後書き
まずは、ここまで読み進めてくださりありがとうございました。
「僕は妹を捜しに行きます」のテーマはいじめに対する問題提起ですが、正確には「自分にとって都合のいいように生きる人たち」に対する問題提起です。
僕自身いじめられてきた経験があるので、一番とっつきやすいという理由でいじめを題材にしたものの、卑怯な人間によって弱者が振り回される状況自体は、ほかの場面でも散見されることだと思います。会社の上下関係だってそうだし、ロシアとウクライナの戦争に巻き込まれた兵士や市民だってそうでしょう。
最近、「女王の教室」という昔のドラマの切り抜きをたまたま見かけました。そのワンシーンにおける台詞が言い得て妙だなと思いました。
日本という国は
そういう特権階級の人たちが
楽しく幸せに暮らせるように
あなたたち凡人が安い給料で働き
高い税金を払うことで成り立っているんです。
そういう特権階級の人たちが
あなたたちに何を望んでいるか知ってる?
今のままずーっと愚かでいてくれればいいの。
世の中の仕組みや不公平なんかに気づかず
テレビや漫画でもぼーっと見て何も考えず
会社に入ったら上司の言うことを大人しく聞いて
戦争が始まったら真っ先に危険な所に行って戦ってくればいいの。
これは極論というか、本当に上の身分の人間に向けた言葉ですけど、気が強いとか、コミュニケーション能力があるとか、勉強やスポーツで好成績を残したとか、度が超えると他人の粗探しをすることで無理やり優位点を見つけ、それらの優位点に縋って「特権階級」になれたと思い込む人間は世の中にたくさんいる気がします。僕の親父もね、亭主だという点に縋って威張ったりしているんだよね。
僕はまだ28年しか生きていませんが、そういうくだらない人間をたくさん目にしてきました。そういう連中の身勝手な言動が許せなくて、うつ病を患うまでは真正面から立ち向かって言い返したりしてきました。でも結局、打ちのめされたのは僕のほうでした。正しい人間ではなく強い人間が報われる世の中において、僕はたった一人の弱い人間でしかなかったからです。
巷で話題の石丸伸二市長のように、勧善懲悪の信念を持って生きていくのは間違いなく立派だと思います。でも、僕は彼らのようにできた人間じゃありません。くだらない連中に期待するのを止め、人脈を絶ったりして人と関わるのを避けるようになりました。
僕が現在取り組んでいる執筆は、誰にも邪魔されることなく、自分の価値観をそのまま物語に落とし込むことができるので、いい趣味を見つけられたなあとしみじみ思います。でも、ただ自分の楽しい世界を作るだけでいいのかな? 現実的に物事を見据えていってもいいんじゃないかな? そういった考えが、本作「僕は妹を捜しに行きます」を執筆した契機になりました。
本来はこの小説も集英社ノベル大賞に応募するつもりだったのですが、文字数制限をクリアしようと書き足していくにつれて内容がどんどん薄っぺらくなってしまったので、最終的に断念することにしました。仮に応募したとしても、集英社ノベル大賞は「誰が読んでも楽しめるエンタメ小説」を望んでおり、僕が今回書いた小説はカテエラになっている気がしてなりません。ただ、少なからず意味を持った小説だと思っています。
ほかの小説と同様、この小説も置物になってしまいましたが、自分の考えをちゃんと形に残せたので書いて良かったなと思っています。読んでくださったかたがたにも何らかの意味を与えられたのなら何よりです。
僕は妹を捜しに行きます 阿瀬ままれ @asemamire_m
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