> 『転勇』『げきあまライフ』イタチレスト先生のインタビュー記事より一部抜粋

 よく「人は経験したことしか書けない」っていうじゃないですか。僕は『げきあまライフ』を書くまで、本当にそう思っていました。


 ここだけの話、僕は異世界から帰ってきたんです。


 あの世界のことを書き残しておきたくて『転勇』を書き始めました。編集のKさんからは「臨場感がある」と褒められていますが、書くからには正確に残しておきたくて、描写や表現を猛勉強しました。


 転生または転移の異世界ファンタジーを書いている人たちはみんな、僕と同じで、異世界から帰ってきて、その経験を活かして作品を執筆しているものだと……前にカキヨミのリアルイベント、あったじゃないですか。そこで『トラパラ』のカシワモチ=モッチモチ先生にお話ししたら、びっくりされてしまって笑


 みんながみんなそうではない、って実感できたのは『げきあまライフ』のおかげかな。カシワモチ先生とお話ししたおかげで『げきあまライフ』は生まれています。僕はあんなスクールライフを送っていないので……。でも、こうだったらいいな、と考えながら書くのは楽しいです。ウランバナで魔術学園に通っていた時も、結局マーティが四六時中ついてまわってましたしね。


 あの子『転勇』ではマイルドにしていますが、実際はもっとべたべたしていました。僕が他の子に目移りしたら妨害してきたり、魚料理苦手なのを知っていて毎日魚を食べさせようとしたり。魚については『転勇』だと、あの世界に魚料理が普及してないことにしちゃいましたね。だって、アロンドラいますし。エルはまあ、チョロインですけど、アロンドラは同胞が食われるのを良しとはしないでしょ。


 このインタビューを読んでくれている人は『転勇』も読んでくれている、という前提で話していますが、僕はトレスでした。本名は太一です笑


 魔王ネヒリム戦を書けていないのは、僕が魔王ネヒリムと戦えていないからです。人間は人間として、エルフのヘリテイジ王国とこれからも仲良くやっていけばいいし、魔王と魔族と魔物とはお互いの土地で共存していく路線でいってほしいと、僕は思っていました。


 ですが、僕は“勇者”という立場上、そのような意見は出せません。


 周りからは「魔王を倒せ」と言い続けられる毎日。もちろん、魔物に住居を破壊された集落や、魔族に乗っ取られた地域があるのも知っています。それでも、僕は共存路線を望んでいたので、マーティの監視をかいくぐって魔王城に行き、和睦協定を結ぼうとしました。戦いから逃げたのではありません。


 単騎乗り込んだ僕へ、魔王は「元の世界に戻らないか」と提案してきました。――この提案に、僕はイエスで答えたんです。


 こうして、僕がブラック企業での戦いに疲れてしまって、終電に乗ってふらふらと帰っていたら事故に遭った、あのときに戻ってきました。


 辞表を出そうとしたら上司から詰められたんですけど、魔物と戦うのに比べたら……って感じでした笑

 上司も社会人である以上、僕を本気で殺しにかかってはいませんし。


 僕は僕で社会人としての権利を主張して、最後の1ヶ月で有給休暇を消化しながらバイトを探して、バイトしながら『転勇』を書いています。書籍化やコミカライズのお声がけをいただいてバイトを辞めようかと思いましたが、そこは編集のKさんに止められました。バイトの経験も、そのうち作品に活かせるかもしれません。

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転生した異世界にラーメン二郎がないので死ぬしかない 秋乃晃 @EM_Akino

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