第37話 セレステ騎士団
惑星リッペンに到着。
しかし何故か港寸前で入国を止められた。
ここの基地から連絡が入る。
「何用でありますかな。そこの見知らぬ艦よ」
「すみません。中に入れてもらってもいいですかね?」
「ですから何用でありますかな?」
「連邦のアルトゥールと申します。海賊の件で来ました。あのぉ~、港にでも入れてもらえませんかね?」
「仕方ありませんね。港までは入れてもよいのですが、艦からは誰も出てこないでくださいよ」
「わかりました」
この惑星の連邦の人は、敵のような扱いをしてきた。
警戒度マックスと見ていい。
はて、なんでこんなに警戒されてるんでしょうか?
意図がわかりませんね。
俺は待つ間、悩んでいた。
その後。
長らくリッペン駐屯地の港で待機する。
もうかなりの時間が経ち、暇を持て余しすぎたために、皆からもあくびが出てきた。
それほどに長い待機時間だった。
「大佐どういうことでしょうか。かれこれ3時間くらい何もないですね」
「ほんとよ。なんでここまで何も連絡ないのよ」
ウーゴとイネスが疑問を口に出す。
「そうだね。どういうことだろうね。艦隊のドックに入れたは、いいけどさ。ここの責任者さんに会いたいよね。いや、せめて誰でもいいから、連絡くれないのかな」
俺が不満を漏らすと、さっきの問答をした人の声が聞こえてきた。
「貴殿らはいつまで・・・仕方ありません。あなた方。我が隊長にお会いしたいのでしょうか? それならば、さっさとおかえりになった方がよろしいかと。我らの主は忙しい。お帰り願いたい。それに彼の場所まで行ける勇気があるものなど、おりませんからね。ハハハ」
なんか慇懃無礼な人だな。
用事があるってさっき言ったじゃん。ほんとにさ。
いいから会わせてくれよ。
「すみません、勇気なんて必要ないんで。隊長さんに会わせてくださいよ。ぜひお会いしたいのです」
「ほう、仕方ありませんね。それでは少々お待ちください」
これ何? 三顧の礼とかじゃないよね!?
今の問答で2回目だけどもさ。
別にここの隊長の事が、諸葛亮ほど欲しいわけじゃないよ。
またしばらくして後。
待機が長いと感じることで皆、少しずつ疲労感も出てきていた。
冷静なカタリナにも疲労が顔に出ていた。
通信が入る。
「それでは許可が出ましたよ。ただし一人だけで来てください。よろしいですね、おひとりですよ」
「わかりました。では今からそちらに行きます」
通信が切れると、全員が俺を見る。
「だめです」「だめだ」「だめ」
あれあれ、全員一斉ですね。
俺に行くなってか。
いやいや、説得できんのは、そもそも俺しかいないじゃん
それにここはさ。
敵の本拠地じゃないんだから、なにもそんなに心配しなくても大丈夫だよ。
ほんとにぃ。皆、心配性だな。まったくもう。
「そんなに、心配しなくても大丈夫だよ。銀河連邦の仲間の一員だよ。それに俺が直接お願いに行かないと失礼じゃないかな!」
「いや危険だ。せめて俺か、フレン、フェルナンドの誰かがついていかないと危険だぞ」
「あたしならいつでもついてくぜ」「俺もさ。アルさん」
集中した視線を浴びた。
いやいや。
なんでそんなに危険視してんだよ。
大丈夫だって。え!? 何、皆そんなにここは危険なの?
でも行くしかないじゃん。艦隊を貸してくれって、お願いすんだよ。
俺にしかできないじゃん。
「ふぅ~。大丈夫だってば。いいからみんなはここで待機ね。大人しくしててね。大佐命令ですよ」
と言って出て行ったのを後悔した。
◇
ここの隊長の元へと歩く最中のこと。
なんかめっちゃ怖いんですけど。
なんで、廊下の両脇に剣とか槍を持った人がいんの?
しかも綺麗に並んで、兵が直立で立っていますことよ。
それに、この人たち。騎士の格好をしてるんだけど。
でもこれはカッコイイです。
中世ヨーロッパ風の雰囲気でさ。
でもそうじゃなくて、騎士の姿なのに頭が世紀末なんですけど。
まさしくトリスタン大佐と同じでありますよ。
ねぇ、この世界の最先端の髪型はモヒカンなんでしょうか!?
ヒャッハーって言うんでしょうか?
すんごく怖いんですけど。
格好がミスマッチすぎて怖いんですけど。
別なことを考えよう。
あ、あの人の髪赤い・・あ、この人は青だ・・・
・・・あなたのモヒカン凄いですね、天井まで行きそうっす。
ってやっぱり不気味ですよ。誰か助けて~。
取り繕った顔をした俺の表情は無。
でも内心はビビり散らかしていた。
案内してくれた丁寧なおじさんは最後に
「ではこちらです。くれぐれも中佐にはご無礼を働かないようにしてください」
と言った。
つばを飲み込み意を決して扉をノックした。
まさか、中にいる人もヒャッハーみたいな見た目なのかと手が震える。
下を向き、ノック音を鳴らして数秒後。
「どうぞ」
声が聞こえてから、おそるおそる扉を開ける。
すると、そこにいたのは髪型はポニーテールで、紫の髪が似合うイケメンが、両手を広げて待ち構えていた。
よかった~。世紀末じゃない。
いや。なんで髪型で緊張しなきゃいけないんだ。
心の中でツッコんでいると部屋の中のイケメンが。
「貴殿があの有名なアルトゥール大佐だな。フーン、なるほど」
「あの~何がなるほどなんでしょうか?」
「貴殿は戦士ではないな。雰囲気が戦士ではない。それに騎士でもないな。なぜなら、目が違う、手が違う、体の動きが違うのだ。それにこれだ」
イケメンが指を鳴らす。
すると、ババババっと部屋の両脇からフル装備の騎士が現れた。
おいおい。なんで伏兵みたいに騎士が出てくるんだよ。
ここは戦国時代か何かか。
後ろに待機しておいてさ、ここで俺を殺すつもり!?
「何の冗談でしょうかね?」
「貴殿は警戒していない割に、まだ余裕があるな。ほう。貴殿は死ぬことに恐怖はないのか?」
顎に手をかけて俺は真剣に悩んだ。
ん~~。んんん。んん~~~。
なんせ一回死んでるからな。
この状況は【怖い】とは思う。
でも俺は真の意味で死が怖いかと言われると怖くない。
俺は常に死の覚悟を持って戦いに挑むつもりだからさ。
そうだから、俺は別にこの状況は全く怖くない。
むしろ、ここの人たちがモヒカンであることの方が別の意味で怖いぞ。
んん~~~。
俺は本当の意味で、死の恐怖を味わうことがあるのかな。
でもその恐怖を体験するとしたら、俺が死ぬことよりも仲間が死ぬことの方かもしれないな。
「ほう貴殿は怖くないようであるな」
合図が出され、騎士たちが動き出した。
あれ!? 目の前に剣を向けられたよ。槍も向けられたよ。
なんで? 仲間じゃないのか!?
ふぅ~、君はなんか子供のような人みたいだな。
なれば。こうなったら仕方ないのである。
ではいいでしょう、そこの君。
「んん~。死が怖いか怖くないかは正直俺にはわからない。それに死ぬことを考えたって仕方ないんだ。なんせ俺たちの死は突然訪れるものなのですよ……病気、事故、戦争等々。こんな理由で明日、ぽっくり死ぬかもしれない……人生なんて常に死と隣り合わせ。そんないつ死ぬかもわからないことをさ、その都度いちいち考えてたらさ。いっつも恐怖してなきゃいけないんだよ。それは実に無駄な時間であるよね。俺は考えたって仕方ないことは後回しにして、今やりたいことを後悔しないために全力でやるんだ」
真っ直ぐ男性を見つめ話し続ける。
「んで今の俺は海賊を倒したい、だからあいつらを倒すのに君に協力してほしいんだ。俺は絶対に奴らを許すことが出来ないからさ………だからあんたらの艦隊の力を借りたい。いや貸してくれ」
そうこの必殺技。
【難しいことは後で考える】なのだ
開き直りが俺のモットーなのだよ君。
まず君は、名を名乗ってくれないかな?
俺は君の名前を知らんのだよ。ハハハハ。
心の中で笑った。まだ余裕があるみたいです。
「ムムム」
イケメンは黙り込んだ。
眉間にしわを寄せてから、顎に左手をかけ撫で始めた。
しばらくして。
「フフフ、まったく、そのとおりだ。貴殿の言うとおりだな。悩んでも仕方ないことを聞いたようだ。フフフフ」
呟き声で、軽く笑いだした。
「よし。皆やめよ。このお方は他の連邦の奴らとは違うぞ。面白い。皆この部屋から出よ」
命令を受けた騎士が全員出ていく。
出て行く際には皆、俺に礼をしていった。
「アルトゥール大佐。これは大変失礼致しました。私がこの騎士団、セレステ騎士団団長、銀河連邦、中佐ロクサス・マリーンです。今後お見知りおきを願いたい」
滑らかな手の動き、美しい胴体の動き、優しく沈んだ膝。
これは、ヨーロッパの最敬礼である。
一転して彼は丁寧な口調に。
高貴な出なのか、それはさぞかし優雅である。
「アルトゥール大佐。我々の数々の非礼をお詫びいたします。さあ、どうぞこちらに座ってください」
促されて部屋の中央にあるソファーに座った。
ロクサスは俺の向かいのソファーに座る。
ロクサスがテーブルにあった紅茶を優雅にいれながら話しかけてくる。
「先程は失礼しました。我が騎士団はいつも連邦にいいようにされていたのでね。毎度のごとくここに来る兵を試していたのです。まあ、連邦軍の奴は私の部屋まで来ることもなく、門前払いでありますね。度胸がありませんし、たとえ、私の元に来てもそいつらは屑ばかりでありました・・・。ですがあなた様は面白かったですね。最初の反応と最後の反応が全く違くなっている。まるで別人のようでしたよ」
香りのよい紅茶が出てきた。
「あ、どうも」
俺は差し出された紅茶を受け取り、コクっと一口飲んだ。
「美味しいですね!」
「ええ、それはよかった。……で。本題ですね、貴殿の艦隊の一員になればよろしいのですか。しかし、我が艦隊は2500ですよ。近海に出た海賊には、数で及びませんよ。私たちに勝てぬ戦を強要するつもりでしょうか」
少しだけ怒気がある言い方だ。
大切な部下を死地に送り込む気はない。
そういう意思を感じたが、俺もまた一歩も引く気はない。
「勝てます。俺の艦隊と合わせて、3000隻もあるんです。十分すぎますね。………俺の策で罠にはめて、あなたたちの武力で一瞬で終わらせるつもりです。そんでこれがその策ですね。見てください」
事前に紙に書いた作戦を提示した。
「こ、これは・・・・」
ロクサスは作戦を読んだ後、目が丸くなって止まった。
「フフフフ。ハハハハ。・・・・いいでしょう。これは、楽しくなりそうですよ。あなた様の指揮で私たちも動きましょう」
「ありがとうございます。それじゃ一旦旗艦に戻ります。皆と一緒に細かい作戦をお伝えしたいので、後ほど俺の所に来ていただけませんか? 後でお呼びします」
「はい。呼ばれたらぜひ、私が行きましょう。大佐連絡をお待ちしていますよ」
「それではまた」
帰る道中。
いやいや、今度は両脇の兵たちが俺が歩いて通り過ぎるたびに頭を下げてくるんだけど。
こ、これの方がコワいぞ。行きよりも帰りが怖いよぉ~。
今のこのなんていうのかな。
ヤクザ映画の中にいるみたいなんだけど。
剣を向けられるよりも怖いんですけど~~~。
◇
アーヴァデルチェに戻った俺。
「アル、大丈夫か。何もされてないよな」
「オリヴァー心配しすぎ」
「フン。いやどっか怪我してんじゃないのかよ」
フレンがそう言い近づいてくると俺の体の至る所を叩いていく。
肩、腰、足を。バシバシ、バシバシと。
あの~そっちの方が怪我しそうなんだけど。
心配してくれているから別にいいか。
「フレン。痛いんだけど。ちょっと」
「ん。大丈夫そうだな。どこも異常はないな」
いやいや、あんた医療班長だよね。
そんな診断方法でいいのかよ。
「ま、とりあえず。後で向こうの中佐さんが来るからね。カタリナ君、会議室をあけておいてね。ではみんな、解散。少し休憩で」
カタリナは指示通りに動いた。
こうして俺は無事に海賊との決戦へと向かうことになったのである。
転生の宇宙 普通の男子高校生が銀河の英雄に!? 咲良喜玖 @kikka-ooka
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