めがねの魔法

花月夜れん

めがねをかけたら

 私、魔法使いなの。ただしメガネをかけている時だけ使える魔法しか使えない。


「遊君おはようございます」

「おはよう菜々美ちゃん」


 幼なじみの彼もメガネ君。小学校入学から高校二年のいままでずっとメガネ仲間。そして、


「昨日のチャミキュア見ましたか!?」

「見ましたとも。いやー終盤らしいアツいストーリーがすばらしく。あ、菜々美ちゃんは蒼々のフリーランはみましたか?」

「見た見た! 青い空に向かって走るフリーラン。かっこいいよねー」


 アニメ談義に花が咲く。オタク仲間でもあるのだ!!

 そんなある日、突然。


「付き合って欲しい」

「え?」


 真面目にびっくりしちゃうよね。本当に突然だったから。


「ずっと前から好きだった」


 遊君から告白され、承諾した。そして初デートの日。

 どどどどど、どうしたらいいんだろう。

 少女漫画だと、ヒロインはメガネを外して大変身。なんてしちゃうんだろうけど、無理だ。化粧のけの字もまだ知らない私に変身なんて。

 こんなことならリア充なお姉ちゃんに聞いてお化粧くらいできるようにしておけばよかった。

 制服と部屋着くらいしか持ってる服はない。一応その中で新しめのワンピースを手にし着てみる。

 実はコンタクト初めてではないんだよね。

 でも目が痛くて数時間しか耐えられないから、結局メガネが多くなって。

 怖いけど、コンタクトをいれてデートにのぞむ。


「あれ、遊君?」

「え、もしかして菜々美ちゃん?」


 遊君もメガネを外していた。

 え、なんで? どうして?

 ドキドキしながらの初デートはなんだか楽しくなくて、いつもみたいなアニメ談義とか出来なくて、緊張しすぎて…………。


「菜々美ちゃん?」


 コンタクトの限界だった。


「ごめん。帰るね!!」


 終わった。こんな初デートじゃ、きっと嫌われた。


 翌朝、気まずくて朝はやく出て顔を合わせないまま学校についた。帰りも……。


「菜々美ちゃん。一緒に帰ろう」


 見つかった。だけど、メガネの彼だったから何故かホッとして、私は頷く。


「昨日のアニメさ」

「うんうん」


 やっぱり背伸びなんかしないほうがいいのかな。

 私も遊君もメガネの時はびっくりするぐらいいっぱい話せるんだもん。

 メガネの魔法。これがないと緊張しちゃうんだ。

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めがねの魔法 花月夜れん @kumizurenka

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