道。

みかんねこ

ある日の会話。

「人生にもさぁ、眼鏡みたいな補助する道具があったらいいのにね」


「なんだよ、藪から棒に」


「いや、人生って眼鏡してないまま歩く道みたいじゃない?」


「……どういうことだ?」


「ほら、私も裸眼だと視力低いから分かるんだけども、眼鏡してないと近くしか見えないじゃない? でも全く見えない訳じゃなくて、ぼんやりと先は見える」


「……なんとなくお前が言いたい事は分かった。それで、なんでまた眼鏡?」


「『人生』っていう道は平坦じゃないでしょ? 躓くような石があったり、穴が開いてたり……場合によっては分かれ道になってたりもする。それがくっきり見えるようになるような『眼鏡』があったら、そう言う『障害』を回避したりできると思わない?」


「……ふむ、未来予知出来たらいいなとかそう言う話か?」


「そこまで見えなくていいんだよ、でも何かあるって見えれば、私達はもっと生きやすくなると思わない?」


「……そうだな、見ることが出来ればそういった『災難』を避けることもできるだろうな。失敗を極力減らすことが出来れば、確かに苦しみは減るだろう」


「でしょ?」


「だが、俺はそれは良い事だけじゃないと思う」


「……なんで?」


「そういうモノが見えてしまうと、人は足元ばかりを気にするようになるだろう。そうなると先に見える大きな『障害』に気付かない可能性がある」


「それは……」


「あとな、『人生』という道の終着点は決まってるんだ」


「どういうこと?」


「死だ。人は皆死ぬ。それは絶対だ。その死の運命がくっきりと見えたら、人はきっと先に進めなくなってしまうだろう」


「……」


「だから俺は見ないほうが良いと思う」


「そうかぁ……」


「でもな、人は一人じゃないんだ。誰かが災難に躓いたら、立ち上がるのに手を貸してあげればいいんだよ」


「……あなたが私にしてくれたように?」


「……俺が躓いた時は、お前が手を貸してくれるだろう?」


「もちろん! 任せてよ!」


「はははは、頼りにしてるよ」

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道。 みかんねこ @kuromacmugimikan

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