後日談 図書室でXXXしてはいけません

【場所 学校の図書室】


 本を捲る音。

 

 キンコンカンコンと下校時間を告げるチャイムの音。


「……あ、もうこんな時間」


 パタンと本を閉じる音。


「うん、結局今日も誰も来なかったね」


「でも、キミとずっと二人っきりだったから。えへへ……幸せ」


「さてと……今日はこの後どうしようか。帰りにどこか寄り道していく?」


「え……たまには図書室でゆっくりおしゃべりするのはどうですか……?」


「うん、それもいいね」


「あ、じゃあちょっと待ってて……」


 ガタッと先輩が席を立つ音。

 図書室の入り口まで歩いていく足音。

 ガチャリと鍵をかける音。

 こちらに戻ってくる足音。


「お待たせ。ふふ……これで誰も入ってこれないよ?」


「だからね、後輩くん。ほら、わたしの隣……もっとそばにきて?」


 あなたが立ち上がり、先輩の隣に座る音。


「隙あり……えいっ!」


 先輩にギュッと抱きしめられる。


「ぎゅー。えへへ……後輩くんの体、温かい」

 

「こうしてるとね、わたしすっごく落ち着くの。後輩くんの体温に満たされて、心がポカポカしてきて、体の奥がジーンってする」


「へへへ、彼女特権。わたしだけの後輩くんだよ。誰にも渡さないんだ。ぎゅー」


「……」


「ねえ、後輩くん……」


「いつもわたしばっかり後輩くんにしてほしいことを伝えて、甘えて……なんだか私ばっかりわがまま言ってるみたいで。後輩くんに悪いなって……」

 

「そんなことない? それならいいんだけど……」

 

「でも、やっぱりわたしばっかりじゃ悪いと思う」


 先輩が顔を上げてあなたを見つめる。


「ね、後輩くん。何かわたしにして欲しいこととかある?」


「わたし……後輩くんがしたいことなら……なんでもしてあげるよ」


「……うん、なんでも」


「だから遠慮しないで、なんでも言ってみてよ」


「……」


「……え、耳かき……?」//予想外の返答に戸惑う感じ


「前に耳マッサージされたのが病みつきになって……今度は耳かきをしてほしかった? こんなときのためにいつも耳かき棒も持ち歩いてた?」


「……」


「……ぷっ。あはははっ」


「ご、ゴメンゴメン、笑っちゃって。だって、二人きりのシチュエーションで、彼女がなんでもしていいよって言ってるのに、出てきた答えが耳かきって……あーおかしい」


「でも今のお願い、すっごく後輩くんらしくて、かわいいよ」


「いいよ、かわいい彼氏の頼みだもん。彼女のわたしがなーんでも聞いてあげます」


「じゃ、後輩くんが持ってきた耳かき棒を貸してよ」


「あは、ふわふわつきのヤツだね。耳掃除が終わったらちゃーんとふわふわもしてあげるね」


「じゃあ後輩くん……わたしの膝に頭乗せて?」


「当たり前でしょ? 耳かきするなら膝枕は基本だよ?」


あなたが先輩の太ももに頭を乗せる音。


「よし……膝枕完成。えへへ……じゃあ始めるね」


「ふふ……いいこいいこ」


先輩があなたの頭を撫でる。


「じゃあ、耳掃除始めよっか。最初は左耳からね」


「まずは耳の周りから」


 耳かき音


「ゆっくり、やさしく……」


「……」先輩の息づかい。10秒くらい


「リラックスして。体の力を抜いて……」


「……」先輩の息づかい。10秒くらい


「じゃあ、少しずつ奥の方に入れていくね?」


「どう? 後輩くん、痛くない? 痛かったらすぐいってね?」


「……」先輩の息づかい。10秒くらい


「ここが気持ちいいの? オーケー……」


「……」先輩の息づかい。10秒くらい


「うん、そろそろいいかな……」


「はい、仕上げのふわふわだよ」


 耳の中に梵天が挿入される音。10秒くらい


「ふわふわ……ふわふわ……」


「じゃあ、仕上げ……ふーっ」


「はい、キレイになった。これで左耳はおしまいだよ。それじゃ次は右耳ね」


「うん、そのままゴロンして……」


 衣擦れの音。


「やんっ」


「ご、ごめん、変な声出しちゃって。膝のうえでクルンてされるのってくすぐったいんだね」


「ううん、イヤじゃないよ。ホントにちょっとくすぐったかっただけだから。それじゃ、右耳もキレイにするね」


「……」先輩の息づかい。10秒くらい


「後輩くん、気落ち良さそうだね」


「なんか、後輩くんが大きなワンちゃんに見えてきたよ。かわいい」


「なでなで……」


「髪の毛もふわふわ。ほんとにワンちゃんみたいだね」


「……」先輩の息づかい。10秒くらい


「……はい、右耳もキレイになりました。じゃあ次は梵天で仕上げだよ」


「ふわふわ、ふわふわ……」先輩の息づかい。10秒くらい


「ふー」


「はい、これで右耳もおしまい」


「後輩くん、もう起きていいよ?」


「後輩くん?」


「え……起きたくない? 永遠にわたしに膝枕されてたい……?」


「もう甘えん坊なんだから」


「あっ、そうだ」//なにかを思いついたように


「そんな甘えん坊の後輩くんは……こうしてあげる。えいっ」


 先輩の太ももに頭を挟まれる感触。



「太もも攻撃! 後輩くんの頭を挟んじゃうよ~」


「ぎゅー」


「えへへ……どう? わたしの太ももの感触……」


「わたし、太ももが太いんだよね。正直ちょっとコンプレックスだったんだけど……でも、こうして後輩くんを挟む分には、モチっと柔らかくて丁度よかったかも」


「ほらほら~、太もも攻撃~。抵抗してみろ~」


「きゃっ、ちょっ、後輩くん……なにモゾモゾして……」


「や、やめて……ちょ、あんっ。やはは……くすぐったい……」


「ちょっと、ひゃははは、ちょっ、あははは……ストップ、ストップ……!」


「ふ、ふぅ。くすぐったかった……もぅ後輩くんったら」


「え? このままずっと挟まれてたら、理性がどうにかなっちゃいそうだったので……? 脱出しました……?」


「ふふ……後輩くんのえっち」


「でも、いいんだよ? だってわたしは後輩くんの彼女なんだから」


「いったよね? 後輩くんのしたいコト……何でもしてあげるって……」


「だから……後輩くんがイヤじゃなかったら、もっといろんなコト……しよ?」


「後輩くん、大好きだよ……!」









――――――


お読みいただきありがとうございます。

本作はこれで完結です。


本作は第3回『G’sこえけん』音声化短編コンテスト参加作品になります。

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まじめ先輩は悪い子になりたい 三月菫@リストラダンジョン書籍化 @yura2write

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