ニンゲンになりたい。

桜庭ミオ

ニンゲンになりたい。

 ミノリはワタシをみてくれる。ワタシにふれて、わらいかけてくれる。

 スキだよ、サクラ。ダイスキだよ、サクラはいつもカワイイネって、やさしいこえでいってくれる。

 ハナがあっても、なくてもだ。


 ワタシもスキだというけれど、ワタシのこえはとどかない。

 カゼがふけば、エダがゆれる。ハナがあれば、ハナがちる。

 だけどワタシのこえじゃない。

 ここにいるのに。そばにいるのに。なんでなんでなんで、ワタシはミノリとはなせない?


 ワタシがキだから? サクラだから? どうしてワタシはサクラなの?

 なんでミノリはニンゲン?


 さびしいさびしいさびしい。ここにいるのに。

 かなしいかなしいかなしい。そばにいるのに。

 とどかないとどかない、ワタシのこえがとどかない。


 なんでなんでなんでっ?

 ミノリとはなしたいだけなのに。


 はなすだけなんてイヤッ!


 ワタシはミノリにさわりたいんだ。

 ミノリはいつもわたしにふれる。

 やさしくやさしく、ワタシにふれる。


 ミノリにさわられるとうれしくて、いきているとかんじる。

 いきているというよろこびが、グワーと、こみあげてくるのだ。


 ミノリミノリミノリ。ダイスキミノリ。

 はやくニンゲンになりたい。ニンゲンになりたい。

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ニンゲンになりたい。 桜庭ミオ @sakuranoiro

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