第3話 息継せのび、オフィスに案内されます!

いやああああだめええええ連れてかないでえええええと泣き喚く嵐さん。

社長考え直してくださいお願いします後生ですからと狼狽える囃さん。

今日も元気だねマイツインズ、と胸に縋りつくお二人の頭をぽんぽんと撫でている推定社長さん、を尻目に、お医者様は「じゃあ俺はこれで。しあわせになれよ」と手を振って去っていきました。わたくしはお医者様にありがとうございます!と深々と頭を下げて、その後ろ姿を見送ります。


「じゃあ行こうか息継せのびくん。私は夷守節気。えぞをまもる二十四節気でひなもりせっきだ。よろしく頼むよ」

「はい、あ、あの宜しくお願い致します!」

「うん、よろしくね。そしてマイツインズ、そろそろパパはせのびくんをオフィスに連れて行かなきゃだから離してもらっていいかな?いいなら自己紹介をしてパパのスーツからそのかわいい手を放してくれ」

「うえええええええんばかああああああ社長のばかあああああああああああ紫雨嵐だよおおおおお!むらさきのあめのあらしでしぐれあらしだよおおおおおお!!」

「社長の人でなし。ひとごろし。ろくでなし!むらさきのあめのまつりばやしで紫雨囃!」

「紫雨嵐さんと紫雨囃さんですね、宜しくお願いします!」


やはり双子さんらしいです。あれ?社長さんはこのお二人の父親なのでしょうか…?いや先刻私にも我が子よとか言ってたような気がしますが。うーん。


「じゃあせのびくん、ついてきてくれたまえ」

「了解です!」

「せのびちゃーーーん!!せめて安らかにいいいい!!」

「息継せのび……R.I.P」


安寧を祈られました。そこまでひどい職場なのでしょうか?わたくしは高鳴る胸を抑えつつ、夷守社長についてエレベーターに乗ります。


ういいん、と静かな駆動音を鳴らして小さな箱が上階に移動する中、隣に立った夷守社長が話し掛けてくれました。


「息継くん。息継せのびくん。叶から頼まれたから今日からきみはここの社員になる訳だが……何か質問はあるかい?」


質問。質問ですか。えーと。


「あ、では素人質問で恐縮なのですが……ここはどういった仕事をする会社なのですか?」

「その枕詞で本当に素人みたいな質問をされたのは初めてだよ、我が子よ。面白い子だね。うちはね、まぁ派遣会社だから色々な職種を体験してもらうことになる。まぁ、せのびくんは社会経験がないからしばらくはオフィス内の雑用から始めてもらうことになるね。慣れたら様々なところに行ってもらうけど、……うん、では、私からも質問を一個いいかな?」

「あ、はい!どうぞ!わたくしに答えられることなら何なりと!」

「うん、じゃあね」


何を聞かれるんでしょう。どきどき。


「うち、退社時間ないけど大丈夫?一回入ったらそこからずうっと会社にいてもらうわけだけど、うちで骨を残すことになるわけだけど、覚悟はできてるかな?」


……ブラックだぁ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る