11 露出狂でもわかる!メンヘラによるファッション解説&コーデ!
「いい?女の子のファッションには多くの系統があるんだけど、まずは自分の着たい服を優先することが大事なの」
駅チカの複合商業施設への道すがら、雪菜さんによるファッションの講義が始まった。
「その上で、派手さと落ち着きとか、カッコよさとかわいさとかのパラメータの、ちょうどいい部分を探していくんだよ」
軟骨を貫いた派手なピアスを触りながら、持論を語る雪菜さん。
…………めちゃイキイキしてる。楽しそう。かわいい。ほらだって隣の自称ママの顔とんでもないし。今にも犯罪に走りそうなくらい眼がキマってる。普通にやめてよ?
「私は色を統一するのが好きで、今日みたいにベージュ系で揃えたりとかモノトーンで縛ったりとかしてて、色でいえば派手さはないかも。
ただピアスとかアクセとか服の丈とか、そういう部分で攻めてるから、全体的には派手なお姉さんに見えてると思うよ」
そう言いながら彼女は、スマホに保存されていた動画を見せてきた。
そこには、ストリートを歩いているへそ出し肩出しホットパンツの雪菜さんがいた。ヘソピアスもネックレスもバチバチにしてる。なんならたぶんシールだけどタトゥーも入ってる。
「私えっちな恰好好きでさ。今日も太ももだしててエロいでしょ〜」
にやにやしながらわたしの手を取り自分の太ももに添わせてくるえっちおねーさん。……やばい破壊力高い。
どのくらいヤバいかというと、隣の限界オタクが鼻息荒くしながらもう片方の太もも触ってるくらいである。首筋の香水の匂いも嗅いでるらしい。
魔法少女中のわたしや雪菜さんも大概だけど、一番あたおかなのは普段からこういうことしてる沙夜歌さんなのでは……?
「一方で、私の犬もしくはお姉様こと沙夜歌は、デザインは落ち着いたものとか大人っぽいものを選ぶ代わりに、色で遊ぶことが多いかな。
今日は珍しくグレーだけど、紫とか青とか赤、ピンクも良く着てる」
沙夜歌さんはその紹介にふふんと鼻を鳴らし、スマホの写真をスワイプしながら何枚か見せてくる。
「わたくしもちゃんとオシャレ勉強したんですよ?雪菜がデザインで攻めるなら、わたくしは色で攻めるおねーさんになるんです」
いずれもワンピースやセットアップなど大人っぽいビジュアルでありながら、ピンクやグリーンなど色の選択に遊び心があった。
あと髪型もいつもの2つ結びだけでなく、三つ編みやポニーテール、ロングにお団子と、かなりバリエーションがあった。かわいい。
どのくらい可愛いかと言うと、隣の情緒不安定さんがとろけた顔でにへにへしてるくらい可愛い。この人他の可愛い女が嫌いな割に沙夜歌さんに対しては結構全肯定だよね………。
「だから梨央くん………じゃなくて梨央ちゃん。貴女が好きなタイプの服やアイテムを選んでみてください。わたくしたちの手で、それを活かせるようなコーディネートをいたします!」
「めっちゃモテ風紀委員長・浅井雪菜、梨央をモテ女にしちゃうぞ!」
そんなイキイキした2人に全幅の信頼を寄せ、わたしはお店を片っ端から物色し始めた―――
◇
「買ったねぇ〜!!」
「買いましたね〜」
「…………良かった、この間のコンテストの賞品で商品券貰えて」
「別にプレゼントでもよかったんだよ?私達そこそこ収入あるしね」
「後輩へのプレゼントくらい造作もないのです!」
「これくらいは自分で買いますよ!!」
ってな訳で、時刻は18時過ぎ。
5時間に渡って店を漁りまくったわたしは、トータルコーディネートを完成させた。
それでは、新生・梨央ちゃんのオシャレコーデを紹介しよう!
まず髪型は、ウェーブのかかったポニーテールに黒のリボン。アニメとかで出てきそうなデカリボンだ。銀髪によく映える。
あとこのウェーブは何故かヘアアイロンを携行していた雪菜さんにやって貰った。女の子ってすげー。
メイクは、儚さを意識しつつ、年頃の女の子っぽさを演出したピンクベースのもの。清楚系アイドルって感じ。
これは雪菜さんの知り合いのショップ店員さんにやって貰った。………人脈もあるとかこの人何者なの?
雪菜さんが地雷系とギャル系のミックス、沙夜歌さんがオレンジ系の大人っぽいメイクだから、3人全員系統が違うのもポイントかも。
そして肝心の服。
上はワンポイントが入った白のスウェット。下はデニム生地でグレーのミニスカートで、年頃JKらしい若さと元気さをアピール。
膝下までの白いハイソックスで色にまとまりを持たせつつ、赤いスニーカーを選んで挿し色をつけてみた。この靴選んだら沙夜歌さんが泣いて喜んでた。ちょろい。
最後に、アクセサリー。
流石にピアスを開ける勇気もないし、変身解けたら開けた穴も消えちゃう気がするので、いくつか落ち着いたデザインのイヤリングをつけている。
雪菜さんがイヤリングやイヤーカフを選んでくれはしたのだが、チェーン付きやらデカいやつやら極彩色やらで個性が強すぎ、全部拒否した。雪菜さん泣いて悲しんでた。めんどい。
………と、こんな感じで「隣に居たら惚れちゃいそうなアイドル!」ってコンセプトで、コーディネートが完了した。
「すっごい良いチョイスだと思うよ!めちゃかわいい!!」
「女の子の才能あるんじゃないですか〜?」
「そうですね、わたしめちゃ可愛いと思います」
「ほんとどこで勉強したんだろ、このセンス……」
「わたくしたちも見習いたいですわ」
「は、はは………ほんとどこで勉強したんですかね………」
…………言えない。
好きな女を脳内でコーディネートしてたからとか、その脳内コーディネートの為に動画投稿サイトゆーつーぶでそういう動画見まくってたとか、口が避けても言えない。
その完璧なコーデやチョイスに最強クラスのビジュアルが入ったら天下無双っスよ、なんて畏れ多くて言えない………。
「いやでも、この激カワ美少女はみんなに自慢したいなぁ〜」
「そうですね。魔法少女のわたくしたちは注目されてますけど、普段のわたくしたちで目立つのもまた一興ですね」
「サクッと目立ってサクッと持て囃されるイベントとか起きないかなぁ!?」
「目立ってるからか分かんないですけど、さっきから男共がチラチラわたくしたちに目線送ってますね〜」
「だよね私の勘違いじゃないよね!?それならなんで話しかけてこないのさ!?」
「勇気がないんですかねぇ?」
「だぁー!勇気くらい出してきてよ!!」
………言えない。
何人かこっちにナンパしに歩いてきたけど、巨乳美人に見えるヤンデレ女が人を殺す眼を向けて蹴散らしてるなんて、言えない。
地雷系ギャルに引き寄せられた男たちが、その横に居座る獣に威嚇され続けてるなんて、何があっても言えない…………。
「いやでも、そんなわたし達に都合の良いイベントなんてあるはずが―――」
バツが悪くなり、そんな事を言ったわたしの目線の先にあったのは、とあるプラカード。
そこには。
【急募!】かわいい女の子3人組、ゆーつーぶの配信に出てみませんか!?【ヒーロー省大臣のお墨付き!】
…………いや、
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