12 コメント欄に煽られることで真価を発揮する人たち
「今日も配信やってくぞー!!」
「皆様こんばんはですわ!!」
………ってことで、雪菜さんのゴリ押しにより、謎の配信に参加することになったわたし達。
いやまぁ、わたしだって割と目立ちたがり屋だし、参加することに異議はないのさ。
「今日は、駅前でゲストの女の子を募集しました」
「どうせわたくし達だけで取れる視聴数なんか限界ありますものね」
「何より、視聴者のお前らが『女の子出さなきゃ登録解除するわ』とか言うからだぞ。てめぇらフザケンジャネェゾコロヤロウ」
「わたくしも女の子ですわよ!?皆様ご存じなくて!?」
だが、例のプラカードを見つけて駆け寄った先にいた配信者達を確認したとき―――わたしら3人は全員絶句した。
「ってわけで、視聴者のエサ―――もといかわい子ちゃん3人組に出てきてもらおう」
「いいね稼ぎのピエロ―――もとい素敵なゲストの皆さん、自己紹介をお願い致しますわ!!」
なぜならそこにいたのは、つい先日戦ったばかりの
「どーも!!みんなのヒロイン、めちゃモテ委員長、浅井雪菜でぇす☆画面の前のみんなを虜にしちゃうゾ☆」
「その大正義ヒロインの唯一の嫁にして母、今日は世界にイチャイチャを見せつける女。足利沙夜歌です〜」
「朝倉リカです。さっきまでイメチェンしてウキウキだったのに今は胃が痛いです。どうしてこうなった…………」
わたしの両隣がウッキウキの中、クズ男こと高坂リョーマ、本名春日太郎がハイテンションで告げた。
「チキチキ!!美少女3人組とヒーロー展を見に行こう〜!!!そして俺らの凄さを理解してもらおう〜!!!」
『いぇーい!!』
「……………」
なーんかわたしだけ取り残されてる感じがするので、気休めにスマホを開き配信画面を見てみる。
コメント
・太郎がウザい
・お前は画面から消えろ
・エリザベスは芸人枠
・ザベスも画面から消えろ
・ゲストのことボロクソに言ってて草
・失望しました。登録解除します
・ゲスト死ぬほど可愛いんだが!?
・太郎、よくやった
・希望を持ちました。登録します
・アテンド能力だけは一流の男
・顔だけなら強いザベスと可愛さの権化たるヒビキちゃんを連れてきた力は本物
・地雷系ギャルと清楚系美人と巨乳アイドルってマ?
・全員最強クラスの顔面偏差値
・どういう3人組やねん、いや神か
・うーん………どこかで見たような組み合わせ………
・もしかして:メンヘラとママと露出狂
・アレと一緒にすんな、この子達が可哀想だろ
・アレと一緒にすんな、あっちは今刑務所だぞ
・アレと一緒にすんな、アイツらはどうせ今も盛ってるから
「―――ブフォッ!?」
コメント
・巨乳アイドルが吹き出してて草
・スマホ見てるってことは………俺たちのこと見てるって………コト!?
・素晴らしい配信
・素晴らしいヒーロー
・素晴らしい企画
・パァン!
・繕ってもどうせ無駄だぞ
・俺らクズリスナーはボケとツッコミに特化してるから………
…………コメントでじゆヒスっぽいとか、じゆヒスへのディスとか流れてて、思わず吹き出してしまった。
いや、イシュタルの話を信じればさ、認識阻害で現実のわたしたちと魔法少女のわたしたちはイコールで結べないらしいんだけど。身バレはしないんだけど。
じゆヒス、ほんとにネットのおもちゃになってるよね…………。
◇
「それではヒーロー展を見ていくぞ!!」
高坂リョーマの生きの良い発声と共に、わたしたちは展覧会の会場へ入る。
「うわぁ…………」
そこには、今をときめくヒーロー達の写真や衣装、使用した武器やらエピソードの紹介やらがたくさん。
それだけじゃなく、悪の組織のメンバー紹介のブースまであった。
どうやら会場と調整済みらしく、わたしたちの近くには人はいないが―――それ以外は非常に混雑していた。何ならわたしたち用に作られた規制線ギリギリに待機しているギャラリーの人もいる。
…………この賑わいが、日本における「ヒーローコンテンツ」の盛り上がりを示す何よりの証拠だろう。
そんな中、リョーマとエリザベスは何やらキョロキョロと何かを探している。
「………ふたりとも、何を探してるんですか?」
わたしが問いかけると、彼らは不満そうな顔で文句を垂れた。
「なんで俺たちがどこにもいないんだよ!?一応有名ヒーローだぞ!?」
「そうですわ!!わたくしたちはネットニュースにも度々取り上げられるヒーロー界の希望ですのよ!?」
「…………お笑い界の雑魚の間違いじゃ?」
「はぁぁぁぁん?さてはアンチだなオメー!?社会的にぶっ殺してやる!!」
「わたくしたちの手にかかれば貴女がたを炎上させる事だってできますのよ!?」
「うっへー、クズ女すぎて好き。ぎゅーしたろ」
「あひん!?やめてくださいまし!!横に来られるとわたくしが美貌で負けてる扱いされかねませんわ!!」
「なぁ俺に来いよ!!俺の隣空いてんぞ!!」
「クズ男担当は隣に居るんで、他をあたってください」
「カス太郎くん?気持ちは嬉しいけど、私アイドルだからその愛には応えられないなぁ☆」
「そんなピアスとタトゥーだらけのアイドルがいる訳ねぇだろ!?」
「タトゥーシール分からないとか陰キャかな?もしかして高校で女の子と話してないのかな?んー??」
「う、うるせぇ!!!俺はエリザベスと毎日たくさん話してるからセーフなんだよ!!!」
「あらー^^ 公衆の面前で惚気けてますなぁwww」
「煽んなこのクソビ◯チギャルが!!…………なんかこの間もこんなノリに巻き込まれた気がすんだけど…………」
コメント
・容赦の無いボケの応酬
・ゲストがメディア慣れし過ぎている件
・なんでカメラの前で一切物怖じしてないんですかね………
・一応その道のプロな高坂とエリザベスを軽く圧倒してんのヤバい
・ポテンシャルの塊
・今すぐ芸人としてデビューすれば良いんじゃないですか?(ハナホジ
・ジェネリックじゆヒス
・早速ファンアカウントできてて草
・てかこの雪菜ちゃんってもしや………
・↑引退済みヒーローの現在は詮索しないのがマナーだぞ
・↑「ヒーローの役目終わったら自由に生きて欲しい」が歴代ヒーロー省大臣全員のお達しだぞ
・それをみんなが守っている。やさしいせかい
・にしては今の大臣ヤバすぎませんかね………
そんなこんなで、この間よろしく雪菜さんと一緒にクズ共を弄んでいると。
視界の端に、物憂げな表情で佇む沙夜歌さんが目に入った。
「沙夜歌さn―――」
「ストップ」
わたしが声をかけようとすると、雪菜さんに人差し指で唇を止められる。
「いまはそっとしておこう、ね?」
その人差し指でわたしの視線を誘導し、彼女と見つめ合う。
彼女の瞳は凛としていて、綺麗で。
赤い瞳は強さを纏っていて。
……しかしその奥に、少しの切なさが感じられた。
―――わたしは勘が鈍くないから、ちゃんと考察ができる。
沙夜歌さんの視線の先にいたのは、今をときめく最強ヒーロー姉妹の紹介。
未だに自分たちの特集を探しながら騒いでいる高坂とエリザベス、【キケンナアソビ】とは比べ物にならないくらいニュースで取り上げられている大人気のヒーロー。
そしてその名前は―――
姉、足利
妹、足利
―――沙夜歌さんと苗字が一緒なのは、きっと偶然なんかじゃない。
男だけど悪の魔法少女になった。しかもお色気担当だったのでヒーローを誘惑することにした。ノリノリで。 棗ナツ(なつめなつ) @natsume-natsu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。男だけど悪の魔法少女になった。しかもお色気担当だったのでヒーローを誘惑することにした。ノリノリで。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます