観測レポート

――――現段階で処理された新規レポートを記載します。 


《アナライザースコープ》観測者が使用する観測装置。スコープとは称しているが、使用者によって形は異なるようで、使用するには二つのアイテムとホーム管理者の許可が必要になっている。わたしの場合コンタクトレンズと指輪だったが、それを与えた者から見れば、目薬と腕輪に見えているそうだ。


 その者によるとアイテムの付ける順番を間違えてしまうと、思念体に過度な負担がかかり、痛みを越えた朦痛もうつうに悶えることになる。実際、その者もわたしもそれを体験済みしている。


 機能としては情報の保存や分析を基本に、使用者の属性に因んだ能力や同じホーム所属者の能力を一部供用し、使うことが可能。持って帰ってきた情報は所属ホーム、または許可された、他のホームにも保存がされる。そうすることで、世界のカタチを維持し、新たな未来の発見に貢献することができるとか。


 その行いに何の意味があるかは解からないものの、わたしはその者をギャフンと何度も言わせるために、これからも観測者の任務を続ける。


 記述者 風の者 コハル。


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《ホーム》意味としては『帰る所』を形容した名称で、思念体の世界では言葉が無くとも会話することができるが、あえて文字に起こすことで低次元に対する基礎固めの効果を持つ。


 態度が悪く聞こえたなら一度は謝っておくが、それには理由があって、上位者が存在するにはある程度の低次元存在が必要であり、そういった存在に伝わらなければ、いつかは忘れられ、マザーのような存在になりかねない。悪そうに表現したが、ホームの空間を作る存在はそういった光を失った者たちだから、周囲が言うほど負の存在とは一概には言えない。


 記述者 深淵の者 ジュジュ。


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《作られた特殊単語について》現世は存在しない単語がいくつも存在するようで、初めて『涙』という大きく一括りにした単語概念を聞いたときは驚いた。でも、ウサギを羽と言い換えるような国生まれだったから、容易に受け入れることができた。


 いくら作られた単語でも文字の意味を知っていれば、なんとなく理解できるから、わたしには問題ないが、それを知らない者からすれば結構叩かれそうではある。


 記述者 風の者 コハル。


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《マザーとシードの関係》識る限り宇宙の始まりは一点で、そこから二つに分かれて、マザーとシードの素となる概念が生まれたそうだ。


 マザーは世界のカタチを保存し、シードは飛び交い形を変える性質を持っていて、その間にエネルギーが生まれて、シードはそのエネルギーを使い世界を拡大させ、マザーはそれによって生じた物質や情報を取り込み一点へと凝縮して世界のカタチを安定させる役目を担うようになったとか。


 かつてそのマザーの様子を『大きな生殖細胞のようだ』と形容し、入り乱れるシードのこと見て『自立して動く種』と形容した者がいた。そのため自分はその二対のことをそう解釈して呼んでいる。


 様々な観測方法を用いてその二対の存在を認識、作用の観察が可能だが、相手は12次元の存在なため、中途半端な次元に所属する者ほど理解には苦しまされる存在となっている。


 なぜそうなるかって?簡単な話、13次元=原点にして終着点だからだ。


 記述者 未来を見据える者 ミザ(キュヲ)。


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《言語翻訳について》よく異世界の言葉がなぜ翻訳されるのかと議論されることがあるが、これは上位者が力を与えた解析能力並びに提供者の言語能力によって適応される能力であって、万能ではない。もっともな話、その上位者がその世界の言語や感情を読み解く心の窓と能力が解放されてなければ、知らぬ国にぶち込まれたのとそう変わりない。


 記述者 不明。


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《善悪の解釈について》ミクロ(小さい範囲の善悪)、マクロ(大きな範囲の善悪)の概念が存在するが、ここでは『根源的な宇宙の善悪』を前提に語る。


 宇宙は五つの要素に分かれていて、記憶|破壊|創造|再生、という『触媒体』を中心にした要素で構成されている。


 マザーは性質上『記憶』の方に傾倒しやすく、シードは同様に『創造』に傾倒しやすい。ならば『破壊』と『再生』は誰の役割か?答えとしては誰でも良い。だが、善悪の量りにかけた場合、世界が維持できないほどの偏りは悪であり、そうならない限り基本は善であることがほとんどである。


 なにせ、創造者(シード)と観測者(マザー)がその宇宙に存在する限り、その摂理は果たせるからだ。とはいえ、性質上その二対の中間に存在する『触媒体』は破壊か、再生の仕事をせざる得ないのは大半であるが、稀にそれらを超える存在が現れる場合があるので一概には言えない。


 記述者 どこにでもいるマクロイアさん。


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《世界を描く顔料》よく顔料と形容されることが多いこの概念は、生命だけが作り出すことができる特別なもので感情や想念、影響力によって世界に色を与えることができる作用を持っている。物理的な概念ではないが、確かに現実に影響を与えている概念なため、軽視はできない。


 したがって、その顔料に込められた想いをひも解くことで、生きる面白さを発見することや他世界でも応用反映可能な概念を生み出すことことができるかもしれない。


 記述者 謎の星なき夜の傍観者 ミトラ


 ――――この時間空間での新規更新が確認取れ次第報告します。



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星願いのアサンブル 死者からの遺言の書編 冬夜ミア(ふるやミアさん) @396neia

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