3.0μmのタイトロープ 【黒歴史放出祭出品】
タンティパパ(猫部)
高校時代の私と親父殿との秘密のキズナ…かな?
あれは高二の春ぐらいだっただろうか
同級生から突然聞かれた。
「頼んでいたアレまだかかる?」
んっ?
「頼んでいたアレ?……」
コイツに何頼まれてたかなぁ…
聞かれた瞬間は何の事か分からなかった。
数秒かけ記憶を辿る。
思考が奥底の記憶に辿り着いた瞬間に自分は頭が真っ白になった。
生まれて17年ちょい、今までに経験した事の無い焦燥感。
『頭が真っ白になる』という感覚をその時初めて味わった。
ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!!
どうする?! どうする?! どうする?!
必死に対処法に頭を巡らす。
その対処法の答えは…
『はぁ…素直に頭を下げるしかないかぁ……』
それは、頼んでいた友人にでは無い。
自分の親父殿にだ。
友人には、真っ白な頭で
「タイミングが難しいんだよ、もうちょっとっ待って」
と、そのような返事をしていたと思う。
確かその日は木曜日
平日の親父殿の帰宅は遅く、母親には知られる訳にはいかない。
親父殿が休みの土曜日、母親のいないタイミングで謝罪するしかない。
自分は、今まで親父殿に怒られた事が無い、注意程度の事が数回ある程度。
親父殿のは、良く言えば放任主義、悪く言えば非干渉。
昭和一桁の親父殿は寡黙だ、幼い頃は会話をした記憶はほとんど無い。
かと言って可愛がられなかった訳では無く、黙って抱っこされ頭を撫でられている記憶はあるのだ。
はぁ、、、初めて怒られるな……
あまり怒らない人の叱責は、骨身に染みて怖いと言う。
でも、逃げ出す事は出来ない。覚悟するしかない。
その土曜日まで、まさしく鬱な日だった。
土曜日、親父殿の部屋にて…
深々と頭を下げて
「申し訳ありませんでした!
あ、あのビデオテープはどうなったでしょうか…」
「ああ、ダビングしてあった裏ビデオか?この裏ビデオは非合法だからな?
あまり友達に広めないようにな」
大したことが無いといった風に、そう言ってビデオを返され…た…。
んっ…?
怒られませんでした……。
そう、数日前に友人に裏ビデオのダビングを頼まれていたのだ。
親父殿が所有する100本以上ある裏エロビデオコレクション
それを1本借りてダビングしてコッソリ戻すつもりだった、しかし自分はダビングしていたのをスッカリ忘れてビデオデッキに残してしまっていたのだった。
今、動画のコピーは2時間の動画であってもコピーには10分程度だろうか?
しかし、当時のビデオのダビングには、3倍速で録画された裏ビデオは6時間、それをダビング(コピー)するためには6時間必要だった。
ずっとビデオデッキの前で待ってなどいられなかった。
そして、その当時ビデオデッキはだいぶ普及したとはいえ一家に一台が普通だった、だが我が家には当時ビデオデッキが3台あった。
そう親父殿が裏ビデオをダビングするためだ。
でも…でも… 、そんなんでいいのかっ?!親父殿っ!
了…
アトガキ:
高校生の頃には何故怒られなかったのか理解出来なかったですね。
今、その当時の親父殿に近い年齢になって分かるんですよ。
「男の子だからなぁ…、しょうがない事だよね」
「なんか凄く恐縮して謝りにきてるなぁ?
お互い秘密ということでそんな気にしなくていいのに」
だったのではないかと思うのです。
応援コメントくださる方は『ホント!男ってバカばっかり!』
を枕詞でコメントお願いします。
3.0μmのタイトロープ 【黒歴史放出祭出品】 タンティパパ(猫部) @tantypapa
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます