渡る世間はエロばっかり!

 それからというもの、時間はあっという間だった。

 まあ、あっという間と言っても夏休みがやってきただけだが、俺の周りによる変化……それが周知され始めてある程度経ったわけだ。

 今では封妖の中だけでなく、他所の高校や……言ってしまえば一般の人たちの間でも、複数の女性を将来娶るということが伝わってそれはもうどえらい騒ぎだ。


『先輩流石っス!』

『流石俺たちの先輩!』

『あんな美少女たちと……くぅ!!』

『ま、正義先輩と私たちもチャンスが……っ!』

『あるわけないでしょうが』

『先輩うおおおおおおおっ!!』


 とにかく、学校ではこれくらいヤバかった。

 最初は輝夜とだけ進んでいた関係も、徐々に輝夜の助けもあって他の子たちとも……そういうことをしたわけだ。

 まだ慣れたわけじゃないし恥ずかしいのは変わらないけれど、その一線を越えたことで更なる繋がりが生まれたのは言うまでもない。


『せ、先輩ってこんなに凄かったんですかぁ?』

『だから言ったでしょう? 私たち、もう正義から離れられないわよ?』


 なんて、そんなやり取りを聞いたが……どうやら俺の強さはアレにも直結しているらしい。

 それは……嬉しいと思えば良いのかこれまた恥ずかしいと思えば良いのか微妙なところで、輝夜が言うにはそれも立派な男としての強さとのことだ。


「しっかし、知らなかったぞ蒼汰」

「あはは……ま、俺も俺で頑張ってるってな」


 俺の隣で、水着の蒼汰が笑っている。

 夏休みとなった今、前から言っていたように会長……白雪の別荘に来ているわけだが、生徒会メンバー誰一人欠けることなく来ている。

 女性陣はまだ着替えの途中だが、基本的に俺たち男で着替えがおそくなることはないからなぁ……ということで、俺は蒼汰に最近知った出来事について聞いていた。


「俺もちょくちょく見たことがあったなぁ」

「だろ? 前に正義も居て、その時に助けた相手なんだ」

「へぇ」


 蒼汰の奴……彼女が出来たんだってよ。

 以前に俺と蒼汰で妖狩りに赴いた際、捕まってしまった後輩の女子生徒を助けたことがあったのだが、その子と最近になって蒼汰は付き合いを始めたとのことだ。


「やるなぁ」

「正義が言うのかよ。だってお前、五人も彼女居るじゃんか」

「それは……そうだけどよ」


 いまだにこの五人の彼女って言われるのは中々慣れない。

 輝夜、愛華、桜花、白雪、祈……五人の彼女の過ごす日々だけど、正直めっちゃ心の平穏が保たれるというか、愛を囁き合う日々の尊さを身を持って知った気分だ。


「お互い、幸せになろうぜ。こんな世界だからこそ、俺たちには幸せになる権利があるんだから」

「そうだな……流石主人公、言うことが違うじゃねえか」

「だからその主人公っての止めろって」


 がははと笑い合ったその時だ。

 いまだに俺の中で活動を続けているエロセンサーがビンビンに音を反応し、そちらへと視線を向ける……やっぱりかと、そう言わんばかりに彼女たちが水着姿で現れた。


「お待たせ~」

「待ちましたかぁ?」

「ふぅ……サイズはピッタリですね」

「お兄ちゃんを悩殺する」


 一人、危ないことを言っているのは気にしないでおくとして……女性陣の水着姿は眼福だ。

 なんというか、エロいのはもちろんなんだけど……あまりに神聖的というか領域展開されているというか、とにかくいやらしい気分になりつつも見せてくれてありがとうって気持ちが溢れてくる。


「正義、もっと食い入るように見ても良いのよ?」

「っ……」


 そして特にエロいのがやはり輝夜だ。

 五人とも絵柄の違うビキニスタイルではあるんだが、この中でもっとも胸の大きい輝夜だからこそ、水着の紐が肉に食い込むという素晴らしいエロさを醸し出している。

 あんだけエロに対して拒絶していたのに、今となってはもう受け入れ態勢はバッチリだ……というか俺がああいしていたのはどうにかみんなに欲情しないためであって、一線を越えた今となってはこうもなる。


「えっと……最高です」


 最高だと、伝える言葉はそれで十分だ。

 輝夜を筆頭に五人ともクスッと微笑み……そして体を押し付けるようにして身を寄せてきた。


「ははっ、今日はこれをずっと眺めることになるのかなぁ……彼女を連れて来れば良かったかも」


 ていうかなんで連れて来てないんだ?

 確か白雪は大丈夫って言ってたはず……まあでも、もしかしたら生徒会という繋がりを大事にしたのかもしれないな。

 とはいえ、こうして体は暴力的な彼女たちも女子高生だ。


「せんぱぁい! 一緒にビーチバレーしましょ~!」

「あら、それなら私が正義とチームね」

「は? あたしですけどぉ?」

「わたくしです」

「わ、私!」

「祈と組むわ」

「どやぁ」


 そう言った瞬間、祈を除いたみんなに砂に埋められたのは解せない。

 しかもちょうど俺の大事な部分に特大の山を作ったりして……それを見てみんなが恥ずかしがるどころか、面白がっていたのは完全に乙女を捨てているとしか思えないぞ……。


「バッキバキね」

「ビンビンですねぇ」

「君たちさ、羞恥心というものはないの?」

「う~ん……あるにはあるけど、実物を見た後だとこういうのは可愛いもんじゃない?」

「そうですね……何というか、こうして見るとあの赤黒さに比べたら砂の色はとても可愛いものです」


 生々しい表現マジで止めろ?

 やっぱり……やっぱりこの世界はエロい女しか居ねえ! こういうことを平気で、しかもニヤニヤしながら言ってくるんだからマジモンのエロ女ばっかりだ!

 その後、優しい心の友である蒼汰に掘り起こされた。


「にしても笑えるほど完成度たけえな」

「お前も黙れい」


 それからはとにかく遊んだ。

 ビーチバレーをしたり、海なので泳いだり……輝夜が初めて釣りをしてみたいということで付き合ったりと、とにかく学生として海で楽しめることはとことんやった。

 昼はみんなでバーベキューをしたりととにかく楽しい時間だった。


「ふぅ、本当に楽しいわね。みんなで遊ぶのもそうだけど、こうやってわいわい騒ぐのは嫌いじゃないわ」

「それなら良かった」


 パラソルの下で、シートの上に俺は輝夜と休憩している。

 そこそこ日差しが強いのもあって、いくら妖狩りとして体力が多いとは言っても暑さはやはり油断大敵だ。

 どんなに体が強くても脱水症状にはなるし日焼けもするからな。


「それにしても……ふふっ」

「なに?」

「さっきのは面白かったわね」

「忘れろよもう!」


 ったく……このエロ女と来たら。

 小さくため息を吐いた俺に、輝夜が飛びつく――そのまま正面から押し倒され、腰の部分に彼女の大きな胸が押し付けられた。

 そのまま体を揺らすように刺激を与えてくるせいで、時折体が震えてしまう。


「このまま逃がさないわよ」


 輝夜はそう言ってガッチリと腕を背後に回して固定した。

 そのまま刺激を与え続けられた結果、あっちの意味でイライラした俺だったがそれさえも輝夜にとっては……え?

 いやらしい笑みを浮かべていた輝夜だが、どこか感動したように目を潤ませていたので驚く。


「やっぱりこういうことも嬉しいのよ? 私たち妖にとってただ相手を屈服させるだけだった行為も、こうして幸せを感じることだと認識出来たことが何よりも大きい……その相手があなたで良かったわ」


 そうして彼女は、手の位置を俺の胸へ……ってそこまでにしようね。

 ぺしっと優しく手を叩いて下ろさせ、輝夜はじゃあ夜ねと言って離れてくれた。


「ねえ正義、人と妖は……幸せになれるわよね?」

「当たり前だろ? 俺と輝夜だぞ?」


 人と妖が一緒になるなんて前代未聞……けれど、だからどうしたって話だ。

 幸せになる権利は誰にだってある……それは輝夜にも当然あるもの。


「……私ね、時々こうして考えたことがあるわ。あなたは確かに私たちを救ってくれた……でももしかしたら、人と妖の間を繋ぐ架け橋の意味もあったんじゃないかって」

「それは大層な評価だけど、輝夜以外の妖で話が通じる奴に会ったことないからなぁ」

「そうねぇ……悔しいけどそれはそう。これから先も、人と妖の争いは決して無くならないでしょうね」


 そして、人と人の争いさえもあるかもしれない。

 最近の情勢が色々とキナ臭いものはあれど、俺たちなら大丈夫だと明日を信じて生きて行くしかない……ま、俺にとって今の日常を守るために力を振るうだけだし、みんなを守ろうとする気持ちさえあればどんなことだって出来る……そんな力が俺にはあるのだから。


「あ~! 先輩たちがイチャイチャしてるぅ!」

「私たちも加わろうよ!」

「そうですね……突撃です!」

「らじゃ~」


 もちろん、健全にイチャイチャしましたとさ。

 そうして夜になり美しい星々を見上げながら、みんなで写真を撮ることになった。


「もっと寄ってくださいよぉ」

「お、おい俺は別に抜けても――」

「何を言っているのですか。蒼汰君も仲間なのですよ?」

「そうよ。遠慮することじゃないわ」


 せっかく思い出の一枚を撮ろうってのに、最後まで俺たちは騒がしかった……そして、間違いなく全員が笑顔での写真が撮られた。

 その後、すぅすぅと寝息を立てる女性陣から離れ……俺は服を着て窓際へと向かった。


「……ほんと、エログロ上等世界でこんな幸せがあるとはなぁ」


 転生した当初は、こんな風になるだなんて思ってもいなかった。

 みんなを助けて、未来を守って……その先を一切考えていなかっただけに、この幸せを掴めたことは更にこの世界を好きになる理由でもあった。

 これをずっと守っていく……それがこれから俺のすべきこと。


「……にしても」


 チラッと視線を後ろに向ければ、大きすぎるベッドの上で眠る五人の美少女たち……そのいずれもが凄まじいスタイルを誇り、尚且つ漂う香りさえも情事の後だというのに忘れかけていた興奮を再度呼び起こす。


「って最後の最後まで結局エロじゃねえか!」


 それこそ今更だろうと、ツッコミがありそうだが言わずには居られなかった。


「……ありがとなみんな、俺と出会ってくれて」


 そう言ってすぐ、俺はまた押し倒された。

 だあもう! 起きてるなら起きてるって……っておい! さっきしたばっかなのに……うおおおおおっ!

 やっぱりエロ女ばっかだよこんちくしょうがあああああ!!



【あとがき】


ということで、今作はこれにて完結となります。


最初は一話しか書かないと思っての勢いだったのに、気付けば十万字を越えてえらいこっちゃですよ。

ここまでお付き合いくださりありがとうございました。

次回作は……何を書こうかなと、今から悩んでおきます!

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エログロ上等世界でハッピーエンドを掴み取った俺、けどその後のことは何も考えていない件 みょん @tsukasa1992

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