第13話 ピンチはいつもチャンス。合コンに誘われる。桜が咲くといつも修羅場!

 世の中にはモテる人がいる。

 生まれた時から環境に、ルックスに恵まれて、自信に満ち溢れているからコミュ力すらも圧倒的な奴がいる。

 普通の奴がどんなに努力を重ねても、届かない世界があるのだ。


「会長……」

「おや佐藤君、そんなに見つめられると食べてしまうよ?」


 スクールカーストの頂点。

 全校生徒の憧れで、同性ですら見惚れるようなイケメン。

 この学校の生徒会長にして、全てを持つ者。嫉妬する気すらおこらないような格上の男子生徒――それが彼だったはずだ。


「冗談ですよね?」

「僕は嘘は嫌いでね、いつも正直に生きているよ。下半身に」

「最後ので台無しだよ!」


 女子相手の台詞なら、まだギリギリ理解できるが……。

 言われてるの、俺なんだよなぁ。


「ふむ……。僕は俗に言うバイというやつでね。男でも女でもイケる」

「お、おう」

「そう警戒しないでくれ。無理やりは趣味じゃないんだ」

「はぁ……?」


 どうしてだろうか、担任教師に比べたらマシに思える。

 それに今の時代なら、そこまで不思議なことでもないだろう。

 俺にそんな趣味はないけど。


「俺には恋人がいるので、どちらにせよナシですね」

「なるほど」


 会長は納得したのか、扉を開けてくれた。


「そう言えば、君への用事は他にあるんだ。放課後に生徒会室で待ってるよ」

「面倒そうなんで、今伝えてください」

「……つれないね。愚かなる妹のことで君に問いたい」

「会長の妹さんが何か? 俺は知り合いとかじゃないですけど」


 そもそも、生徒会長には妹がいたのか。初耳だ。


「僕の苗字、知ってるかい?」

「……なんでしたっけ」


 この生徒会長はいつも下の名前で呼ばれている印象だ。

 本名はまったく記憶になかった。


「桜ノ宮という」

「………………………………」


 めっちゃ美形で、下半身に正直で、自信家な性格。

 なるほど。この生徒会長は、桜ノ宮春名のお兄さんだったらしい。


「お、お前かぁあああああああああああ!」

「なんだい!?」


 俺は生徒会長の肩を掴み、叫ぶ。


「……アンタの影響だろ絶対! 桜ノ宮春名が頭おかしいのは!」

「それは逆だね」

「え?」

「僕が、春名の影響でこうなったというか、なんというかね……」

「えぇ」


 どうやら桜ノ宮春名の影響で、この生徒会長はバイになったらしい。

 女に嫌気がさしたのだろうか……。


「あの妹を毎日相手にして、正気でいられると思うかい?」

「無理ですね」

「わーお即答だ。まぁそういうことさ。僕はいつからか、男の方が良いと思うようになってしまってね……」


 この生徒会長、あまりにも可哀想だ。

 というか、俺が桜ノ宮春名をもしも選んだら、この人が兄なのか。

 やっぱ梅雨裏だわ。梅雨裏しか勝たん!


「そんなクレイジーな妹と、仲良くしている男子がいると聞いてね」

「それで俺に関心があったわけか」

「僕の個人的趣向もあったけど」

「おい」

「……佐藤君、感謝しているよ。君のおかげで妹は高校に入学してからずっと幸せそうだった。今もそうだ。これからも仲良くしてあげてくれ」

「それはまぁ、はい」


 桜ノ宮春名はなんやかんやで、大事な奴だ。

 一番最初の友人で、一番最初に恋をして、一番最初に告白した相手。

 今も、一番の奴なのだ……。


「ところで佐藤君」

「なんですか?」

「君は合コンの経験はあるかな?」

「ない、ですけど」

「そうかそうか、人生で一度くらいは経験するべきだよ。具体的には今日」


 生徒会長は俺の肩を掴んできた。

 笑顔で大丈夫だから、とか言っている。この強引な感じ妹にそっくりだ。


「妹さんにそっくりですね」

「え」


 生徒会長が膝から崩れ落ちた。

 めっちゃ泣いている。


「それはいくらなんでも酷くないかなぁ! 春名っぽいとか、あんまりだ」

「す、すみません……」


 とても怒ってらっしゃる。

 自分の妹の名前を、蔑称くらいに思ってそうだ。気持ちは分かる。

 生徒会長は頭を下げてきた。


「頼むよ佐藤君。僕はもう一度女性も愛したいんだ。合コンをすれば、もう君に言い寄る必要もなくなるはずだっ!」

「行きましょうか」

「即答だね」

「男と女、それぞれ何人くらいの合コンなんですか?」

「男子は僕らだけさ。女子が四人とかだったかな……。既に準備は済ませてある」


 どうやら、セッティングはできているらしい。

 男の側が不足していたのだろう。

 ただ、この生徒会長は妹とは違って、学校内での人気がある。男子を集めのは容易いはずなんだが……。


「男子少ないですね。向こう側は不満に思うかも」

「だって、男子が増えたら不利じゃないか」

「えぇ……」


 自信家のイケメンのくせに、せこいな。

 まぁそれだけ本気で彼女を作りたいのだろう。克服するために。


「女子に関しては他校の子でね。生徒会の活動でたまに交流があったんだよ。それで誘ってみたわけだ。君には彼女がいるようだし、僕が一人勝ちできるだろう?」

「だっさ、生徒会長だっさ」

「酷いよ!」


 この人、意外と小者なんじゃないか?

 なんかとても残念な人だった。桜ノ宮春名の兄だもんな。

 これは俺のサポートが必要かもしれない。相手の女子もドン引きしそうだし。


「とにかく、頼んだよ佐藤君」

「はいはい」

「僕の扱いが雑になってないかなぁ?」


 俺は生徒会長に背を向けて、部屋を出る。放課後は合コンか……。


「梅雨裏に報告しないとなぁ」

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俺のことを都合よくキープしてた女子達が、一斉に「付き合ってもいいよ」と言ってきてド修羅場です 森 アーティ @kqxgs3400

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