第5話 練習開始
サンシャイン工業のグランドは二面有り、このトラックのグランドと投擲などのフィールド競技用のグランドが有った。すぐ近くにはトレーニング器具の揃っている体育館も備わっていた。
山県は棒高跳びの選手の右腕の上腕二頭筋に湿布を施し、バンデージを巻くと「痛みが取れるまで無理をしない方がいいな。」と一言残しトラックの方に向かった。
トラックに入ると、丁度波子も会社の方からグランドに入って来るところだった。
「今日から宜しくお願いします。」山県に一言挨拶すると、山県は軽いダッシュを繰り返していた女性に向かって「佐野さん、紀平さんの面倒をみてやってくれないかな。」
佐野は「基礎練習で良いですか。」と一言。
「それでお願いします。」と言いながら波子の方を向いて「佐野素子さんといってベテランの域に入ろうとしているが、記録の方も体力も衰え知らずで、じっくり体力を付ける練習は素晴らしく、新人にはピッタリだからね。」
そこに佐々木コーチがゆっくりとやって来た。
「コーチ、紀平さんの面倒を佐野さんに頼んでいた処だったのですが、それで良かったですか。」
「そうだね、適任だね。佐野君宜しく面倒をみてやって。」
「分かりました。」波子も佐野に向かって「宜しくお願いします。」と頭を下げた。
佐野は「あっちでストレッチで身体をほぐしてから、軽目の練習で始めましょう。」と言いながら山県達の所から離れて行った。
「で、紀平君てどんな感じなの。」と佐々木の質問に答えて「偶然、一度見ただけなんだけど、ひったくり犯を追いかけて30メートル位を3、4秒で走り抜けたんだ。見た目にもかなり早かった。」
「そうか、楽しみだね。」一言残して選手達の間に入って行った。
鬼さんどちら @sankanba27
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