君と過ごす日々
月代零
君と過ごす日々
始めは、君のことが好きになれなかった。
だって、君といると、本当のわたしでいられなくなってしまうから。本当のわたしは、もっと可愛いのに、君のせいでわたしの魅力が薄れて、地味で野暮ったいわたしになってしまう。そんなふうに思っていた。顔に異物があるのも嫌だった。
それに、自分を守るためとはいえ、君といなければならないという事実に、なんとなく敗北感のようなものを感じていた。
少し大人になって、君といなくても自分を守る術を見つけた。
その新しいパートナーと過ごす決意をした時、わたしはやっと本当のわたしになることができた。視界はクリアになり、頭も軽くなった気がした。
けれど、新しいパートナーと過ごすのは、手間と労力が必要だった。日々のケアを怠ってはいけないと、口を酸っぱくして言われていたのに、ある日、わたしはその労力を惜しみ、手痛いしっぺ返しを食らってしまった。あわや、光を失ってしまうところだったらしい。
その結果、わたしは新しいパートナーと接触するのを控え、また君と多くの時間を過ごさなければならなくなってしまった。
でも、久々の君との生活は、案外快適だったことに気が付いた。
疲れて帰った時でも、新しいパートナーとだったら、そちらをケアしてからでないとくつろげなかったけれど、君とならそんな手間をかけずにゆっくりすることができた。残業が多くなって帰りが遅くなりがちになってきたわたしにとって、そのメリットは大きかった。
人間、見た目が全てではない。君といると本当のわたしでなくなってしまうなんて思っていたけれど、見た目を繕おうとあくせくしているわたしこそ、本当のわたしではなかったのだ。
本当は、疲れて帰ったら何もしたくない。君ならうっかり寝落ちしても大丈夫だし、ほんの少しの手入れで、わたしの世界に光をもたらしてくれる。
コンタクトレンズも悪くなかったけれど、ずぼらなわたしには、やっぱり君が一番だ。
めがね、最高!
君と過ごす日々 月代零 @ReiTsukishiro
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