伝説の眼鏡

みこ

伝説の眼鏡

 伝説の眼鏡は、異世界に落ちた。


 伝説の眼鏡は、この世に一つしかないものだ。

 どれほど遠くまでも見通せ、どんな者の心でも見透かす。

 それが異世界に落ちたというのだから、世界は大変な騒ぎになった。


 そしてその国を調べ上げる暇もないまま、使者エイリンは異世界に送られる事となったのである。


「ここが……チキュウ?」


 少女は言う。

 紅の髪を靡かせ、獣の翼を背に、空中に静止している。


「図書室にあった同じような名前の国と同じかと思ったけど……違うみたいね」

 小さな本に書いてある事を確かめてみる。

『動力は動物である。四足歩行の動物に車を引かせ、物を運ぶ』

 との事だけれど、この国にはどうやら何か動力源になるものがあるようだ。


「う〜ん」

 考えた末、その本を捨てた。

「違う世界だろな」


 まあ、眼鏡なんていう形状のものはうちの世界にだって一つきりだ。

 あんな、顔に装着するものの使い道なんて限られてるからな。

 この世界でだって困らない、はず。


 そこで、エイリンは、地上を見て目を見張った。


「あ、アイツ……!眼鏡掛けてる!」


 早速、見つけたのである。

 それも、人に装着されている!


 あれが異世界人の手に渡るなんて!

 うちの世界が見つかってしまうのも時間の問題だ。


 ぎゅおおおおおおおおお、と垂直落下を決めていたその時。


 エイリンは見つけてしまったのである。

 もう一つ、眼鏡を……!


「ま、さか……!この世界の伝説の眼鏡……!?」


 二つの伝説の眼鏡が出会う時……!一体何が起こるかなど、わかったものではない。

 それが理解できるのは、世界を統べる神くらいのものだろう。


 食い止めねば!!


 そこで、街の中心らしき大きな通りを眺め、エイリンは驚愕したのである。


「あ……あそこにも……眼鏡が……?あそこにも、あそこにも、あそこにも………!そんな!?」


 使い捨てのように異世界へ送られたエイリンが、チキュウの人民には視力に個体差があるなど、知るよしもなかったのである。




 その事実に気づくまで、実に3年の月日が流れた。


「ふ、ふははははははは」


 エイリンは、空中に浮かんだまま、手のひらに乗せた丸いボールに願う。


「この世にどれだけの眼鏡があろうとも、これの力で暴いてみせる!」


 なんと、自分の世界から持ってきた探知機である。

 これがあると、なんでも探しているものが七色に光るのだ!!


「さあ、光ってみせよ」


 しかれども、チキュウはまさにゲーミング時代を迎えていた。

 PCも光ればマウスも光るし、もちろん眼鏡だって光るのである。


「あ、そこに……、まさか……!他にも……!!!!???」


 エイリンが絶望したのは、言うまでもない。

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伝説の眼鏡 みこ @mikoto_chan

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