あんたみたいな脳筋バカが推しに連絡出来て私が出来ないのよ! むきぃぃぃ!!」


「知らんぞ……そんなこと。それより、何か内容が気持ち悪いんだが……もっと、罵ってとか」


「そんなわけないでしょ! あんた! いよいよバカなだけじゃなくて精神も可笑しくなったの!?」


 アーシアに、木下たくみから送られてきた内容はもっと説教してくださいだの、気持ちいいので罵ってだの話だった。

 私は、幻滅してこのアイドルのファンをやめようと思う。

 それより、コイツの何処に魅力があるのか興味持った。


「そんなに、魅力的でいいのかしら? このバカな女が」


「何だ? 私の顔に、何か付いてるのか?」


「何でもないわよ」


「そんなことより、腹が減った! 飯を作ってくれ!」


 私は、アーシアを見ながら一瞬考えたがどう考えても、ただの見た目がいいだけの爆食い女なだけなので、こんな奴を参考にしてもいい女にはなれないと思い考えるのをやめた。



 アーシアは、それからも木下たくみに連絡が来ていていて、見せてもらったがやはりドMの変態みたいな内容だったし、ストーカー行為もしていてキモすぎたのでそれ以降は、私はアーシアに木下の話しは聞かなくなった。

 ただ、幻滅して落ち込むだけなので。

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逆転生女騎士パパ活女子に拾われる 黒金 影輝 @voltage

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