英雄の軌跡を辿る旅

噺から始まる、と言う点で特徴的な作品です。
導入部分は馴染みない人名や語り口に疲れる方もいるかもしれませんが、本格的に英雄の話に入ったあたりからは慣れ親しんだ名称、文体に落ち着きますし、ふりがなも適宜付けられています。
冒頭は「寄席ってこういう感じなんだな」と軽く流して、ぜひ読み進めて欲しいと思います。

導入や所々に使われる地の文の表現からの推測になりますが、講釈師の話として物語が進行しています。
そのため情景描写は非常に鮮やかです。
世界観の設定に関しても都度されるので、親切な設計になっています。
一方で心理描写は最低限になっているため、どちらかと言うと対話劇や壮大な舞台演劇が好きな人向けでしょう。舞台映えしそうな作品です。

キャラクターの個性は非常に立っているため、個性的な登場人物に出会いたい!という方はご一読ください。

ライトノベルというよりはライト文芸に近いと感じられました。
和風ファンタジーに親しむ入口として、よい作品だと思います。
「十二国記」や「烏に単は似合わない」などが好きな人にも手に取って欲しいです