彼女が、傾ければ。

うびぞお

お題「めがね」 怖い映画を観たら一緒に夜を過ごそう 番外編

「これ」



 彼女が度が入っていない眼鏡をわたしに掛けさせる。

 これで二人とも眼鏡だ。


「うん、やっぱり眼鏡美人です」

「褒めてる?」

 彼女が頷いた。訳分かんないけど、美人って言ってくれたからヨシ。でも、彼女が変なことを言い出す時は、おおよそ映画絡み。


「何の映画を見たの?」

 わたしが尋ねると、彼女は青い全身タイツに赤いマントの英雄ヒーローの名を挙げた。それと眼鏡とどんな関係があるの?

 わたしが眉をひそめると、彼女が苦笑いする。


「彼は眼鏡を外してシャツを脱ぐと英雄ヒーローの姿になるんですよ。でも、眼鏡を掛けてる時は恋人ですら彼の正体が分かりません」

 知ってる、それ。わたしはズボンをどう脱ぐのかの方が気になる。


「設定にいちいち突っ込んじゃいけないって、教えたのはあなたよ」

「ははは。そうですね。でも、そしたら、あなたの眼鏡姿が見たくなって」

 確かに視力が良いわたしは眼鏡を掛けたことはない。わたしが眼鏡を外そうとすると、彼女がわたしの手を止めた。


「今日はそのまま眼鏡美人でいてください」

 そう言って、彼女はわたしの顔をじっと見る。





 わたしにしてみれば彼女の方が眼鏡が似合う。

 映画を見ているとき、眼鏡に色々な色が反射して、それが彼女の瞳に映り込んでて、目がキラキラして見える。

 それがとても鮮やかで綺麗だと、わたしだけが知ってる。


 眼鏡越しに彼女の瞳を見ていると吸い込まれそうになって、わたしは彼女の顔に自分の顔を近付けていく。いつものように




 がちん!




 わたしの眼鏡のフレームと彼女の眼鏡のフレームがぶつかった。

 鼻のとこがちょっとだけ痛い。


「二人とも眼鏡だとぶつかるんだ」

「大丈夫です」

 そう言って、彼女はいつもより顔を大きく傾けた。




 あ、できた。





「でも、眼鏡、外せば良くない?」

「私、眼鏡外すと目が 3 3 ですから」

「のび太か!」

 

 めちゃくちゃ笑ってから、

 もう1度、

 今度は眼鏡が当たらないようちゃんと気を付けた。






 ★☆

 ネタにした映画「マン・オブ・スティール」

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彼女が、傾ければ。 うびぞお @ubiubiubi

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