第4話 息継せのび、紹介されます!




「──と、いう訳で今日から我々のファミリーの一員になる息継せのびくんだ。月代くん、妹尾くん、仲良くしてやってね」


さかやきくん、せおくんと呼ばれた二人は何やらパソコンに向かってかたかたしている手をそのままに、此方にだけ向いて言葉を吐く。


「わかりました社長!!おいきみ!!息継せのびくんだったな!!俺は月代明朗、月に代わって明朗快活で「さかやきめいろう」だ!宜しく頼むぞー!」

「………」


月代さんはお名前の通りはきはきと明るく返してくれましたが、妹尾さんは無言です。というか画面を見ずにタイピングしてらっしゃる……これがぶらいんどたっち、なるものですね!OMG。ああっいけないまた最近話題に上がる外国人系youtuberの真似をしてしまいました。ちなみに外国人さんにブラインドタッチは通じないらしいです。


「おーい妹尾ー!仲良くしないとだろ?社長にも今言われただろ?息継くん、悪いな!こいつは妹尾雄勁、いもうとの尾に、雄勁はそのままでせおゆうけいだ!不愛想というか、愛想という単語を知らないやつだが宜しく頼むぞ!」

「それぐらい知ってる」


おお、妹尾さんから地を這うような声が発されました。さきほどの囃さんも低いボイスな男の方でしたが、この殿方は更に低いです。というか目の下の隈がすごくてすごいです。身なりはほぼぼろぼろ、Yシャツにスーツのズボンという格好ですが、疲労という単語が人の形をしたらこのような様相になるんだろうな、と失礼なことを考えてしまいました。


いつの間にやら社長さんはいなくなってました。神出鬼没です。いえいえ、わたくしがお二人についてぼんやり考え事をしていたからでしょう。わたくしは早速月代さんと妹尾さんに頭を下げます。


「息継せのびと申します、どうぞ宜しくお願いします!なんでもやりますのでなんでも言ってください!!」


月代さんに負けまいと声を張って自己紹介します。はっはっはと月代さんが笑ってくれました。


「おう!よろしくな!今日は二人だけで出迎えて悪いな、他のもんは皆派遣先に行ってるんだよこれが!まぁ歓迎会とかは全員が揃う日とかでやるから心配すんな!幹事は妹尾な!!」

「やらない」

「あっいえそんな、歓迎会なんて……!せ、妹尾さんもこう言っておりますし……」


私が慌ててそう言うと、ひんやりとした声が耳に届きます。




「きもちわりぃ、苗字を呼ぶんじゃねえ」



しん。

……怒らせてしまったようです。

ならば。


「す、すみませんでした!じゃあ、あの」

「……」

「ゆうけいさん、ってお呼びすればいいですかっ!?」


次の瞬間、月代さんの爆笑がオフィス内にとどろきました。

あれ?わたくし、そんな面白いこと言いました?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

余命一年なので社畜になることにしました。 噓つきの画家 @Guernica1140

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ