後編


 あの男に言われて調べてみれば、言葉通り彼はクラスの全員からイジメを受けていた。

 もちろん扇動しているのはあのクソ野郎。


 理由もすぐに分かった。

 あのクソ野郎はどんなに汚い手を使ってでも私が欲しかったようだ。


 私は自分を呪った。

 彼のイジメに気付けなかった事に、なにより切っ掛けを作った自分自身を。

 でも、反省は後だ。


 まずはイジメを止めさせるため、なによりクソ野郎に裁きの鉄槌を下すため。

 すぐに私は復讐プランを考えた。


 もう私の怒りは限界を超え抑えがきかない。


 刑務所暮らしさえ怖くない。


 それくらいあのクソ野郎のしたことは万死に値する。


 私は激情のままあのクソ野郎に天誅を下すべく、行動を開始する。


 そしてクソ野郎はまんまと引っかかってくれた。


 私は提案を受け入れるフリをすると、クソ野郎は当然のごとく私をホテルに誘った。


 狙い通りだった。

 こいつをじっくりといたぶるなら防音がしっかりしている場所が良い。


 クソ野郎は私の目論みなど露知らず、ゼッテー俺の方が気持ちいいからと、キモい事を平気で言ってくる。


 本当に反吐が出る。

 同じ空気を吸うのさえ我慢しているのに、こいつは猿並みの知能しかないらしい。

 いや、失言だった、これは猿にすら失礼だろう。


 私は猿に謝りながら、さる以下のホモ・サピエンスのなり損ないについていく。ヤツはニヤニヤとキモくて吐き気を催すいやらしい顔をしながら、私をそのままホテルに連れ込む。


 部屋に入ってからは簡単だった。

 クソ野郎は完全に油断していたので、手錠を掛け拘束して動けなくした。


 さる以下のクソ野郎は最初何かのプレイかと勘違いして喜んでいたので、本気のトゥキックを顔面にお見舞いして黙らせた。


 それからまず彼に対するイジメを白状させ謝らせた。


 最初は自分は悪くないみたいなベタなセリフを吐いていたので爪を剥いでやったら、一転して罪を認めて謝罪を始めた。


 次にイジメに加わったヤツの名前を全員吐かせた。こらはちょっと脅しただけなのに、ペラペラ喋りだしたのには笑った。

 仲間を売るのには良心の呵責はないらしい。


 まあ、あの軽薄さを見る限り仲間なんて呼べないくだらない関係なのだろうけど。


 次に彼を散々イジメた事を反省させるために、ケジメをつけさせる事にした。


 つまりヤクザ屋さんと同じ様に指を詰めてもらった。

 十本指では足りないので足の指を含めて切り落としておいた。


 クソ野郎は情けない事に気絶しやがったので叩き起こした。


 だってこのクソ野郎の罪はこんなものじゃないから。


 私をやらしいい目で見た罪だってある。

 私を犯して良いのは彼だけなのに、私を犯そうとした。


 なのであそこを切り取った。


 また、気絶した。


 もう、面倒くさくなったので猿ぐつわを外し、変わりに自分のアソコを突っ込んでやっておいた。


 少しムゴムゴ言って面白かったけど、すぐに何も反応しなくなった。


 死んだのかもしれない。


 まあ、宿泊料金を払っているので明日までは見つからないだろう。


 私は何事もなく着替えると家に帰った。



 翌日。彼が学校を休んだ。


 すごく嫌な予感がして急いで彼の家に向かった。


 預かっていた合鍵を使い、家に入ると急いで彼の部屋に向う。


 部屋に飛び込んだ時、憔悴しきった彼の顔が目に入る。


 とりあえず自殺なんてしていないことに安堵しつつ、尋常じゃない雰囲気を感じ取り、恐る恐る彼に話を聞いてみる。


 彼は躊躇うように時間を掛けゆっくり話してくれた。


 昨日、私と、あのさる以下のクソ野郎とホテルに入ったところを見た事を。


 完全に私の落ち度だった。


 頭に血が登って、あいつを殺すしか考えていなかった私のミス。


 そんな光景を彼が見たらどれだけキズ付けてしまうかなんて分かりきっている。


 彼にしてみれば裏切りも同然。


 罪の重さで言えばあのクソ野郎よりも酷い。


 私は深く彼を傷つけてしまったのだから。


 彼の気持ちを思うと自然と涙が出た。


 よりにもよって私が彼を苦しめるなんて……本当なら責任をとってこの場で死んで詫びるべきなのだろう。


 でも、誤解されたまま死ぬのも耐えれない。


 だから私は言い訳と知りつつありのままを話した。


 彼はまた泣いた。


「僕のせいで手を汚させてごめん」と。


 彼は優しすぎだ。


 だから私は言った。


「どんな理由があろうと、貴方を傷つけてしまった事に変わりない。だから貴方の好きなように罰して下さい」と。


 彼はしばらく考え込むと言った。


「君を愛しすぎた僕はもう君無しでは生きて行けない。でも君のことを完全に信じきれない僕がいるんだ。君が僕の為にとってくれた行動だとしてもあの光景は僕の心をズタズタにした。耐えられないんだ君が本当に僕から離れてしまったらって、考えたくない事を考えてしまうようになった。だから……」


 ああ、彼の考えていることが分かってしまった。


 そして私を独占したいという気持ちが何より嬉しかった。


 だから、私は受け入れた。


「永遠に貴方を愛してる」


 私は微笑んで彼の手を私の首に誘う。


 彼は泣きながらその手に力を込める。


 彼の殺したいほどの愛情をその身に受け、私は幸福に包まれたまま逝った。






「ねえねえ、知ってる例のテニス部の先輩のあの噂」


「ああ、あれだろう呪いのクラスだろ。その先輩に関わった生徒が全員おかしくなったっていう」


「そうそう、その先輩も猟奇的に◯されたって」


「でも、あれって、因果応報らしいぜ。なんでも他の男の彼女を襲ったって」


「うんそうみたい。で、その先輩に手を出されたカップルは幼馴染で、お互いを憂いて心中したらしいよ」


「まあ、クズな先輩は◯んで良しとしても、その二人は可哀想な」


「うーん、でも少し憧れちゃうかも」


「えっ、なんで? ちょっとその発言引くわ」


「えっ、だってお互い死んでも良いって思えるくらい愛し合ってたんでしょう」


「うーん、そうなのか? 俺には分からん感覚だな」


「そっかー、君には分からないんだね、そっかー」


「なあ、そんなことよりさ。考えてくれた。俺と付き合う話し」


「あー、うん。ごめん。君とは幼馴染以上は考えられないや、ごめんね」


「うっ、まじかよ。なあお試しでもいいからさちょっとだけでも駄目かな」


「うーん、無理だと思うな。だって恋愛に対する価値観が全然違うからさ。きっとうまくいかないよ」


「でも、そんなの付き合ってみないと」


「分かるよ。だって君には分からないんだからさ」


 その時の女子生徒の瞳に気圧された男子生徒は後退るとその場を去って行った。


 それをつまらない物を見るように女子生徒は見送る。


「あーあ、私も欲しかったな、理想の幼馴染」


 女子生徒は呟いた。

 その目は白馬の王子を夢見る乙女のように輝き、羨望の眼差しで空を見上げるのだった。




【完】





――――――――――――――――――――


読んで頂きありがとうございます。

評価をしていただいた方には感謝を。


グロかったりと人を選ぶとは思いますが、

面白いと思っていたけたらた


☆☆☆評価を頂けると泣いて喜びます。


もちろん率直な評価として☆でも☆☆でも構いませんので宜しくお願いします。






 

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幼馴染を◯してしまいました コアラvsラッコ @beeline-3taro

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