第10話 応援

清水と一緒に不良達に絡まれて根性無しだった俺は逃げ出した。

そのお陰でアイツはレイプ同然の仕打ちを受けたと思う。

今でも清水はレンズが厚い眼鏡を...かけたままである。

左目が...視力不足なのである。


「...大丈夫か」

「...まあな。...もう仕方が無いとも言えるけど」


公園で裕太郎とそんな会話を交わす。

それからご飯を食べていた。

箸が止まっている俺に「お前の過去がどうあれ...彼女に対して謝罪をした。...だったらもう彼女の事で悩む必要は無いだろ」と言ってくる裕太郎。

まあ確かにその通りなのだが。


「...しかしお前の過去にそんな事があるとはな」

「人は完璧な生き物じゃないからな。色々あるぞ俺の過去も」

「そうか。...しかしそれでもバラバラの学校に行ったんだよな?再会するとは凄い話だな」

「...そうだな。...俺も衝撃だった」

「清水にどう接するかだな」

「来てしまったもんは仕方が無いしな」


そう言いながらだが俺は冷や汗が止まらない。

やはりアイツとの確執は取れてないな。

そう思いながら俺は弁当を食べる。

すると裕太郎は「まあ厳しい話は置いておいて」と言葉を発する。


「...お前の花嫁ちゃんは元気か」

「揶揄うな。あくまで俺はアイツの保護者だ」

「ははは。すまん」


口が固いので裕太郎には桜子の事を話した。

すると裕太郎は最初はビックリしていたがやがて「そうなんだな」という反応をしてくれた。

そして今に至っているが。

裕太郎はこうして気をかけてくれる。


「元気だよ。アイツは。色々持病を持っているけど」

「そうなのか」

「...ああ。心配かけてすまないな」

「いや。...しかし奇妙な関係だよな。幼い頃に世話した女の子と同居なんてな」

「豊崎は世間体を...気にしていたけどな」

「そうだな。ハッキリ言ってそれは言えるけど」


「だけど誘拐した訳じゃない。そして両親公認なら良いと思うが」と裕太郎は言う。

俺はその言葉を聞きながら「そうだな」と返事をする。

裕太郎は空を見上げる。

それから「恋は良いぞ。...世界が違って見えるしな」と言う。


「...恋人が居るお前に言われたらなんか感慨深いな」

「そうだろ?」

「...でもお前に言われて安心したわ。有難うな」

「そりゃ誘拐してきてそのまま監禁しているならお前をあくまで卑下するけど」


「だけど俺は恵ちゃんとは真逆だな。俺は...お前を応援するよ。桜子ちゃんとお前をあくまでな」と笑顔になる裕太郎。

俺はその言葉に「そうか...」と返事をしながら裕太郎を見る。

裕太郎は「それにその方が良いだろ。お前が病むよりかは」と答える。


「...まあ確かにな。...本当に...そう思う」

「清水の事は仕方が無いと思う。俺は...うん」

「...まあでもそうであってもこのままじゃ駄目だよな」

「そうだが...無理する事は無いから」


弁当箱を直しながら「逃げる訳じゃ無いし。それに...」と言う裕太郎。

俺はその姿を見ながら目の前の空になりそうな弁当箱を見る。

それから「...お前ならどう接する」と言う。

すると裕太郎は伸びをしながら「俺だったら...そうだな。...先ずは潔く対話かな」と笑顔になる。


「...お前らしいな」

「俺はこんな人間だしな。喧嘩できる訳でも無い。だったらやるべき事は1つだ。それは穏やかな対話しかない」

「外国対話の外交官にでもなれよお前」

「嫌だ。それにそこまでの学歴みたいなのが無い」


そして裕太郎は苦笑いを浮かべながら「それに」と言う。

俺はその言葉に裕太郎を見る。

自嘲していた。

そんな姿に俺は「...大学の件は仕方が無いと思う。そしてお前は...本当に頑張ったよ」と言いながら裕太郎を見た。

実は裕太郎は...有名大学を4年生のあと少しの所で中退せざるを得なくなった。


その原因は...親の猛烈な投資による金銭などの不足だった。

そして流れで今の会社に居る。

頭良いのになコイツ。

勿体無さすぎる。


「...やれやれだよな」

「いや。お前は...お前の責任じゃない」

「...FX依存症の親にバイト代とか貯めたお金を吸い取られなかったらこんな事にはならなかったんだが。でもまあ大丈夫だ。大学を行かなくても今は金持ちになれるしな」

「そうだな。学歴じゃ無いぞ。今は。実力だわ」

「だよな。お前本当に優しいな」

「貶されてばかりだけどなお前には。だけど俺はお前が好きだ」

「うわ。気持ち悪」

「は?お前殺すぞ?」


「冗談だって」と言いながら裕太郎を見る。

俺は「知ってるよ」と言いながら弁当箱を直した。

それから裕太郎は煙草を吸い始める。

その様子に「...煙草は止めたんじゃなかったのか」と聞いてみる。


「...まあな。...だけど今だけ吸いたくなった。お前も吸うか?」

「俺は煙草は大丈夫だが吸わないって知っているだろ。...まあもう自由にしたらええがな」

「ああ。サンキューな。忌々しいから吸いたいしな」


しんみりした感じに結局なってしまった。

まあ...今日はコイツにもし「飲みに行くか」って誘われたら付いて行ってやるか。

そう思いながら俺は弁当箱を直しながら空を見上げる。

しかしまあ晴れているな。

忌々しい空気も晴れそうだわ。

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7年前に仲良くなった女の子が7年後とんでもない美少女になってかつての約束を果たす為に社畜の俺の家にやって来たんだが? アキノリ@pokkey11.1 @tanakasaburou

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