ラーメン
エピローグ、あるいは、魔王との戦闘
ラーメン二郎には、有名な社訓がある。
一、清く正しく美しく、散歩に読書にニコニコ貯金、
週末は釣り、ゴルフ、写経
二、世のため人のため社会のため
三、Love & Peace & Togetherness
四、ごめんなさい、ひとこと言えるその勇気
五、味の乱れは心の乱れ、心の乱れは家庭の乱れ、
家庭の乱れは社会の乱れ、社会の乱れは国の乱れ、
国の乱れは宇宙の乱れ
六、ニンニク入れますか?
登士郎はこのすべてを守りながら『ラーメン登士郎』の営業を続けていた。
マナの染み込んだ土壌で育てられたヤサイ、そのヤサイを食べたブタ、すべてのエネルギーが溶け込んだスープ……登士郎の作り出した二郎インスパイアのラーメンは、ウランバナでは“最強の料理”である。
「みんな、寸胴は持ったか!」
今日は臨時休業だ。魔王ネヒリムを倒しに行かねばならない。勇者トレスの悲願であり、ウランバナに住むすべての生命がその後の平和を心待ちにしている。もちろん『ラーメン登士郎』の営業再開も。
「はい!」
「もっちろんですともぉ」
「妾の出番じゃな」
「行くわよ!」
「張り切ってゴー!」
聖女マーティ、薬師クレー、女王プティット、魔族エル、巫女パーニャ。それぞれがカエシや麺、各種トッピング、丼を持っている。
「俺は、勇者
魔王城に乗り込んでからスープを仕込んでいる暇はない。魔王ネヒリムの腹心、四天王、その他配下の皆様に邪魔をされてしまう。そこで、登士郎は秘密兵器“汁なし”を持ち込むことにした。
汁なしを開発したのはラーメン二郎の横浜関内店である。スープがなく、自家製麺と豚と脂のアンサンブルにて感動を生み出す一品だ。油そば、まぜそば、和え麺とも言われる。馴染みのない人は、冷やし中華を想像していただけると近しい。
スープがないぶん、麺がのびないため、攻略に時間がかかっても最後まで美味しさが持続する。猫舌でも安心してかきこむことが可能だ。横浜関内店は他にニラキムチという有料トッピングがあり、こちらを汁なしと組み合わせると、うま味と辛味のベストマッチが生まれる。
「山田……俺は『Love & Peace & Togetherness』を実現する……!」
登士郎は会ってもいない山田総帥に誓いを立てた。三田本店には汁なしはない。脳内の山田総帥(イメージ画像)がにこやかに「行っておいで」と背中を押してくれた。
「エル、魔王って結構食べるほう?」
「うーん……小なら、いけるかも……?」
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