夢に立ち尽くす白い影と交わした『約束』。それを果たすために、ある場所へと向かいます。
そこはかつて、隆盛を迎えた商店街。時代の趨勢とともに今ではさびれ果て、閑散としたシャッター通りと化していました。そこで出会う夢で見た、白い少年。凋落に沈む街の盛衰を、少年の装束や病的な血色で対比する意匠を凝らした筆力が、なんとも巧みです。そこから醸されるホラーとしての赤と白の色彩心理でなぞる戦慄に寒気を覚えます。
しかし、物語前半に抱いた強い恐怖心は、少年との接点・経過とともに次第に薄らぎ、やがて時と場所をともに歩むノスタルジーへと、なめらかに継がれていきます。またそれに伴う少年の口調の変化にも注目したいです。そこから生まれる躍動感から動的・心理的な加速度を感じます。
失われた眺めから追憶の彼方へ。胸中に去来する思いと、懐かしい時代の眼差しで紡がれたノスタルジックホラー小説です。