夏の忘れもの

佐久間 蒼

プロローグ


「ねぇ、太陽くん。」


真夏の向日葵畑で彼女は僕の名呼んだ。

白のワンピースに黄色のリボンの付いた麦わら帽子。長い髪が風に揺れ、大きな目が僕を見た。


「向日葵の花言葉って知ってる?」


「知らないよ。」


僕の問いに彼女は頬を膨らませながら不満げな声をもらす。


「教えてくれる?」


「えぇ〜、どうしようかな」



不満げな顔から今度はいたずらっ子の顔に変わる彼女。ころころ表情の変わるところは彼女の好きなところのひとつだ。



「んー、じゃあ来年もここに来たらその時に教えてあげるよ!」



「来年?」



「そう!来年もここにデートに来るの。その時に教えてあげる!」



「わかった、来年ね。」



「うん、大丈夫だよ!私たちずっとラブラブだから!」



自分で言ったセリフに照れながら彼女は微笑む。向日葵のなかに佇む彼女はとても綺麗で僕はこの時確かに幸せだった。ずっとラブラブでいる未来を想像していたんだ。



だからこの1週間後に振られるなんて思ってもみなかったんだ。


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夏の忘れもの 佐久間 蒼 @aoikuma_kuma

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