第38話 小さな存在

 ゼファラ王国に来てから、アイリの天魔の力は予想以上の効果を発揮した。

 アイリの歌声は、国の民衆を癒し、時には不安を取り除き、ゼファラ王国に一種の平和をもたらしていた。農村では龍による被害で荒廃していた作物が再び芽吹き、辺境の村では、彼女の力によって住民たちの士気が高まった。ゼファラ王国の中で天魔の力は「奇跡」として扱われ、民衆の間では希望の象徴となっていった。


 父親は満足げだった。


「よくやった。これでゼファラ王国の安定は盤石だ」


 その言葉とともに、現国王の笑顔が浮かぶ。だが、レオンにはその笑顔が不気味に映った。彼はその時気づいた――全ては父親の計画だったのだと。



 ゼファラ王国の王宮は、一見すると静寂と秩序に満ちているように見える。しかし、その裏では継承権を巡る争いが絶えない。現王はレオンの父であるが、王位継承のルールは複雑だ。第一王子であるレオンは当然のように次期国王と目されているが、他の王族や有力貴族の支持を得なければ、彼の地位は盤石とは言えない。


「次期国王は決してレオンではないほうがいい」


 そんな囁きが、密やかに王宮内を飛び交っている。第二王子であるセザールは、貴族たちの間で人気が高い。彼は慎重な性格で、貴族たちの意向を巧みに汲み取り、いくつかの政策において王宮の主導権を握りつつあった。


「お前はただの剣士に過ぎない」


 セザールの言葉が頭をよぎるたびに、レオンの胸には怒りが込み上げる。龍討伐という危険な任務を課されている間に、王宮での勢力争いから遠ざけられているのではないかという疑念が消えないからだ。



「お前が王になるには、龍討伐の成功が必要だ」


 父王は厳しい表情でそう言い放った。レオンにとって、それは使命ではなく、押し付けられた「試練」だった。息子への愛情からではない。父にとってレオンは、あくまで「ゼファラ王国の未来を守るための駒」に過ぎなかった。


 王位の正統性を保つために、民衆の信頼を得る「象徴」として、レオンは利用されている。それがレオン自身にも分かっていた。


「王国を守るためだ、レオン」



 そう言いながらも、父の瞳にはレオン個人を思う色は一切浮かばない。ただ、ゼファラ王国の権威と安定だけがそこにある。


(俺がこの国のために命を懸けても、父にとってはただの一手に過ぎない。)

 その思いがレオンの胸を締め付ける。父の言葉に従わなければ、自分は王族としての価値を失う――それがレオンの恐怖だった。



 首都ゼファリスの豪奢な宴会場では、貴族たちが日夜酒に酔いしれ、龍討伐や国政について無責任な意見を交わしている。


「龍を倒したら、また新しい貴族領が増えるのかしら?」

「農民たちがもっと税を払えばいいだけの話だ」


 そんな言葉を聞くたび、レオンは苦々しく思う。彼らは、実際に農村を襲う龍の脅威も、隣国との緊張も、知る由がない。


 一方で、農村や辺境では、日々の生活すらままならない民衆が増えていた。特に地方の農民たちは、重税と龍の襲撃で疲弊している。


「王族や貴族たちが私たちを見捨てている」


 そんな不満が地方では広がり、ゼファラ王国は内部から崩壊しつつあるように見えた。


「龍を倒せばすべてが解決する」


 そんな父や貴族たちの楽観的な言葉に、レオンは憤りを感じていた。彼が見てきた現実は、そんな単純なものではない。


(民衆の不満は龍討伐だけで解消されるものじゃない。俺たちの無関心と怠慢が、国を滅ぼす原因になる)


 だが、そんな考えを抱きつつも、貴族たちに意見することは許されなかった。

(俺の役目は龍を倒すことだけだ。それ以上でも、それ以下でもない。)




 気が付けば、アイリと結婚し、子供を産んでいた。

 それすらも計画の一部だったのだ。父親にとって、天魔の力を持つアイリを王家に取り込むことは、ゼファラ王国の支配力を強固にするための道具に過ぎなかった。そしてレオン自身もまた、父親の「操り人形」に過ぎなかった。



 その中でレオンが狂った最大の出来事。それは母親の死だったかもしれない。

 レオンの母親が龍に殺された。それは、彼がまだ幼い頃だった。

 その悲劇は、彼の人生を大きく狂わせた。母を失った日、彼の心には愛情では埋めきれない空虚な穴ができた。そしてそれを埋めるかのように、父親は彼に「王としての責務」を植え付け、剣術や天魔の訓練を徹底的に課した。



 レオンの母親――レティシアは、温かく思慮深い女性だった。貴族の身分にありながら、民衆にも分け隔てなく接する姿勢を持ち、幼いレオンにとってその姿は尊敬と愛情の象徴だった。



「人の上に立つ者は、誰よりも心を広く持たなければならない」


 レティシアがよく口にしていた言葉だ。それは幼いレオンにとっては難解な言葉だったが、彼女が農村を訪れ、民の声に耳を傾ける姿を見て育った彼は、その意味を少しずつ理解し始めていた。


「レオン、どれだけ強い力を持っても、それを正しい方向に使わなければ、ただの暴力だよ」


 レティシアは、剣術や天魔の力を学び始めたレオンに、力の使い方について何度も諭した。彼にとって、母は優しさと強さを教えてくれる唯一の存在だった。




 レティシアが亡くなったのは、レオンがまだ10歳の頃だった。王家の視察で地方を訪れていた際、突如として現れた「赤の龍」が護衛を突破し、母の命を奪った。炎と咆哮に包まれた現場で、レオンは母の姿を必死に探したが、その目に映ったのは、焼け焦げた衣服と血の跡だった。


「……母さん……!」


 少年の叫びは誰にも届かず、その場で膝をつき涙を流すしかなかった。


 この事件をきっかけに、レオンの中に龍への憎しみが芽生えた。


「龍は許せない。絶対に討つ」


 その感情が彼を突き動かす原動力となった。



 母の死後、父親はレオンに対する態度を一変させた。


「お前が次の王だ。母の意思を継ぎ、この国を守らなければならない」


 それは父の愛情ではなく、責務を押し付ける冷たい言葉だった。


 父親はそれ以来、レオンに厳しい剣術と天魔の訓練を課し、休む間も与えなかった。


「お前が弱いから、母を守れなかった」


 その一言は、幼いレオンの心に深い傷を刻んだ。


 母親の優しさと教えとは正反対の父親の言葉に、レオンは従うしかなかった。


「俺が弱かったせいだ……」


 レオンは自分を責め続け、強さを求めて努力を重ねた。



 父の押し付けが続く中、レオンの中には次第に反発心が芽生えた。


「母が教えてくれたことは、こんなことじゃなかった」


 彼の心の中には、父への反感と母への思慕が入り混じり、複雑な感情が渦巻いていた。


 母が生きていたら、こんな冷たい家庭にはならなかった。


 父の冷酷さを母と比較するたび、彼の心には怒りが積み重なっていった。


「俺は父の言いなりにはならない」


 その誓いが、彼の行動の裏に隠されたもう一つの動機だった。



 レオンは、母親を守れなかった後悔と父の期待に応えるべきという使命感の間で揺れ動いていた。母親の死が彼の人生を大きく狂わせた一方で、その死がなければ、彼は剣を握ることも、龍を憎むこともなかったかもしれない。


「母さん……俺は強くなったよ。でも、それで母さんの教えを守れているのか……?」


 時折、レオンの心にはそんな問いが浮かぶ。しかし、それに答えを見つけることができないまま、彼は前へ進むしかなかった。



「国を守るためにお前が強くならなければならない」



 その言葉を何度も聞かされたレオンは、父の期待に応えるべく、自分を押し殺してきた。




「天魔の力を持つ国の王子」――それがレオンの立場だった。


 だが、どれほど大きな力を持っていても、彼はただの一人の人間に過ぎない。やれることには限りがあり、彼の力ではゼファラ王国全体を変えることなどできなかった。


 ゼファラ王国では、天魔の力を持つ者が王家の血筋にいることが国家の安定に直結していた。

 天魔の力は、龍討伐だけでなく、国の象徴であり、他国に対する威圧でもあった。


「天魔の力は王国を守る盾であり、敵を打ち砕く矛だ」


 歴代の王はそう信じ、天魔の持つ力を国家戦略の中心に据えてきた。


 しかし近年では、天魔の力を持つ王族が少なくなり、王家の権威は揺らぎつつあった。天魔を持たない次期王が誕生すれば、それはゼファラ王国にとって致命的な弱点となり得た。


「他国は天魔の力を軽視しない。それがない王国は、ただの大きな的に過ぎない」


 レオンの父親――現国王はその危機感を抱き、天魔の血筋を確保することに執着していた。



 ハナビ――レオンとアイリの子供。彼女が誕生した瞬間から、その存在は国の運命を背負わされていた。


「この子は、王国の未来を守る希望だ」


 父親の言葉は、レオンにとって重い鎖のように響いた。

 父はすでに、ハナビを次世代の天魔の使い手として育てる計画を進めていた。


「天魔の力は生まれつき持つものだけではない。鍛え、制御し、磨き上げることで、王家の守護者となる」


 父親は、ハナビが天魔を継承する存在であることを信じて疑わず、彼女が成長すれば徹底的な訓練を施すつもりだった。


 しかしその言葉には、ハナビという人間の存在を軽視する冷たさが含まれていた。

 彼女が天魔を持たないと分かった瞬間、彼女の価値がなくなる可能性さえあった。



 レオン自身、ハナビに対して複雑な感情を抱いていた。

 彼女が誕生した時、抱き上げた小さな体は、自分にとって愛情を注ぐべき存在だと本能的に思わせた。

 ハナビが持つ天魔の可能性に気づいた時、その誓いは使命感にすり替わっていった。


「この子が天魔を受け継げば、王国を守る武器になる」


 彼の父親がその期待を押し付けてきた瞬間、ハナビはただの子供ではなくなった。



 レオンの父は、ハナビが成長すればすぐに訓練を始めるよう指示を出していた。


「お前が父親なら、この子の成長を見守るだけでなく、育て上げる義務がある」


 父のその言葉にレオンは反発したい気持ちを覚えながらも、ハナビに宿る可能性を見逃すわけにはいかなかった。


(俺が国を守るのと同じように、この子もまた国のためにその力を使うだろう)


 だが、その考えの裏には、父親の意志に無意識に従ってしまう自分がいることを、彼は薄々感じていた。




 ゼファラ王国の広大な領土には、多くの村や都市が存在するが、龍の脅威はそれら全てを影で覆っている。


「龍討伐」という言葉は、民衆にとって希望そのものだった。


 農村の人々にとって、龍を倒すことは生命線を守ることに等しい。龍が農地を荒らし、家畜を食い尽くし、村そのものを焼き尽くす日々。


「青の龍がいなくなれば、私たちもやっと安心して生活できる……」


 そんなささやかな願いが、ゼファラ王国の隅々にまで広がっていた。


 都市部では直接的な脅威を感じていない者もいたが、龍討伐は彼らにとって「国家の威信」を示す象徴だった。


「龍を倒した王国こそが、世界に君臨する」


 この考えは貴族たちの間で浸透し、討伐の成功が国力を示すと同時に、国民の団結の象徴にもなっていた。



 龍討伐は国の未来を左右するほどの重大な使命であり、その成功は民衆に安心をもたらす。


「龍を倒せば、農村の復興が進み、国全体が前を向いて歩き出せる」


 そのため、討伐の成功は王族や貴族にとって政治的な成果以上に、民心をつなぎ止めるための手段でもあった。


 だが、失敗すれば――。


「もし討伐に失敗すれば、王家への信頼は完全に失墜する」


 ゼファラ王国は、過去の討伐失敗によって内乱が勃発した歴史を持つ。その記憶は未だに国民の間で語り継がれており、討伐が失敗すれば、貴族と民の亀裂が一気に広がることは避けられない。


「龍を倒せなければ、民は王族を見放し、貴族たちはその責任を押し付け合うだろう」


 討伐は国の運命を一手に握るものであり、それを命じられた者には絶大な重圧がのしかかる。



 レオンは、ゼファラ王国を代表する若き天才剣士として龍討伐を命じられたが、その使命が彼に与えるプレッシャーは計り知れなかった。


「俺が失敗すれば、ゼファラ王国そのものが終わる……」


 父親からの期待、貴族たちの嫉妬と陰口、民衆の無言の圧力――。

 それら全てが、レオンを精神的に追い詰めていた。


 彼は冷徹に見られることが多かったが、その内心は常に緊張感と恐怖に満ちていた。


「失敗したら、何もかも失う」


 その考えが彼を突き動かし、より強く、冷酷に振る舞わせる要因となっていた。



 レオンにとって龍討伐は、単なる使命ではなかった。それは、自分が「父親に認められるため」の試練であり、「ゼファラ王国を救う英雄」としての責務だった。


「お前が討伐を成功させなければ、誰がこの国を救うというのだ。」

 父の言葉は彼に重くのしかかり、幼少期から彼を押し潰すような影を落としていた。


「俺が止まれば、国も止まる……」


 レオンは何度もそう言い聞かせ、剣を握り締めていた。

 彼が討伐を成功させることで国が救われると信じながらも、その成功が自分の幸せにつながるとは思えなかった。



 天魔の力を持つ者は、龍を倒すための鍵として王国にとって必要不可欠だった。


「天魔がなければ、龍の冷気や炎に抗うことはできない」



 レオンが天魔の持ち主であるアイリに固執したのも、彼女の力がなければ討伐が成り立たないという現実があったからだ。


「俺一人では、この国を救えない」



 その現実が、彼をアイリという「力」に執着させた一因でもあった。



 それゆえに彼は、リリアンやリールといった協力者を各地に派遣し、情報収集や勧誘を進めていった。



 リリアンはゼファラ王国の情報網を支える優秀な諜報員だった。彼女の任務は常に命がけであり、ゼファラ王国の外周を巡る危険地帯や、隣国の監視下にある村々を訪れることが日常だった。


「敵地に潜入するだけでなく、信頼を得るために自らの正体を隠し続ける。それがどれだけ過酷なことか、王宮の者たちは分かっていない」


 リリアンは内心でそう呟きながらも、与えられた任務を黙々と遂行していた。


 彼女が訪れる村々は、貧困と混乱の中にあり、どの村も異なる課題を抱えていた。


「飢えた民が龍を恐れ、同時に希望を求めている場所」


 リリアンはその現実に触れるたび、自分の仕事がいかに重要かを実感しつつも、国の無関心さに怒りを覚えた。


 彼女の複雑な感情は、レオンに対しても向けられていた。


「彼は才能があり、目的を持っています……だが、感情はあまりありませんけど」


 リリアンはレオンを「ゼファラ王国の未来を背負える男」として認めているが、その非情さに時折疑問を抱いていた。


「私はこの国のために動いています……でも……彼はどうですか?」


 レオンが本当に国の未来を考えているのか、それとも個人の野望のために動いているのか、リリアンには判断がつかなかった。



 一方でリールは、リリアンとは対照的にレオンにとっての「リスク」としての存在だった。リールは優秀な諜報員でありながら、彼女の行動は予測がつかず、独自の目的を持って動いていた。


「レオン様、私がこの情報を届けた理由、知りたいですか?」


 リールはいつも挑発的な態度でレオンに接し、その真意を測らせない。


 彼女の情報収集能力は確かだったが、その報告内容は時に曖昧であり、彼女が本当にゼファラ王国のために動いているのか、それとも個人的な利益のために動いているのかは不明だった。


「リール、お前の目的はなんだ?」


 レオンが彼女に問い詰めたこともあったが、リールはただ笑みを浮かべるだけで具体的な答えを返さなかった。


「私の目的?それは……秘密よ」


 その態度が、レオンを苛立たせる一方で、彼女の存在を必要不可欠なものとして感じさせていた。



 リリアンとリールは、レオンにとって両極端な存在だった。


 リリアンは忠実な協力者として彼を支え続ける一方で、リールはレオンにとって「信じられないが使える駒」であった。


 リリアンはゼファラ王国の安定を心から願い、そのために危険な任務をいとわなかった。

 彼女の情報収集能力と誠実さが、レオンにとっての重要な資産となっていた。



 一方、リールは予測不可能な行動と曖昧な目的を持ち、時にレオンの計画を乱す存在であった。

 彼女の言動には、国やレオンに対する皮肉が含まれ、それがレオンの神経を逆撫ですることも多かった。



 リールの予測不能さは、時にレオンの計画に深刻なリスクをもたらした。

 彼女は情報を一部しか提供しなかったり、報告を遅らせたりすることで、レオンを困惑させた。


「お前は俺を助けているのか、それとも邪魔しているのか?」


 レオンが苛立ちながら問いかけると、リールは笑いながら言った。


「助けているわよ。ただし……あなたのためかどうかは分からないけどね」


 その言葉に含まれる皮肉は、レオンを不快にさせる一方で、彼女の重要性を再認識させるものでもあった。



 リリアンとリールは、どちらもゼファラ王国における情報収集の要であり、レオンにとって不可欠な存在だった。

 しかし、2人の対照的な性格と行動が、レオンの計画に常に影響を与えていた。


 リリアンは、レオンが信頼を寄せる数少ない人物の一人であり、彼の指示に従う忠実な協力者だった。

 一方でリールは、彼の信頼を裏切る可能性を常に秘めながらも、独自の手腕で重要な情報をもたらす存在だった。


「リリアンは確実性、リールは予測不能……どちらも手放せない」


 レオンはそう思いながらも、2人の存在に助けられ、同時に振り回される日々を送っていた。



 そして、アイリという女は利用価値のある道具。

 父親はそう言ってアイリの存在を評価した。そして、「お前は良い道具を見つけた」とレオンを褒めた。だが、その言葉を聞いた時、レオンは胸の奥で哀れみと苛立ちを感じた。アイリという人間が、父にとってはただの「良い道具」でしかないという事実。そして自分もまた、その道具を使う「操り人形」に過ぎないという現実。


(俺が求めているもの、それは母親、そしてその愛情だったのかもしれない……)



 レオンの胸には、失われた母親への想いが今でも強く残っていた。彼が求めていたのは「愛」だったのだろう。しかし、その愛情を得られなかった彼は、父親の期待に応えるために必死に自分を押し殺してきた。



 その抑圧された日々が、ジュラークという男と出会うことで変化し始めていた。

 特別な力を持たないジュラーク――それなのに彼は強かった。努力によって鍛え抜かれた剣術、そしてその生き様が、レオンにはまぶしく映った。



「天才剣士と言われているが、ジュラークは努力の天才だった」



 レオンは初めて対峙した時、その手を見て気づいた。剣を握り続け、無数の訓練を積み重ねた結果が、その手に刻まれていたのだ。それは、レオンが持つ天魔の力や、才能のみに頼った自分とはまるで違う強さだった。


「結局、俺は国の操り人形に過ぎない」


 ゼファラ王国という強大な国の中で、彼もまた一人の人間に過ぎないのだ。国を変えるにはあまりにも小さな存在――その現実を突きつけられながらも、レオンは一歩ずつ前に進むしかなかった。


「龍を倒す。それが俺に課せられた運命だ」


 それが正しいかどうかも分からぬまま、レオンは自分の道を模索し続けていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

愛する妻を寝取られても、天才剣士なので新しい嫁を探そうと思う ワールド @word_edit

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ