花に蜜蜂

荒屋 猫音

第1話

花に蜜蜂


5~15分

2人向け台本 性別不問

花江 読書が好き 蜂屋が嫌い

蜂屋 お調子者 花江が好き

ト書は花江

セリフは男女の絡みになっていますが

性別不問なので語尾変更や一人称を変更して読んでいただいて大丈夫です


一人称変更○

語尾、軽度なセリフ変更○

過度なセリフの改変‪✕‬


_____



0:私たちの出会いは高校入学。そして、同じクラスになったところから始まる


0:出席番号の都合から、私と蜂屋は席が隣同士になり、私としては静かに過ごしていたかった高校生活を、見事に初手で崩壊させられた


蜂屋:花江さん!今日は何読んでるの?


蜂屋:花江さん、教科書見せて?


蜂屋:花江さん!お昼一緒に食べよ!


0:こんな感じで、蜂屋は何かと私に関わってくる


0:非常に面倒臭い…関わってこないで欲しい…そんなふうに近寄ってくる蜂屋をとても冷たい目で見ながら


花江:うるさいので話しかけないでください


0:と言って、突き放した。


0:その時の蜂屋は、飼い主が出かけてしまった後の犬のような、何ともしょぼくれた表情をして、しばらく話しかけてくることはなかった


0:それでも、やはり何かと話しかけてくるのだ…


蜂屋:花江さん、この前はごめんね?


蜂屋:俺、なるべく静かにしてるから、あんまり嫌いにならないで欲しいな…なんて…


花江:静かにしてくれるなら別にいいです。うるさい人、嫌いなので。


蜂屋:あ…うん、わかった。


0:そうして、蜂屋は驚くほど静かになってしまった。


0:周りからは私が飼い主で蜂屋が飼い犬みたいだ、などと言われているらしい


0:私が待てをしたから、蜂屋が大人しくなった…と


0:あれだけ騒がしかった人が、誰かの言葉でこうも大人しくなるのかと、驚きを隠せなかった。


0:そんな時からだろうか…私は、自然と蜂屋を目で追うようになっていた


蜂屋:…何か付いてますか?


花江:え…いや、別に…。


蜂屋:えっと…俺、ホントうるさかったよね、ごめんね?


花江:…最近は、うるさくないので、気にしていません


蜂屋:ほんとに…?


花江:人が変わったようで驚いているくらいです


蜂屋:あははは…俺さ、なんか、花江さんに嫌われたくないんだよね


花江:そうですか


蜂屋:一目惚れ…と言うか、電気が走った…と言うか、なんかそんな感じ。


蜂屋:あ、この人に嫌われたくないって、初めて同じクラスになった時から、ずっと思ってた


花江:えっと…何が言いたいんですか?


蜂屋:俺ら明日卒業じゃん?だから、後悔しないように、花江さんに癒えなかったこと、言っときたくてさ


花江:卒業出来るほど成績良かったんですね


蜂屋:頑張ったんだよ、花江さんに見て貰えるように


花江:……まさか学年順位底辺だった人が、3年の期末で上位50人の中に入るなんて思わなかったです


蜂屋:花江さんは、進学するんだよね


花江:県外の大学に行きます、蜂屋君は就職でしたね


蜂屋:うん、春から一人暮らしもする。


花江:こう言ってはなんですけど…寂しくなりますね


蜂屋:え?


花江:蜂屋君、私にうるさいと言われてから、私が近くにいない時だけはしゃいで、私が近くにいたら大人しくなって…犬を見ているようでした


花江:それがなんだかおかしくて、卒業したら、そんな姿も見られなくなるのか…って


蜂屋:知ってたんだね


花江:蜂屋くんの事、うるさいとは言いましたが…声は、うるさくなかったです、良く通って綺麗な声だと思っていました


蜂屋:…花江さん、俺今日が命日でもいい…


花江:死ぬなら私がいないところで静かに死んでください


蜂屋:辛辣ぅ…


花江:こうやってちゃんと話すことが出来て良かった、ありがとうございます、蜂屋君。


蜂屋:…あの!連絡先、教えて欲しい!


蜂屋:たまにでいいから、またこうやって、話したい!


花江:…毎日だけはやめてくださいね、そんなことしたら即ブロックです


蜂屋:しないよ!


0:卒業式の前日、私達は初めて会話をした


0:やはり、この人の声は良く通る。


0:ストンと、身体に落ちてくる。


0:実は聞き心地が良くて、国語の授業中うっかり寝そうになったことがある…なんて、天と地がひっくり返っても教えてやらない


0:そして…数年後


蜂屋:花江さん、本当に後悔してませんか…?


花江:後悔しないように、蜂屋くんと一緒になるんです


蜂屋:いやだって、まさかこうなるとは思わないじゃないですか…


花江:なに?卒業後、実は就職先が私と同じ県で、私と離れるのが嫌で泣き喚いた挙句、ちゃっかり私の家まで知れて、ご飯作ったり泊まらせてあげたり、なんなら同棲みたいな事してたのに、いざとなったら怖気付く小心者だったの?


蜂屋:いや、それはそれと言うか…


花江:私と籍を入れるのが嫌かぁ…そうかそうかぁ


蜂屋:嫌じゃない!じゃなくて、本当に俺でいいのかなって…


花江:私が一緒にいたいと思ったのが、たまたま蜂屋君だった。


花江:結婚して同じ苗字になることも苦にならないと思えたのが蜂屋君だった。


花江:それじゃ不満?


蜂屋:…なら、ちゃんと好きって言って欲しいです


花江:…やっぱり蜂屋君は犬だね。


蜂屋:言ってくれないんですか?


花江:……ふふっ


蜂屋:え、なんで笑うんすか!


花江:教えてあげないよ!


蜂屋:ちょ、ずるいですよ、花江さん!


0:教えてあげない


0:目で追うようになったあの時から、きっと私は、蜂屋が好きになっていた。


0:なぜかはわからない…けれど、今こうして、紙切れ1枚を目の前にして揶揄うくらいには、蜂屋が好きで


0:犬のような蜂屋を毎日いじめるくらいに、私は蜂屋で遊べるようにもなった


0:今日が、私が花江である最後の日。だから、思う存分蜂屋で遊んでやろう。


0:明日から、私は花江ではなくなるから


0:蜂屋に好きというのは、その時まで取っておこう。


_____

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