担当【フィロソフィア】ニーチェの名言について

 ここに来た君達と一緒に話をしよう。をテーマにお話をメインとしたトークバーがこの世界の何処かにひっそりとある。バーの名前はevening。名前の通り夕方から夜遅くまでここでは店員が決めた話題を近くに座る人を巻き込んで話すコンセプトでリピーターが増えている。今日は店員の【フィロソフィア】の話を覗くとしよう。


 「初めまして、今日話したい店員は決まっていますか?」一人でグラスを握る女性にフィロソフィアが話しかけた。

「いえ、特に。」

「そうですか。では、私と話しませんか?」フィロソフィアは微笑んで聞いた。

「じゃあお願いします。」

「はい。軽く自己紹介をしますね。性別は男。名前はフィロソフィアと申します。長いのでソフィとでもお呼びください。私の得意なトークテーマは倫理になります。倫理と言っても哲学者の名言も好きですのでその辺りの話もよくさせて頂きます。貴方のことはどのように呼べば良いですか?」

「ミアで。」

「ミアさんですね。よろしくお願いします。先に一つお聞きしたいのですが何かの宗教を信仰していますか?」

「いえ、無宗教です。」水を飲んでから答えた。

「ありがとうございます。今日はニーチェの残した言葉について話させて頂きたいと思います。その前にお飲み物は何になさいますか。」

「アイスコーヒーで。」

「畏まりました。只今準備して参ります。」フィロソフィアは裏に行って準備をした。


 「お待たせいたしました。こちらアイスコーヒーになります。」ミアの前にコーヒーが置かれた。

「ありがとうございます。」ミアが言うとフィロソフィアは微笑んだ。

「ミアさんはニーチェという哲学者は知っていますか?」

「何だっけ、神は死んだの人ですか?」そう聞いてアイスコーヒーを一口飲んだ。

「ええ、まさにその方です。今日は神は死んだとは別の名言について考えてみたいと思います。先程、宗教を信仰しているかと聞きましたが無宗教でお間違い無いですか?」

「はい。神か宗教みたいな話ですか?」ミアは少し口角を上げて聞いた。

「ええ、その通りです。お嫌いですか?」

「いえ、寧ろ好きです。」

「それは良かったです。ニーチェは人間は神の失敗作に過ぎないのか、それとも神こそ人間の失敗作に過ぎないのかという言葉を残しています。ミアさんは人間と神のどちらが失敗作だと思いますか?」

「思っていたより難しい問いが来ました。暫く考えます。」顎に手を添えながら俯いて考え込んだ。ミアは思考の海に飲まれて周りの声はもう聞こえなくなっていた。その間にフィロソフィアは水分を取ってから、他の席の人の注文を確認してドリンクを作った。七分くらい経った頃ミアのもとまで戻ってきた。


 「どちらか決まりましたか?」その声にミアはフィロソフィアの方へ意識を向けた。

「一応、決めてみました。」

「かしこまりました。では、どちらが失敗作だと思いましたか?」

「神かなと思いました。」その声は困惑や戸惑いの感情が見えていた。

「なるほど…。何故神だと感じました?」目の色を少しだけ変えて更に問いかけた。

「神がいることで人が救われることも勿論あると思います。それを前提の上で話しますが神を理由に戦争が起きて犠牲者が出ています。宗教を理由に争いが起きるのなら宗教や神は居ないほうが良いのかなと思いました。」フィロソフィアは目を輝かせて話を聞いていた。

「確かにそうですね。神が失敗作という意見が新しくて面白いと感じました。私は人間が失敗作だと思っていましたが神が失敗作と言う意見を聞いてそちら側に偏りそうです。」愉快そうに笑っているフィロソフィアを見てミアが釣られて笑った。

「ソフィさん、貴方の人間が失敗作だと思う理由を聞いてみたいです。」

「かしこまりました。人間が失敗作だと思う理由はまず、自分に都合の良いように物事を考えるところです。喧嘩を売りたいわけでは無いですが食される動物が可哀想という方がいらっしゃいますが本来なら自然で暮らしていたはずの動物を人間の管理下で生かしておくのも可哀想だと私は思います。そして人間と他の動物を区別しすぎだと思います。カニバリズムをおかしいという風潮がありますが命を食して生きているのは牛でも人でも同じ命ですので変わらないと思います。すみません、長々と話してしまいましたね。」流れるように話すフィロソフィアを目を細め楽しそうにミアが見ていた。

「ソフィさんの考えは面白いですね。確かにそう考えると人間が失敗作な気がしてきました。」二人はどちらからともなく笑いあった。


 さて、ここで話の一区切りついた。君達の中に【ソフィ】と話したい人は居るだろうか。彼と話すのはきっと好きな人は好きだろう。次はどの店員の会話を覗こうか。

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バー【evening】 花園眠莉 @0726

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