第2話 球体

学校の授業というものはどうしてこんなに退屈に感じるのだろうか。


 それでも成績のことは考えなければならないので最低限要点だけはしっかり把握しノートへとまとめる。

 それを繰り返すだけ。もはや作業のようにすら感じる。


 だからといって外で行われているような体育の授業を受けたいのかと言われると別にそういうわけでもない。


 だが今回の授業はやたら雑談が多い。面白い雑談ならいいのだけどそんなことは到底なく授業を聞いている意味を感じづらく、俺は聞くのを止めて先ほどのことを思い出す。


 それにしてもあの少女は一体なんだったのだろう。 コネクター?とか言ってた気がするけどどういう意味だったんだ?

 というかそもそも誰だったんだろう。忘れているだけで実は知り合い?


 小学校と中学校の人たちを可能な限り思い出してみるもとくにあの少女らしき人は思い当たらない。


 まぁ正直あれだけ可愛い子、出会っていたら間違いなく印象に残ってるだろうしやっぱり実は昔会ってたという線はないだろうな。


 そろそろ先生の雑談も終わり授業がまた進もうとしていたので要点くらいは聞いておかないとと思い前を向くと、何やら不思議なものが教室の前の方で浮いていることに気が付いた。


 ...?なんだこれ。黒い球体?


 バランスボールほどの球体が俺の斜め前に佇んでいた。


 明らかに異様な光景がそこにあるものの反応している人は誰一人いない。


 誰も気づいてない?そんなわけない。ここまで大きいもの、気づかないわけがないし気づいたとしても無反応でいるわけがない。


 つまりはまたこれもあれだろう。


 俺にしか見えない。


 ヒビ割れの次は球体か、もうこの先何が見えてもおかしくないな。


 その瞬間一瞬にして教室が静かになった。


 あれ、なんで急に静かに


 辺りを見ると自分以外のクラスの皆んながまるで時が止まったかのように静止していた。


 !?何が起きたっていうんだよ。


 立ち上がって周りを見渡す。

 黒板に文字を書いている途中のまま止まっている先生。何かをノートに書き込もうとしたまま止まっている生徒。

 

 窓の外を見ると外で体育の授業を行っていた人達まで動きが止まっている。


 なんでこんなことが。まさか...


 もしかしてと思いさっきの黒い球体の方を振り向く。


 あれ、さっきより小さくなってる?


 その瞬間、教室のドアが勢いよく開いた。ドアへと視線を移すとなんとさっきの少女がなにやら焦った表情でこっちを向いていた。


 少女は早足でこっちに向かってくる。


 俺の目の前までやってきたかと思ったら急に俺の手を取り、強く引っ張ってきた。


「え?どうした」

「逃げるの。急いで」

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