第18話

あれから一年の時が経ち、今も青葉くんの開発した翻訳機で、宇宙人と交渉を行っている。

「選抜戦術部隊制度」は国民の頭の中から消えていってる。一応制度的に残ってはいるが、どちらかというとブラック企業から人を選抜する制度に変わってきている。

家に帰ると妻がテレビの前でワクワクしていた。

桃谷たちをモデルとした戦隊物が、昨日の朝から始まっている。

ニヤつきながら、全話録画を設定した妻。

妙に明るいポップな音楽と派手な歌で番組は始まる。

とはいえ、戦隊ものにするにもあまりに自分達の代は活動内容に派手さがない。


その戦隊ものは今までとあまりに違う様相に、

戦隊ものファンからは最初のうち、すごく叩かれたが、まさかの女子高生や主婦層、高齢者層にまで噂が広がり、伝説の戦隊ものになった。

五人の戦隊もののはずなのに、戦隊ものとして宇宙人と対峙するのはただ一人の美少女。癒し系美少女が話を聞いて、戦わずにみんなを仲間にいれていく。

しかも初のピンクが主役。キメ台詞は

「心優しきマーメイドピンク、私がみんなのお話聞くよー!!」

気がつけばこのキメ台詞から番組が始まるようになっていた。

他のメンバーはブルーが天才的科学者。 レッド、イエロー、グリーンは町の平和を守るため、警察や消防を手伝っている。

警察からは違反者が減っていると表彰された。

あまりのファンの多さにグッズは飛ぶように売れる。

妻はずっとニヤついている。

そう、桃谷主役のその戦隊ものは、

桃谷以外の性別や性格は変えることなく、

桃谷だけ絶世の美少女に変えられた。

戦隊ものの歴史を変えたゆるふわ戦隊ものという

謎のジャンルを打ち立てた。


いまや、幼稚園児からお年寄りまで知るドラえもんやアンパンマンのような位置取りだ。

大人の男性のオタクたちはすごいお金を落とし、社会現象にまでなっている。


「桃谷さん、印税が入るからって仕事来なくなっちゃダメですからね?」

加藤がニヤニヤしているが、そんなことしたら即刻、自分があの戦隊ものの主役のモデルだとばらされそうでこわい。しかも、国民からヤジが飛ぶことは確定している。

別に仕事が嫌な訳ではないので、働きにはくるが、

早く次の戦隊ものがはじまらないかと、思っている桃谷なのであった。





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こちら戦隊もの 波流 @satomango

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