第2話

 俺は麻雀が嫌いだった。

 まずルールが煩雑で分かりにくい。

 点数の数え方も意味が分からないし、役も多すぎて覚えられない。

 折角頑張ってアガったと思ったら鬼の首でも取ったような顔で「それはフリテンだ」と貶される。


 覚えておいて損はない。

 そんなことを言われて俺は親父から麻雀を教わった。

 俺と親父とお袋と弟。

 四人家族だったから、自然と面子が揃っていた。

 結果は、いつも親父の一人勝ち。面白いわけがない。


 初めて雀荘に行ったときは驚いた。

 大学に入って、友人に誘われたのだ。

 煙草の匂いと、油気の濃いつまみの匂い。

 どうしてこんなにうるさいんだ?

 かつん。こつん。

 いたるところで牌を卓に叩きつけている。


 困惑しているうちに卓が用意されて試合が始まり、俺は逆に気味悪がられた。

 俺の手つきが綺麗すぎるというのだ。

 俺は卓に着く時猫背になったりしない。

 俺は牌を置く時に音を出したりしない。

 そういうものだと思っていたのだ。


 その時の結果は二位。

 大きなアガりもないが、放銃もしない。金銭のやり取りはしたくなかったので、負け越さないように気を使った。

 つまらない打ち方だと、揶揄われた。


 やっぱり、麻雀は嫌いだと思った。

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