○○が見えるメガネを手に入れた!

青樹空良

○○が見えるメガネを手に入れた!

 中学校へ行こうとして家を出たら、うちで飼っている犬のポチが見たことのないメガネをくわえていた。


「また変なもの拾ってきて」


 散歩に行くとポチは色々と拾ってきてしまう癖がある。今日散歩に行ったのは小学生の妹のはずだ。こんなものを拾っていることに気付かなかったのだろうか。


「誰のだよ、それ」


 僕はポチのくわえているメガネを手に取ってみた。


「うわ、ヨダレが……。傷つけたとか言って怒られたらどうするんだよ」


 レンズをポケットから出したハンカチで拭いて、とりあえず掛けてみる。

 その瞬間、


「え?」


 ポチの上に数値が浮かんだ。


『100』


 ポチは僕に向かってぶんぶんと尻尾を振っている。ポチは僕のことが大好きだ。

 ということは、


「ま、まさか。これは、好感度が見えてしまうメガネ?」


 なんか、そういうものが見えてしまうアイテムを漫画とかで見たことがある。

 そこに、


「あれ、お兄ちゃんまだ行ってなかったの? 遅刻しちゃうよー」


 最近ちょっと生意気になってきた妹が現れた。

 数値は、


『10』


 う、低い。

 そんなに僕のことが嫌いなんだろうか。

 小さい頃はお兄ちゃんお兄ちゃんと後ろをついて回っていた可愛い妹だったのに……。


「お兄ちゃん、どうしたの?」

「なんでも、ない……」

「メガネなんかいつも掛けてなかったよねー?」

「うう、行ってきます」

「おにいちゃーん、おーい! 大丈夫~?」


 妹が心配そうに言うけれど、僕はよろよろと学校へ向かった。

 偽りの慰めなんていらないんだ……。




 ◇ ◇ ◇




 メガネをかけっぱなしだと色々見えて無駄にショックを受けそうなので学校に着くまで外しておいた。もちろん、鞄には入れてきた。

 確かめたいことがある。

 僕は登校中の生徒たちがよく見える物陰に隠れた。

 待っていると僕をよくいじめている嫌なやつがやってきたので、見てみることにする。まずは確認のためだ。


『30』


 って、妹より高いやん!

 それはそれでショックだけど、100がMAXだと考えるとそんなもんかと納得する。

 で、本命は僕が密かに好きな女の子。

 小学校の頃から好きだけど告白とか出来なくて、未だに遠くからみているだけの関係だ。

 もし、彼女の数値が100だったりしたら、もう遠くから見ているだけの日々なんて終わりだ。

 すぐにでも告白して幸せな日々を送るんだ。

 彼女がやってきた。

 僕は意を決してメガネを掛けた。


『9999』


「え?」


 思わず声が漏れた。

 彼女がそんなに僕のことを好きでいてくれたなんて!

 もうMAXなんてぶっちぎっている。

 大丈夫、自分のは見えなくても僕の彼女への好感度もきっと『9999』に決まっている!

 こうなったら、今すぐにでも行くしかない。

 人が見てるとか、どうでもいい。

 僕は彼女の元に小走りで駆けていった。

 そして、勇気を振り絞って言った。


「ずっと好きでした。付き合ってください!」

「え、え?」


 彼女は顔を赤くして困った様子を見せる。

 やった! これで両思い!

 そう思った瞬間、


「もう、こんなところで恥ずかしいよー!」


 バゴーン!


 轟音が響いた。

 一瞬、何が起こったのかよくわからなかった。

 どうやら彼女に押されて僕は吹っ飛んだようだ。

 背中からぶつかった木はへし折れて、僕は学校の壁にめり込んで止まった。


「あ、ごめん! こんなところでそんなこと言うからっ!」


 彼女に全く悪気はなさそうだ。

 というか、彼女にこんな力があったとは!

 まさか、このメガネで見えるのって戦闘、力……。


「ぐふっ」


 真実を悟って、僕は意識を失ったのだった。

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○○が見えるメガネを手に入れた! 青樹空良 @aoki-akira

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