第129話 快傑ケット・シーは誰だ?

「どういうことだ、スペクト? 我らをこのような場所に連れ込むなど……ハッ、まさか!?」

「その『まさか』ですよ」


私はロベルタ狂王女殿下一行を、逃げ場のない袋小路に誘い込んだ。


「この場でハレンチな行為を!?」

「快傑ケット・シーは、この中にいます」


私とロベルタ狂王女殿下が同時に宣言する。


「ん? ああ、そっちか、なんだ……」


え?

いったい、なんだと思われていたのだろう?


「お、お~! 快傑ケット・シー!! 誰? 誰? あたし~?」

魔王様あなたの訳ないでしょう」

「では、誰だと?」

「もちろん、あなたです。クヴィラ侍女長」


言いながら、クヴィラ侍女長と袋小路を挟むように動く。


「理由は、聞かせてもらえるのかしら? 納得のいく理由でなければ許しませんよ」

「ご説明します。第一に、私が近道を提案した時です。このなかで私だけが邪神像ディープ・フィアーの封印に立ち会っていない。ですから秘匿場所を知っていてはおかしいのです」

「ですが騙されたのは、わたしだけではないでしょう?」

「ええ、ですが指摘ツッコミ役は私を除けば、クヴィラ侍女長だけです」

「そんな理不尽な……」


ロベルタ狂王女殿下もまた、退路に立ちはだかる。

仮に、他の誰かが快傑ケット・シーだったとしても、決して逃さぬ構えだ。


「第二に並び順フォーメーションです。あの時、ロベルタ狂王女殿下が先頭に立ちましたが、本来は斥候役のクヴィラ侍女長が先頭に立つべきでした。もっとも、邪神像の元に案内させるのが目的でしょうから、正確には『先頭には立てなかった』のですね」


魔王ダーナ・ウェルが、クヴィラ侍女長の傍らに立つ。

無邪気な仕草に見えて、あの魔王がすぐ傍にいるプレッシャーは怖い。


「あなたの敗因はクヴィラ侍女長に成り代わったことです」


とはいえ、他に選択肢はなかったのだろう。

ロベルタ狂王女殿下や、魔王ダーナ・ウェルに単騎ソロで勝てる人類は、まずいない。


この中で最弱は私だが、迷宮運営管理部から王宮までは、魔王ダーナ・ウェルがべったりくっついていたので、無理だったのだろう。

(別に変な意味で、べったりくっつかれていた訳ではない)


「本当は、あなたに変装するつもりだったのだよ……けど、ああも魔王ダーナ・ウェルとべったりくっつかれていては、ね」


どうやら観念して白状するようだ。

いや待て、人聞きの悪いことを白状しないで欲しい。


「魔王ダーナ・ウェルとべったりくっついていた件は、あとでゆっくりと聞かせてもらおう。まず本物のクヴィラをどうした?」

「安心してくれ、『殺し』はの主義に反するからね。今頃、いい夢を見ているはずだよ」

「さて、それはどうでしょう?」


遠くから、斥候役らしからぬ、けたたましい足音が響いてくる。

あのクヴィラ侍女長がやられっぱなしで終わる訳がないのだ。

推理ゲーム時間稼ぎはもう終わり、快傑ケット・シーの包囲網は完成した。


「おのれ賊め! 許さんぞ!!」


怒れるクヴィラ侍女長が下着姿で現れた。

















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迷宮都市運営プランナーのお仕事~魔王のせいで理不尽難易度になったダンジョンの企画運営を任されてしまった!?~ 椋ノ木鳥 @mukumook

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