ウソをつくキミと 騙される私
平 遊
エイプリルフールに想いをのせて
「サツキ、ブルーのサクラが見つかったんだって!」
「えっ、ホント!? どこでどこで!?」
「サツキ、今日は何月何日?」
「……あ」
雫は毎年、エイプリルフールにウソをついた。
「サツキ、白と黒が逆のパンダが中国で見つかったんだって!」
「えー、ウソー!」
「うん、ウソ」
「えっ?」
「サツキ、今日は何月何日?」
「……あ」
そして私は毎年、雫に騙される。
でも、雫はエイプリルフール以外にはウソはついていないと思っていた。
「サツキのこと、いつも応援してるよ」
「私はいつでも、サツキの味方だから」
雫はいつもそう言っていた。
私の恋愛相談にも乗ってくれていた。
私が愚痴を言うと、雫は決まって言うのだ。
「やめなよ、サツキを困らせるような、そんな男」
「そだね」
多感な時期をいつも一緒に過ごした雫と私。
「私たちってさ、ツインソウルなのかもね!」
そう言うと、雫は嬉しそうに笑った。
私たちはお互いにひとりっ子だったけど、本当の姉妹のようだった。
だから、気づかなかったの。
雫が心の底に抱えていた想いに。
「サツキ、可愛い。サツキのこと、お嫁さんにしたいな」
大学生になって私の部屋で2人で宅呑みしていた時、酔った雫がそんなことを言った。
私はなんだか照れてしまって、笑ってごまかそうとしたんだけど、その時雫、言ったんだ。
「キスしたい」
って。
「サツキを誰にも渡したくない。私だけのものにしたい」
って。
私がびっくりしていたら、雫はペロッと舌を出して笑ったの。
「サツキ、今日は何月何日?」
「……あ」
その日はちょうど、エイプリルフール。
「やだもう雫! びっくりしたよー!」
なんて、私言っちゃったんだけど。
きっと、雫はこの時わかっちゃったんだね。私と雫の関係が、親友以上になることはないって事が。
大学を卒業すると、雫は世界を見て回りたいと言って、旅立って行った。
ひとりきりで。
そして毎年、4月1日になると、必ずメッセージを送ってくる。
『今年はそっちに帰るよ。必ずサツキに会いに行く』
でも、雫は一度も私に会いに来てはくれない。
きっと今年も、雫は帰ってこないだろう。
それでも私は、こう返信するんだ。
『うん。待ってるよ。絶対に会いに来てね!』
雫がウソをつき続けるなら、私も騙され続ける。
雫のウソに、騙され続ける。
ねぇ、雫。
私もね、雫のこと、いつも応援してるよ。
私もいつでも、雫の味方だから。
会えなくても、これからも、ずっと。
【終】
ウソをつくキミと 騙される私 平 遊 @taira_yuu
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