第四話

染めているのだろうか、金色の髪が砂ぼこり舞う店内で異質に輝いていた。

ダグトから肝心な頭の部分を取ってしまったような、奇妙なものを手にしている。どうやら武器として使っているらしい。

「あ?なんだお前、どっから入ってきやがった」

ダグトとその奇妙な武器はそれぞれ力を受け、静止していた。しかし明らかに男の方が力んでいる。

「あすんません!!開店前だったすかね。オレ文字読むの苦手で」

大きな声でそう言うと、少年はニヤッと笑って、奇妙な武器を握る力を強めた。

倒れているイヲマオをかばうような姿勢から、一気に立ち上がり、攻めの姿勢になった。

「それともー!!」

少年は男と比べるとかなり小柄で、頭は男の今にも張り裂けそうな胸筋に位置している。

しかし、少年が一歩前に踏み出すと、男は一歩後ろに下がらざるをえない。

男がダグトに送る力は全て奇妙な武器に受け流されている。

「だーれかさんが看板を動かしちゃったのかな!?」

少年は奇妙な武器を先程までずっと両手を揃えて持っていたが、右手だけを横に滑らせた。二つの力点のちょうど間にくるような形となったダグトは、少年がその力点に力を加えるとあっけなく弾き飛ばされた。数秒後ドスンと鈍い音を立てて、男は尻餅をついた。

少年は足を男の腹に置き、手の内でくるっと回した武器の先端を男の鼻先に向けた。

「縄ください。こいつ縛るんで」

少年は男を睨みつけながら、再び大声で言った。厨房に逃げたシュウ親子に聞こえるようにである。

ヤオはすぐに今ある中で一番頑丈な縄を持って行った。少年は縄を受け取ると店の柱に素早く男を縛り付けた。

「お前っ、仕事の横取りか!?誰に雇われたっ!?」

その間、男は叫び続けていた。尻餅をついたとき腰を痛めてしまったのか、それとも敵わないと悟ったのか、どちらにせよ叫ぶだけで反撃をする様子はなかった。

「うるせー」

少年は縛り終えると、男の顔面に蹴りを入れた。

「次起きんのは檻ん中だよバーカ」

アカネはこの状況を呆然と見ていたが、男の顎が外れる音を聞き正気に戻った。

「イヲマオぉ!!」

そして頭の傷を抑えるイヲマオに抱きついた。イヲマオはアカネの体が先に動いてしまうようなところが好きだが、今だけは勘弁してほしいと思った。

「アカネ、あまり抱きしめないでくれ、あばら骨が折れる」

良かった。アカネもヤオさんも無事で。イヲマオは心からそう思いつつも、この謎の少年は一体何者なのか。不安でならなかった。

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下町のイヲマオ 家猫のノラ @ienekononora0116

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