汚れたじんのじょう
@bigboss3
第1話
『一八九一年、大久保諶之丞は香川用水計画を提唱した時、「笑わしゃんすな百早年先は財田の山から川舟出して月の世界へ往来する」という都々逸を残しました。その時のだれもがこのようなほらを信じる者はいませんでした。しかし二〇〇年後の二〇九一年。財田町の付近に世界で六番目の軌道上エレベーターが完成し、我が国の新たなエネルギーとなったうえに、世界最初の月面都市ツウェルコフスキーとの交易路にもなりました。これによって……』
端末のタブレットから流れるラジオが直接俺の頭の中に流れ込む。
瀬戸大橋が太陽を背にオレンジから深い藍色に変わる空のもと白い光をともし始めた。
俺はJRからのおさがり品である、電気機関車に乗って 、耐用年数をとっくに過ぎたボロ電車改造の客車を牽いて、政令指定都市の三豊市に向かって走っている。
「クソ、このポンコツ。ちゃんと動けよ」
俺は時々モーターが焼ける音と格闘しながら、だましだまし使っているが、そろそろこいつともおさらばする頃だと感じずにはいられなかった。
四国の工業地帯に到着すると、耳元にインターナショナルという大昔の労働歌が聞こえてきた。下を見てみると、沢山の群衆が蟻のように群がり、プラカードや垂れ幕をもって、反対方向の警備隊に向けて歌を歌っていた。
「これより強制執行をする」
ドローンを使って、そう宣告した警備隊は何やら煙を出す何かを撃ち込んで、蹴散らしにかかる。それに続けて、三機のドローンから音が鳴り始めた。音はドローンを中心にドーナツ状にして労働者を蹴散らす。
「うわ、もっと音量下げろよ」
俺の耳にもその音が伝わり、耳の鼓膜が破れると感じるほどにうるさかった。
思わず俺は列車のマスコンを上げようとすると、思わず、外してしまった。
「うわ、まずい」
慌てた俺はすぐにつけ直し、速度調整した。今頃、後ろの出稼ぎはすごいことになっていることだろう。
そう思いながら、一旦停車の宇多津駅のホームに入った。ここで俺は休憩に入る。ホームにはライフルを持った、半グレ崩れの警備員が目を光らせている。
俺も粗悪な拳銃を腰に隠し、粗末な売店にコーヒーを頼んだ。
「おや、タケル。今日はあんたがあの列車を牽いてたのかい」
「ああ、おばちゃん。コーヒーを頼む。濃いめのやつな」
おばちゃんは手慣れた手つきで、引き立てコーヒーを作る。その手つきは喫茶でも開けそうな位にうまい手つきだ。
「おう、ばばあ、俺っちもコーヒーをくれ。砂糖入りで四人分」
俺が端末でゲームをしているところをさっきの警備員がわって入ってきた。おばちゃんは「順番を守りな」と言って、俺にコーヒーを渡した。
「タケル、景気はどうだ?」
「まあ、そこそこイケてるぜ、キム。最もあれで金は来ているがな」
俺は目の前で錆だらけの機関車を眺めながらコーヒーを飲む
「俺が言うのなんだが、早いとこ新しいのに買い換えたらどうだ?」
「そうしたいのはやまやまだが、ローンはもううんざりなんだ」
その時、塞がれた列車の窓から、一人の乗客が飛び出てきて逃げ出していた。男は中央アジアの言葉で「いやだ、こんなとこ!」と叫びながらホームを駆け抜けようとするが、警備員の銃弾が足に命中して倒れてしまった。
その外国人は銃を持って近づいてくる警備員に「頼む、殺さないで」と片言の日本語で命乞いをする。警備員は薄ら笑いをしながらためらいもなく、引き金を引いた。
ホームにはライフルの甲高い音が響き渡り、命乞いをしていた外国人はホームを血の海にして動かなくなった。
「あーあ、またやりやがった」
キムはため息をつきながら、おばちゃんからコーヒーのトレイを受け取った。
「掃除の人は大変だろうな」
「それもそうだが、ただでさえまずいコーヒーが余計にまずくなる」
キムの何気ない一言におばちゃんは「じゃあ、二度と作らないよ」と顔を膨らました。「別に、おばちゃんのコーヒーがまずいって言っているわけじゃないよ」
キムはいつもの様子でおばちゃんに言い訳をした。俺はその横でわらしながら時計を見ると、後三分少々で発車時刻の時間になっていた。
「うわ、もうすぐ時間だ。おばちゃん、コーヒーありがとう」
端末で支払いを終えた俺はすぐにおんぼろ機関車に乗り込んで発進させようとスロットルを動かした。その直後に床下から爆発音が聞こえ、そのまま動かなくなった。
何事かと思い降りて、列車の様子を見ると台車から白い煙と焦げ臭いにおいが、俺だけでなく周りの人間の鼻と目に入ってきた。
「とうとう、機関車がお釈迦になったか」
俺は頭を抱えながら床にうずくまってしまった。その姿に警備員や売店のおばちゃんも同情の言葉をかけてくれた。
「だから、買い替えろって言ったんだ」
「それよりどうしたらいいんだ。遅れたラ延滞料を取られるし稼ぎも減っちまうよ」
俺は立ち上がって機関車に頭をぶつけた。その様子を見ていたおばちゃんが「じゃあ、隣の機関車を使ってみたらどうだい?」と言ったため振り向くと、本来工事用に使う小型の蒸気機関車が側線で止まっていた。
「あの機関車誰のだ?」
「VE建設の物だろう。ありゃ、最新の機材だ。少なくともジンノジョウエレベーターまでは持つはずだ」
「でも、VE建設はOKするか?」
「心配するな、俺らがなし付けとくから。お前は壊さないように使えばいいだけだ」
そこへ丁度良く建設作業員と運転手が食事から帰って来て、何事かと訪ねてきた。俺は事情を説明して、一往復だけ貸してほしいことと、後でレンタル料を払うことを伝えた。
「ええ、困るよ。これからエレベーターの修理のためにケーブルを運ぶ予定になっているんだ」
「安心しろ、別のやつを準備しておいてやるから、今はいう通りにしろ」
キムの言葉に彼らは渋々いうことを聞くことにした。
「わりいな、我がまま聞いてもらって」
「壊さないでくれよ。それ、大切なものなんだから」
俺は「わかってるよ」と言って運転室の中に乗り込んだ。運転台は二世紀から三世紀まえに比べてかなり洗練されて、扱いやすくなっている。
「よし、このレバーを前にっと」
一応蒸気機関車の免許は持っていたため、動かし方は体で覚えてはいたが、なれなかったため、バックに入れてしまい慌てた。
幸い、キム達に「逆だ」と言われてレバーを反対方向に押して、前進させた。
ゆっくりと着回しをして、壊れた俺の機関車に連結させると、フルにして三豊シティに列車を走らせて行った。
三豊シティ駅に着いた俺は労働者を一旦下ろして、壊れた機関車を知り合いの修理工に運んでもらった。
「こりゃ、新車にしたほうが良い」
それが工員の一言だった。俺は収入が減るため嫌だったが「部品として下取りしてやるから」と説得されて、渋々了承し、俺は蒸気機関車に乗り込もうとした。
そこに端末からのアラームが聞こえてきた。相手は俺の恋人で鉱物学者のモリスからだ」「タケル、聞こえるあたしよ」
「モリスか、一体なんだ」
「今日、ジンノジョウタワーに行くわよね」
「ああ、出稼ぎ労働者を宇宙船まで送り届ける依頼があってな」
「じゃあ、丁度いいわ。今回返ってくる貨物船に最近発見した炭素惑星で発見したダイヤモンドを小島駅まで運んでほしいの」
それを聞いた俺はダイヤモンドと聞いて顔がほころんだ。しかも、ようやく発見した炭素惑星となれば、まさに人類にとっては宝の山だ。
「宝石商人にでもジョブチェンジするつもりか?」
「違うわよ、その宝石の中に珍しいものがあったら見つけてほしいの」
珍しいものとは、恐らく宝石商ががっかりする奴だと察しはついた。
「わかった、屑ダイヤの中に珍しいのがあったら、連絡する」
そういって端末を切ると機関車をバックさせて、客車に連結させた。
ホームでは出稼ぎ労働者は三列に並んで、ゲートを通り仕事の斡旋業者に自らの身分証を渡して、端末の誓約書にサインして登録を済ませる。
そして警備員の監視のもと再び俺の列車に乗り込んだ。俺は出発までの間、紙の本で時間をつぶした。
「よう、タケル。景気はどうだ」
それは同業者で悪友のマスミの声だった。奴はどこから仕入れてきたのか煙草をふかしてやってきた。
「マスミ、今日は仏滅か厄日だ。とうとう、俺の機関車が部品取りに出された。今はVE社のSLを借りて、ジンノジョウタワーに行くところ」
それを聞いたマスミは「とうとう、お前のぼろは壊れたか」と大笑いして、煙草を一本恵んでくれた。
労働者の搭乗は三分の二位まで進んでいた。なけなしの電子マネーで機関車に水とバイオ燃料を満タンにした。
「もし、仕事飲んだら、北米産のムーン・シャインで一杯やるか?」
「そうしたいが、このあともう一つ仕事があってな、俺の女がダイヤモンドが欲しいだとさ」
「結婚指輪にでもつけるつもりか?」
「まだ婚姻届けは出してねえ。あいつは珍しい石を見つけてほしいだと」
「ははは、お前も大変だな」
その話の間に割り込むように、車掌がやって来て「定員に達しました」と俺に伝えた。「そうか、お疲れ。マスミ、飲み会はまた今度な」
「ああ、お前も頑張れよ」
マスミと別れた俺は機関車に備え付けられたカメラでポイントが変わるのを確認して、本線から分かれた支線に伸びる、ジンノジョウタワー線に列車を走らす。
何人かは列車からまた脱走を図っていたがさしたる問題ではなかったため、そのまま無視していった。
財田の山には天を貫く高い塔があった。それは大久保諶之丞のホラがそのまま現実世界に現れ出たものだ。
その夢に反しているのかどうかわからないがジンノジョウタワーの周辺はそれに遠く及ばないビルや、湾岸に匹敵する工業地帯。そして何より建築法違反の建物群が立ち並んでいた。
俺の列車は沿線の人々からの好機の目と端末からのフラッシュに耐えながら、時速三〇キロでタワーに向かう。
「おい、あぶねいだろう」
途中、線路を違法に使うトロッコ業者やわがもの顔で露天商を開く行商人がこっちに気が付いて、線路を解放していく。
俺は汽笛を鳴らして、不法定住者をわきによけた。
「全く、線路の警備位、ちゃんとやれよな」
俺はそう毒ついて、列車を慎重に走らす。街並みはバラックだらけの平屋建てから、二一世紀の建築物に切り替わり始めた。ここまでになると、線路の状況は大きく変わっていく。 線路は高架に変わって、周りには人が入れないようにフェンスが周囲を囲んで侵入者を完全にブロックしていた。
線路の保線もかなり高規格になっていて、八〇キロを出しても、問題なくスムーズに進んでいく。
「おお、ようやく到着しそうだな」
ここまでくると、地球内外の企業グループのオフィスビルが立ち並び始め、綺麗な景色を作り出していた。そしてようやく、列車はジンノジョウタワーの目の前まで来た。
ビルの正面には大久保諶之丞の都々逸が流れるように描写されていた。
俺の列車が駅のホームに入ると、銃を持った警備員たちが目を光らせていた。それに臆することもなく、ブレーキをかけた。
金属のこすれる音とともに止まった列車の扉を遠隔操作で開けると、中から出稼ぎ労働者たちがあふれんばかりに降りてきた。
その労働者に対して、軌道上に静止しているシャトル行き先を示したカンペを持った案内員が、拡声器を使って呼び集める。
「月面行きの方はこちらにお並びください」
「アステロイドベルトの鉱山労働者の方はこちらです」
「フォボスとガニメデ方面は三番になります」
案内員の声に従い、労働者は右も左もわからない様子でその案内員から伸びる列に並んでいく。
そこへ、丁度よくエレベーターが降りてきて、扉が開いた。中から現れたのは数年間の労働期間を終えた別の労働者だったが、その姿はいつ見ても嘆かわしい物だった。
彼らのほとんどが車椅子や松葉杖で体を引きずって現れ出た。
「あーあ、また病院に連れて行かなくちゃいけないのか」
そのケガは宇宙の労働がいかに過酷かを物語っていた。骨粗鬆症や筋力低下、落盤崩壊やガス爆発など様々だ。中には頭と胴体だけになったものが、仲間の遺品を抱えてやってくるという痛ましいものまであった。
「こりゃ、蟹工船よりひでえよな」
「でも奴らだってどんな危険があるかぐらいは覚悟してきているはずだよな」
俺は顔見知りの警備員と斡旋者仲間と見つめていた。危険がない分、俺らも甘い汁をあまり吸えないのが難点だ。
「でも、あれで済んだほうがまだましだな」
「そうだな、一番奥から来る奴の方が一番悲惨だ」
斡旋者がそういうのと同時に中から現れた人たちは労働者というよりもホスピスか大学病院の患者みたいに痩せこけて、点滴を受けながら弱弱しい足取りで出てきた。
「仕方がないだろう、宇宙空間にいる以上ガンや放射線障害は避けては通れない宿命なんだから」
「しかし、労働賃よりも、治療代のほうが高くつきそうだぞありゃ」
確かに、あれぐらいになると、ガン保険がなければ、病死する前に自殺か心中をおこしてしまいそうに見えて心配だ。勿論彼らの命ではなく保証金の関係での話だ。
そんな、彼らの体は弱々しくも、懸命にその足を震わせながら歩いて行く。
「あなた!」
「親父!」
「パパ」
迎えにやってきた家族は、老人のようになった一家の長を見て、涙を流しながら、走ってくる。家族の言葉から出たものは、俺たちに対する怨嗟の声と、悲しみに満ちた声ばかりだ。最も俺たちからすれば見慣れた光景ではあるのだが、こんな光景を知らない人が見れば、涙ちょうだいの番組が作れそうだ。
「はい、長期療養の必要な方はこちらの傷病列車にお乗りください。ご家族が付き添いの方もこちらに乗車できます」
拡声器を使いながら、彼らを列車に誘導する。その列車は赤十字に緑の入った、もしくは三日月のはいった緑ラインと純白の列車が白衣姿の男女とドローンとともにいた。
「三豊シティの附属病院は大入り歓迎だな」
「救急車じゃ間に合わないから、専用の列車を準備するとはな」
「今頃、奴らの口座は桁が超えそうになるぐらいに繁盛しているだろうな」
俺らはそう噂しながら宇宙の採掘場から帰ってきた連中の後ろ姿を見つめている。
病人たちが傷病列車に全員乗り込んだのを確認した乗務員は汽笛一声とともにホームを後にした。
「さて、お見送りはこの辺にして、頼まれた仕事に移るか」
「一体、何を頼まれたタケル?」
俺は仲間内に俺の女から頼まれた仕事を話した。それを聞いた連中はうなずきながら、エレベーターの時刻表を確認した。
「次のエレベーターが、その炭素惑星から帰ってきた宇宙船のはずだ。あと三〇分で降りてくるはずだ」
「じゃあ、しばらく時間はあるな」
「いや、あれを見てみろ」
俺は警備員の指示す方向に視線を向けると、何やら上流階級風の人物やビジネスマン風の女性が電気自動車に乗って、さっきまで汗臭い人が集まっていたホームにやってきた。
「おい、もしかして混み出すのか?」
「そりゃ、そうだろう。あんな宝の星から帰ってきて、見逃さないやつはいないぞ」
「何しろ、炭素だらけの星から帰ってくるのだからな」
「心配するなって、持ってきてほしいのは珍しい石っていってたから少なくとも、商品にならないやつは、見向きもしないはずだ」
俺には確固たる自信がある。あの連中は美しいやつか、資源になるやつしか見向きもしないはず。その目星はついていた。
『まもなく、エレベーターが到着します。ご用の方はお待ちください』
貨物用のエレベーターが地上に降りてきた。みんなの目がエレベーターの扉一点に見つめていた。
エレベーターの重い扉が開くと、中から宇宙服姿の乗組員、三〇人がキャスターを二人ずつ押して現れた。
その瞬間、多くの人々はその紳士淑女の顔を欲のまみれたものに変わって詰めかけた。 俺はその人だかりが消えるかまばらになるかを待つことにした。
「残り物には福来たるってな」
そうみんなにうそぶきながら俺は端末の動画を見て過ごした。
『ニュースです、今日の午後太陽系外惑星、シュバルツバルト876に探査に向かった外宇宙航行船が帰投しました。シュバルツバルト867は史上初めて発見された炭素惑星として注目されてダイヤモンドや石炭ブタンなどが埋蔵されていると思われて、世界中がその探索に注目をしています』
俺は天に伸びているジンノジョウタワーに視線を向けて、その上空で静止する宇宙船が見えないか試してみた。
「やっぱり見えないか・・・・・・」
「見えないって何が?」
「宇宙船だよ」
それを聞いたみんなは、一斉に鼻先で笑い「目で見えるわけないだろう」と言われた。「それもそうだな」
そんなたわいもない会話をしながら時間を潰していると、いつの間にか人だかりが消えて、乗組員や研究者が一息ついて、うちわをあおいでいた。
「じゃあ、そろそろ行くわ」
「気をつけていけよ」
俺は小走りで休憩中の連中に向かった。
「な、何だよあんた?」
「お疲れのところ悪いが、俺にも何かないか見せてもらえないか」
「もう品切れでね、あんたにやれるようなものじゃないよ」
「いや、宝石とかエネルギー関連じゃないよ。俺は友人に頼まれて鉱物学的なものを見に来たんだ」
それを聞いた瞬間、さっきまでのくたびれ感はどこ吹く風と俺を取り囲む形で、目を輝かせて見てきた。
「そうか、それはいい知らせだ。残り物ばかりだが見ていってくれ」
「それはありがたいけど、この手に関してはズブの素人だから、できたら説明してくれないか?」
「ああ、もちろんだとも、まずはこれを見てくれ」
そう言われて、見せられると、ダイヤモンドの中に別の鉱石が混じっていた。本来ならこの手の類いは宝石商がゴミにして捨てられるものだが、学者たちからすればよだれを流して、ほしがるものだった。
「この鉱石は何かわかるか?」
「わからんが、少なくともあんたの友達が喜びそうなものなのは確かだ」
「これはどうだ、ダイヤモンドの中にもう一つダイヤモンドがあるとか」
そう言って、次から次へといろいろな鉱物やエネルギーになり得ない化石燃料類を見せてくれた。正直、モリスが見たらこんなもの地球にもあるわと言いそうなものでもあるが、それが未知のものであれば、少しは喜びそうだ。
「よし、二束三文で譲ってもらうがいいか」
「いいけど、これだけ驚くなよ。とっておきを持ってきた」
「なんだよ、とっておきって?」
その質問に対して、彼らは人一人が入れそうなコンテナを持ってきて、慎重に中身を見せた。その中身はどこからどう見ても灰色のような形をした結晶状の何かだった。
「なんだこれ?」
「驚くなよ、これは人類が初めて見つけた、鉱物生命体だ」
「え、と言うことは宇宙人を連れてきたのか?」
「シー、声が大きい、これはさっきの奴らにも秘密にしていたんだぞ」
俺は疑っていた。確かに三世紀近く前のタコだとか数十年後にはやったグレイトかばかりではないのは頭の中ではわかっていた。実際に太陽系内だけでもバクテリアとか細菌類といたものが見つかったと行っているため、その点は信じていた。でも、こんなものが生き物には到底思えなかった。
「これほんとに生き物か?」
「もちろんだとも、ちゃんと確認はした。確かに、この結晶は生きている。炭素などを吸って生きているし、動くこともできる。これは世界に画期的なことを起こせるかもしれない」「何だ、その画期的なことって?」
「これを応用して、化石燃料で動く乗り物や機械の触媒にできるかもしれない」
それを聞いた俺は「なるほど、そういう応用が利くかもな」と言って話を流した。
「じゃあ、こいつもお願いするわ。ほかにも何かない?」
「これはどうかな、石炭や石油に還元する石とか?」
これはまさに残り物には福来たると言うべきことばかりかもしれない。
三〇分後に、研究者たちが海上コンテナに収めた珍しい石類を現鵜中に詰めたケースに一つ一つ詰め込んで、その中に格納。安全のために、さらにクッション材を詰めて、一両だけ連結したコンテナ車にコンテナを載せた。
そしてまだ借りていた機関車と連結させて、出発の準備を始める。
「タケル、どうだった。お前の女が喜びそうなやつとか見つかったか?」
「ああ、そりゃすごいぜ。これが世に出たら、世界的に有名になるぞ」
そう言って、俺は機関車に乗ると、信号機が変わって、発信してもよいと伝えてきた。 そのとき、端末から電話のアイコンが表示された。それはモリスからのものだった。
「タケル、仕事の方はどう?」
「ああ、今終わったところ。労働者は今頃、輸送用の悟に乗り込んでいるはずだ」
俺はしゃべりながら、列車のブレーキを解除し、マスコンを前進にして、ゆっくりとはしだしていく。
「ところで、例の頼み事はどうなったの?」
早速本代を聞いて来た。俺はまず、そのときの人混みから話に入り、発見したものに関することを隠しながら「いいものを見つけたから、コジマ駅に着いたら見せるよ」と話を切り上げようとした。
「楽しみだわ、早く炭素惑星からの贈り物を早く見たいよ」
彼女は画面の向こうで子供のように胸を膨らましていた。その様子を「また始まったよ」と同僚や後輩たちのため息交じりの興奮がこちらにも伝わりそうな位に伝わった。
「そんじゃ、この機関車を返却して新しいのに付け替えたら、すぐそっちに行く」
そう言って電話のマークをタップして切った後、機関車の前方の様子を備え付けのカメラで確認する。高架の上に輝く液晶モニターには外宇宙往復船の帰投を伝えるニュースが流されていて、そこで発見されたものに関することもの流された。石炭や石油にブタンなの俺たちに必要な資源ばかりがニュースに流されていた。
しかしその中に俺に見せられて、今厳重とは言い難い形で運んでいるものに関してはどういう訳か流されていなかった。
「どういうことだ、発表は控えているのか?」
俺は首をかしげながらも、列車を走らすことに集中させて、スラム街の祖先に入っていった。
三豊シティ駅についた私は機関車をホームに止めさせて、工場に行って新しい車両が届いたのか聞きに行った。
「ああ、ちょうど中古品が流れてきたぞ」
「ほんとか、それにしてもかなり早く届いたな」
「ええ、公園に展示されていたやつを転売しようとしたやつから押収したらしい」
「転売?」
俺は首をかしげて、工員に引きずられるがまま、外に出てみると、思わず愕然としてしまった。それは電気式のディーゼル機関車だった。それ自体は問題ではなかったが、問題はその形式はあまりにも古くさいものだった。
「おい、これって隣県の資料館で保存されているやつじゃないか」
「そうだ、連中無人になったのをいいことに盗んだあげく、中身を別物にまで改造して、売り込むつもりだったらしい」
俺は思わず開いた口が塞がらずに赤と灰色のツートンカラーの車体に触れた。
「でも、部品なんてよく調達できたな」
「いいや、レストアじゃない。質流れのアメリカ製エンジンや電子部品とモーターとかを移植して、付け焼き刃でくみ上げた」
「それでも、いい仕事しているじゃねえか」
実際にこの機関車は外観だけで見ると、見事なまでレストアをしたと褒めても差し支えない位に仕上がっていた。
ちょうどそのとき、EV建設の社員たちが工場の中に入ってきて、俺を呼んできた。
「ちょっと、ようやく見つけましたよ」
「あ、あんたらか。すまない、ようやく返却の手続きができそうだ」
「それはよかった。まあ、それはそうとして、実はあんたの列車で一悶着がおきているぞ」」 社員たちの困った表情を見て、俺は首をかしげて「一体何があった?」と質問した。
「なんか、荷物の検査をさせろと言って、囲みだしたんだ」
「何だって、であんたらのSLは?」
「機関車も汚染されていないかチェックするっていって返してくれないんだ」
「そりゃ、まずいな。よし、この機関車に乗ってそこに行ってみるか」
俺は工員にバイオ燃料を満タンにしてもらい、列車の停止しているホームに向かって社員たちとともに向かった。
三分ぐらいしてそこにつくと、なるほど、俺の列車の周りを明らかに駅員ではない人物たちが取り囲んでいた。
「おい、あんたら、俺の列車に何をしている」
「あんたが、この列車の運転士か。実はあんたの積み荷から放射能物質の積み込みが疑われるから、ここで隔離している」
「何だって、俺はそんなもの運んでないぞ。第一荷物で紛れ込んでいたらわかっていただろう」
「とにかく、放射線測定が可能な要員や機材が届くまで、発車を延期してもらいます」
全くらちがあかない。一体何の根拠でここに止まらなくてはいけないのか。全く理解ができない。
「まずいな、このままだと彼女の約束にも遅れるし、返却もできないな」
「何か、核物質でも運んでいたのですか?」
EV社の連中は俺に軽い気持ちで質問を投げかけてきた。
「まさか、今日はそんな物を運んじゃいないね」
「じゃあ、一体何のために?」
心当たりがあるとすれば、今積んでいる鉱物生命体と二酸化炭素や汚染物質を吸収する鉱物などを積んだもの位だ。
しかし、それがなんだというのか、全く皆目わからなかった。
「とにかく、何とかしてくるから、待っていくれ」
俺はすぐに列車の管理する管理部に連絡を入れて、すぐに解除を願い出た。上層部の返事は全くの頑固一徹な返事だった「一度決まったものは撤回はできない」というばかりだった。そこで、屁理屈で返答することにした。
「わかりました。これはあなたたちの独断と判断します」
「お、おい、ちょ」
通信を切った俺は、すぐにエンジンに火を入れて、走らす準備をした。今ではめったに聞けない、ディーゼル機関車独特の振動と音は、体を身震いさせた。
「おい、まだ、発車命令は出ていないぞ」
周りで警備に当たっていた人間は驚いて一斉に銃口を向けた。その姿を見たEV社の社員たちは恐怖のあまり震え上がる。
「ちょっと、本当に大丈夫ですか?」
「大丈夫なわけないだろう、実質命令無視なんだから」
そう言って腰に持っていた拳銃を取り出すと、彼らに向けた。
「や、やめろ」
「頼む、殺さないでくれ」
「悪いがここで、口を封じてもらう」
そう言って何発も引き金を引いた。弾丸は彼らにうまいこと当たらず、運転席に弾痕を残した。
「え、た、助かっ」
そう言いかけて、俺は彼らの口を塞いだ。ここで余計なことをすれば、俺がやったことが無駄になる。
「いいか、俺はお前らに脅されかけて、しかたなく人質として、連れてこられて、ここにやってきた。そう言うことにするんだ」
その有無を言わせない、態度を示して彼らをなんとか巻き込まれないようにした。俺の真摯な態度に、俺のやったことを理解した彼らはすぐに、黙ってうなずいた。
それを確認し、すぐにマスコンを動かして、列車を強引に走らした。
周りの連中はすぐに銃口を向けると何発も弾丸を撃ち込んできた。それに合わせるかのようにドローンも飛んできて、何か間電気を飛ばしながら、警告してきた。
そんなことなど、気にすることもなく、踏切の人や電気自動車に警告の汽笛を鳴らしてわきよけさせながら三豊シティ駅を後にした。
一時間後、瀬戸大橋四国側の番の州を通過しようとした。車体はどこもかしこもスイスチーズみたいに穴が開いて、寒かった。
「おい、あんた、ここに防寒具はないのか?」
「悪い、買ったばかりの新品だから、ないよ。それに冷房いらずだし、涼しいでしょう」「品のない冗談で寒くしないでくれよ」
その言葉に高笑いしながらなんとなく工業地帯の下を見下げた。
それは、下品な笑いが一瞬で引いてしまうほどにむごい光景が見えた。工業地帯で歌ったっていた、インターナショナルが、耳の中にしか残らず、たくさんの血糊と肉片ような物に、そこから漂ってくる死臭と催涙ガスの煙が鼻をおかしくした。
「ここで何がおきたんですか?」
「いつもの労働運動の類いだろう。だが、今回は治安部隊もかなり強硬な態度で排除したみたいだ」
「うえ、ご飯が食えなくなりそうだ」
社員たちとそう会話しながら、番の州から瀬戸内海に出て、吐き気を催す匂いから、潮のすがすがしい匂いを嗅いでリフレッシュする。
橋の下では、大小様々な船が左右に通り過ぎていていくが、バイオ燃料を燃焼して排出される煙は前世紀の化石燃料と比較しても人体に悪い影響あ与えない。
最も、燃料にされる植物や藻類からすればはた迷惑な話だ。
そして、列車は与島の所に到達する。そこにはかつて賑わいを持っていた、サービスエリアという廃墟が潮風で崩壊寸前になっていた。
「この橋が開通した頃には、たくさんの自動車が止まり、たくさんの人が食事や休憩を取っていたのですね」
「ああ、それが化石燃料が枯渇した上に環境保護が叫ばれてから車は一気に、高級品に逆戻りになったからな」
「盛者必衰の理をあらはす。平家物語の一節そのままの光景ですね」
俺らは朽ち果てた抜け殻の島を背に本州にその足を急がせた。
四国から脱出して二〇分もしないうちになんとかコジマ駅についた。そこは四国あまり変わりなく警備する人間が目を光らせて、荷物の到着を待っていた。
俺はすぐに端末の電話をタップしてモリスに連絡を入れた。
「モリス、俺だ、今コジマ駅に着いた。どこにいる」
「今、階段を研究員数人とつれて上がっているところ、そっちはどうなっているの」
「少しやばい状況でな、いつものことなんだが、逃げてきたところ、でもいつもと様子が違っていた」
「へえ、ニュースが流れていたけど、かなり怒っているわよ」
「とにかく、早くしてくれ、機関車も返さなくちゃいけないから、こいつらにも迷惑かかってしまうから」
彼女はわかったと言って電話を切った。そしてすぐにEV社の社員に振り向くと、すぐに機関車に乗るように言った。
「今から返すからお前らも早くのりな。詰問されても脅されて、人質にされたっていうんだぞ」
「わかりました、あなたもお気をつけて」
俺は機関車と貨車を切り離し、さらに重連状態だった、蒸気機関車と新造に近いレストアを受けた内燃機関車を切り離して、返却の手続きをした。
そして彼らはそそくさと、機関車に乗り込んで、来た方向とは逆に向かって、駅を後にしていった。
「ふう、すっかり迷惑かけしちまったな」
俺はそう言いながら、モリスたち学者連中に視線を向けた。彼らの目は餌に目のくらんだ犬のように輝いて鼻息が荒かった。
「タケル、お疲れの所悪いけど、早く例の物を見せてよ。うちの仲間も見たいってうるさいのよ」
「まあ、落ち着けって。今から見せるから、こっちに来い」
俺は手招きして切り離したばかりの貨車に乗せたコンテナに案内した。そして、その中に入っている、お宝を彼らに見せた。
「すごい、これは人類史史上初の大発見よ」
「そうだ、これは生物史の常識を覆す」
「この鉱石も、温室効果に対する切り札にもなるぞ」
モリスたちは次々とその鉱石群を手に取り、喜びの声を上げた。それはまさに周囲の人間が驚くほどに。
その頃俺はと言うと、腹が空いたため、売店のフライドポテトとチキンナゲットを買って、お粗末なまでの夕食をして、赤く染まった夕日を眺めていた。
それから半年後、俺は新しい相棒となった機関車を使っていつもの仕事をやっていた。 とは言うものの、今までの真っ黒な仕事ばかりしていた俺もようやく運が向いてきたらしく、表の仕事もできるようになった。
「次は、宇多津、宇多津です。お忘れ物おとり忘れにご注意ください」
今日の俺は高知から岡山までの観光列車を引いて、ここで、休憩した。いつもは怖い顔をして、見ているキムも、観光客の前では作り笑顔をしてクリーンな空気を作るようにはしているが、観光客からは評判がよろしくない。
俺は機関車から降りて、売店のおばさんにいつものコーヒーをもらって談笑し暇を持て余した。
「キムのやつ、普段から悪のある笑いしかしないから気持ちわるがれているな」
「ほんとだよ、それもこれもあんたが、あの機関車を手に入れてたおかげだよ」
おばさんは褒めているのか貶しているかわからない言葉を笑みとともに向けてほかの職員たちの軽食を準備していた。
「あの機関車がほんとにいいのかな」
「言いも何も、あの機関車は重文級の品物だよ。あたしだってひいばあさんの撮った写真でしか見たことないのに、それを走らすなんて」
「いや、3Dプリンターで部品が作れたからよかったんだ。そうでなかったら手放していたよ」
周囲のみんなもそろって笑い合っていた。
そこへ、端末からのコールが鳴った。相手はEV社からの物だった。
「はい、タケルです」
「あんたか、私だ、半年前にあんたに機関車を貸した者だ」
そのときの俺は「あんたか、あのことならもう忘れてくれって」と言い、電話を切ろうとしたとき、切羽詰まった声で叫んだ。
「待ってくれ、そのことじゃない、あんたが運んだ荷物のことで、話があるんだ」
「あの、荷物か。俺の女に渡したけど、それがなんだ」
「いいから、来てくれ。重要な話しだ」
俺は首を捻りながらも「わかった、座標を送ってそこで会おう」と言って通信を終えた。
「どうしたの?」
「いや、こっちの話」
俺は適当に話しをはぐらかしながら、疲労のあまり窶れた君を手招きした。
「なんだ、タケル?」
「実は急用ができて、岡山に行けなくなったんだ。誰か代わりはいないか」
「そんなやつはごまんといるが、何があったんだ?」
「ああ、ちょっとした用事だ」
そう言って機関車を切り離すと、そそくさと座標に向かわせた。
座標は軌道上から下ろされたコンテナの集積場。機関車を止めて、辺りを見回すと、そこに、何やら砂漠を旅する人間が着込むようなフードや布を巻き付けた、数人の人物が見えた。その人物は「おーい、こっちだ」と呼んだため、あいつらだとすぐに気がついた。
「なんだよ、なんか逃走中の格好みたいな姿をして」
俺は笑いながら、やって来ると、誰もが深刻な声で口を開いた。
「あんた、あのコンテナの中に一体何を入れていた?」
「なんだよ、ぶしつけに?」
「重要なことなんだ、教えてくれ」
「・・・・・・半年前に炭素惑星から帰ってきた、宇宙船が持ち帰った鉱物だよ」
それを聞いたみんなは「やっぱり」と口々に深刻な声を上げた。
「どうした、何があった?」
「あの宇宙船の乗組員が次々におおかしな行動を取り始めて、精密検査したら、体内に炭素惑星の者と同じ鉱物が脳内に寄生されていたんだ。それを知った宇宙開発公団はすぐに接触者を拘束もしくは処分に回っている」
「初耳だな」
「そりゃ、そうだろ。報道管制を引いて、事態を最小限にとどめているんだ。ところが、あんたが、化石燃料の還元としてあの鉱石を広めたせいで、手に負えなくなっている」
「別に、いいじゃないか。CO2とかメタンハイドレートを吸収して、温暖化とか防いでくれるし、それに人体に有害でもないから、大丈夫じゃない」
俺は他人事のような口ぶりで笑い飛ばそうとした。そのとき顔を覆っていたフードや布を外した。瞬間俺の顔色は真っ青になった。
なんと全員があの鉱石が張り付いていて、まるでタケノコようになって寄生していた。
「ど、どうしたんだ。その顔」
「私たちだけじゃない、今ジンノジョウタワーはバイオハザードレベル2になって、隔離状態なんです」
「しかも、それだけじゃないんです、あの触媒に使っている機械類を扱うところでは、私たちのような人たちが仲間を増やそうとして襲っていたり、機械類を破壊したりしてパニック状態なんです」
俺はその言葉を聞いて自分のやらかしたことの重大さを初めて知った。よく言われる外来生物による環境破壊を推し進めてしまったことを。
「俺はモリスの喜ぶ顔が見られて内心うれしかったんだ。まさか、こんな事態になるなんて・・・・・・」
俺が思わずあとづさりを仕掛けたときに、突如、襲撃のためのドローンが飛んできて、警告音を鳴らして威嚇した。
「職員たちに告げる、無駄な抵抗をせず、おとなしく投降せよ」
俺は思わず職員たちを置いてその場から逃げ出した。自分で言うのも何だが、善人という存在ではなかったため、奴らを見捨てることなど造作もなかった。
辺りにはハエのようにドローンが飛び回り、サイレンや拡声器の声で威嚇した。慌てて機関車に乗り込んで、マスコンを動かし、エンジンをかけると、そのまま、コンテナ置き場から逃げ出した。その間際、銃声のような音が響いた気がしたが気にすることはなく、その場から消えることにした。
「はあ、はあ、やばいことになった」
俺は青い顔をしながら、側線に機関車を隠した。気になってネットのニュースを確認してみたが、それらしい記事は見当たらなかった。
ただ、記事の一つに、半年前の宇宙飛行士たちに関する者があった。
「何々、炭素惑星から帰還した一七人の宇宙飛行士は帰投後、原因不明の発狂を起こし、家族や知人友人を襲う。当局は長い宇宙での生活で精神に異常を来したと発表しているが、一部の有識者の間では、炭素惑星での細菌やウィルスで脳をやられたと言われていますか・・・・・・」
俺は少し身震いがしたが、やっぱりあれが関係しているのではないかと、不安が雪だるま式に大きくなるのを感じた。
ふと、俺の頭の中にモリスのことがよぎった。あいつは大丈夫なのだろうかと思い、電話をタップして連絡を入れた。
「おかけになった電話をいれましたが、お出になりません。しばらくお待ちください」
何やってやがる、早く出やがれ。俺は不安と恐怖が混ざり合って、いらだちが募るばかりだ。
俺は五回も電話をしたが全くつながる様子もない。苛立ちのあまり、機関車の運転台を叩こうとしたとき、コールマークが出た。
「お、モリスのやつ。ようやく出てくれたか」
しかし、それはモリスの番号ではなく、彼女が所属する施設からの電話だった。思わず落胆して電話をつなぐと、それはいつも彼女にコバンザメのようにくっついている研究員の一人からだった。
「つ、つながった、タケルさんですね」
「そうだけど、どうした。そっちも大変そうだけど、一体何があった?」
「実は、モリスさんたちが恐ろしい行動に出ているのです」
「な、何だ、恐ろしい行動って?」
俺は持っていた端末の手がバイブのよう震えていることに気がついた。何かよくないことが、起き始めていることに気がついた。
「と、とにかく、与島まで来てもらえませんか、大至急」
「わかった、けどこっちもやばくてな」
「事情はわかりませんが、とにかく来てください」
そう言って伝はの接続を切った。急がない行けない。俺はすぐに機関車を側線から本線に戻すと、急いで与島に向かった。
与島に着いた俺は、朝日が昇る太陽を背に連絡が来るのを待った。
一五分後、俺の端末に連絡が入った。その番号は非通知になっていたが、その相手が誰なのか察しがついた。
「お前か、今どこだ」
「今、廃墟の中で息を潜めています。当局の追撃が激しくって」
「こっちも、それにおびえている。所でモリスは今どこにいる?」
「彼女は今、ジンノジョウエレベーターに向かっています」
なぜ、そんなところに向かっているのか。俺は不思議に思ってそれを問いただした。
「彼女たちは長いことあの鉱石と触れてしまって、ほとんど、乗っ取られている状態です。それで、彼女たちは高いところに行けば生息範囲を広げられると言って出て行ったのです」
「それは、一体どういうことだ?」
「ウィルスや寄生虫がカタツムリとかに寄生してそれを鳥に食べさせて、別の場所に生息範囲を広げる習性がある者がいます。それと同じように彼女たちも、軌道上エレベーターに乗って、そこから往来する宇宙船に乗って生息範囲を広げようとしています」
生き物に関する知識に疎い俺は何が何だかわからないが、最後のニュアンスから広げようとしているのはわかった。すぐに、どうしたらいいと聞きかけたとき、与島周辺に小型艇が集まりだして、辺りを包囲し始める。
「おい、早く逃げろ、捕まっちまうぞ」
「いいんです、もう私も意識を保つのが精一杯で、ただ、発信器の探知装置は持って行きますから」
その直後、銃声がとどろき、廃墟の中から電気自動車が勢いよく飛び出して、朽ちかけたループ線を勢いよく上る、俺はループ線に一番近い所で、探知機を受け取る準備をした。
「おい、こっちだ。早くそれを投げろ」
電気自動車が止まったとき、コンクリートが崩れ始め、足場が無くなりかけルのが見えた。かれは窓から身を乗り出して、それを投げる準備をする。しかし、その彼の体は至る所、鉱物が張り付いて、人間とも思えない姿になりかけていた。
「おい、お前もまさか?」
「私のことはいいですから早く、彼女を止めて」
そう言った直後彼は足場が崩れるのと同時に探知機を投げた。俺はなんとかそれを受け取って、それを確認する。
それとともに音を立てて崩れ他ループ線とともに、彼もまた地上に落ちて自動車は彼の棺になった。
俺はすぐに機関車に乗ると、地目さんにその場から逃げ出した。
その車内で、俺は探知機と端末を同期して今彼女がどこにいるのか確認する。それは切羽詰まっていること指し示していた。すでに彼女は三豊シティに到達していた。
「こうなった、宇宙船に到達する前に、タワーごと爆破しないと」
そのときの俺は、彼女を止める事で頭がいっぱいで、その後の展開のことのなど考える暇などなかった。
「でも、あのタワーを爆破できるほどの爆薬なんて、そんな簡単に見つけられるわけがないのに」
そう言って、間違って、爆発物の精製を検索してしまった。検索し直そうとして、タップしようとしたとき、ある記事に目がとまった。
「これだ、これならすぐにでも用意できる」
そう考えた俺はすぐにキムに連絡して貨物に関する情報を連絡した。
一時間後、俺はバイオ燃料にするための作物を大規模に作る農場が近くにある駅に慎重に近づいていった。
そこには貨車一五両が鎮座していた。おそらくその中に入っているのは硝酸アンモニウムがまだ積まれているはず。ポイントがまだ切り替わっているのを確認した俺はすぐに、機関車と貨車を連結させる。
「おい、お前一体何をやっている」
現場監督の叫ぶ姿を尻目に俺は急いで機関車を走らせて逃走を開始する。周りにはたくさんの銃を持った人間やドローンが追いかけてくるが、追いつけるはずもなく、その場を後にして次の目的地に向かう。
一五分後、今度は番の州にある化学工場に忍び込む。その中にたくさんの化学燃料のタンクが立ち並んでいて、そのホースを勝手に拝借して、硝酸アンモニウムも入った貨車に液体燃料を大量に流し込んだ。
一両が混ざり合うまでに十数分ぐらいかかるため、全車両を混ぜるのに数時間かかる計算だ。俺ははやる気持ちを抑えながら、一両一両に液体を注入する。
そして最後の貨車に液体燃料をいれ終えた直後に、誰かが叫んだ。
「こら、何をやっている」
その叫び声に驚いて振り向くと、今度は重武装でやってきた警備員が信じられない数でやってきた。
俺はすぐに化学燃料が未だに出るホーズをほっぽり出して、機関車に乗り込んで、フルで逃げ出した。これで爆薬の生成は完了した。後は導火線をキムに受け取ってジンノジョウタワーに向かうだけだ。
俺は三豊シティ駅に急いで向かってマスコンを全開にして向かっていった。
三豊シティ駅では厳戒態勢になっていた。ネットでのニュースでは反宇宙開発を表明するテロリストによって占拠されたと報道された。最も、ジンノジョウタワーを中心に鉱石が至る所で樹勢していた。まるでキノコか菌類のような状態だ。早いとこ、蹴りつけないと行けない。
ホームではキムが束上にしたコードを持って待っていた。俺は列車をホームに止めて機関車から降りると、キムに「キム、早速だけどそれもらうわ」と言ってコードを取ろうとした。
そのとき、反対側の手にどこから出したのか手錠を取り出して俺の手をかけた。
「おい、何のつもりだ」
「悪い、アキラ。お前は拘束させてもらう」
その直後、さっきまで警備していた連中の銃が一斉にこっちに向いた。俺は一瞬で真っ青になってしまった。
「アキラ、お前のやろうとしていることはわかっている。その、列車爆弾で軌道上エレベーターを破壊するつもりだろう」
「だったら何だって言うんだ。俺を止めると人類に悪影響を広めるだけだぞ」
「お前のやろうとしていることだって、別の意味で悪影響を及ぼすぞ」
俺を止めようと必死になりながら、脅しをかける。そのとき、テロリストから連絡が届いた。
「おい、あんた。その電話、テロリストからか?」
「そうだが、お前と一体何の関係がある?」
「そのリーダーって女か?」
それを聞いた警備員は驚きのあまり目を丸くしてしまった。俺はすぐに電話を奪うと怒鳴りつけて「モリス、お前だろう」と言った。
「ピンポーン、よくわかったね」
「聞いたぞ、鉱物に頭やられて、おかしくなったって」
俺のその切羽詰まった言葉を聞いて誰もが空気を張り詰めた。この様子だと事態がかなりやばくなっていることは察するにあまりあった。
「タケル、どうしたの。いまから宇宙船に乗って、月に行こうとしているところだけど」「研究はどうした?」
「研究、あんなあほらしいことやっていられるわけないでしょう。それよりもどう、研究仲間と一緒に移住しようと考えているの」
「はあ、やっぱりなあ。それで月都市に鉱石をばらまいて、それをほかの人にまで菌類みたいに放出させるつもりか」
その言葉の聞いた彼女はスピーカー越しに「一体何の冗談なの」と答えた。
「そうだな、半年間仕事漬けだったから、お前にも会いたいと思うから、カメラにしてその顔を見せてくんないかな」
その言葉を聞いたモリスは沈黙して何も答えなかった。俺は「どうした、せっかくこっちから会いたいと言っているのに会えないのか?」挑発して見せた。
「じゃあ、せっかくだから見せてあげるわ」
そう言ってカメラモードになって、その姿を見せた。俺は思わず姫をあげそうになってしまった。
その映像には,キノコか植物のように張り付き、何人かの研究員だった鉱物は、頭や体が張り付きながら、意思があるのか無いのかわからないような動きをしながら、音を立てていた。
「おい、早いとこ投降して、病院行ってこい」
「なんで、別に病気もけがもしてないのに」
「どこがだよ,明らかに隔離か抹殺レベルだぞ」
「ははは、おかしなこと言うわね。まあ、気が向いたラ一緒に来てちょうだい」
そう言って通信を切った。やばいことになった。早くしねいと地球レベルの問題ではすまなくなる。
「アキラ、モリスはもう・・・・・・」
「それ以上言うなキム。自分でまいた種は自分で刈り取るか除草すればいい」
強がりは言ったが,心の中では死ぬ覚悟ができていないらしく、震えていた。
「これ以上の深入りはするな、この事件は当局が担当する」
「残念だが、もう準備はできているから。止めても遅いぞ」
そう言って俺は君のみぞおちにパンチを入れると導火線を奪って一目散に機関車に乗ろうとした。そのとき足下に銃弾が着弾する音が聞こえた。
「やめろ,アキラ。死にに行くようなものだぞ」
俺はすぐに乗り込むと,列車をバックに入れて、後ろから走っていった。詰まるところ最初っから生き残る事を目的にしているのだが。
ジンノジョウタワーの周辺は至る所、鉱物だらけになっていた。よく見ると二酸化炭素のよく排出される車や工場を中心になって、大きく成長していた。
「やばいな、二酸化炭素を吸収して成長するようになってる」
俺は焦りに焦って、貨車の一両一両にねじ込んでいた導火線に火をつける準備をした。 そのとき、俺の端末に連絡が入った。
「アキラ、気が変わったの?」
顔半分が結晶になっている彼女は笑顔を作りながら、聞いてきた。
「いや、俺はここで下請けの仕事していた方が幸せだ。見送りに貨車一五両分の荷物を持ってきた」
「あら、残念。せっかく、一人分の席空けておいたのに」
「ほんとだよ、こっちだって冥土の土産をたくさん持ってきたのに」
それを聞いた何人かは一斉にカメラの方を向いた。
「め、冥土の土産って?」
俺はモリスの質問に導火線に火をつけてそれに答えた。それを見た全員は一斉に顔を青白くして沈黙してしまう。
「わりいな、お前らを宇宙にあげるにはやばすぎるからな」
「馬鹿なこと考えないで、自爆攻撃でもするつもり?」
俺は鼻で笑って「お前らと心中なんて考えてもいないぜ」と言った後、連結器の解放のレバーを引いた。そして同時に空気ブレーキを急停止した。
そしてさっきまでつながれていた、貨車は速度を緩めぬまま、慣性の法則で特急列車のようなスピードでジンノジョウタワー駅に向かって走っていった。
「まさか、未来の時代に、突放なんてするとは思わなかった」
突放とは貨車の入れ替えの際に機関車と貨車を切り離して無人のまま走らせる技術だ。システム化されたこの時代では完全に失われた技術だ。
貨車の方は導火線の煙をあげながら、勢いよく突っ込んでいった。
「アキラ、やめて私たちを殺さないで」
「ごめんな、モリス。これが俺のけじめだから」
そう言って俺はエンジンを逆回転にして全速力で逃げの一手に回った。
三〇秒後、ジンノジョウタワー駅からすさまじい爆発音と、爆風な飛んできて、機関車のガラス窓を割った。顔の何カ所にガラスが突き刺さり、痛みにこらえながらも全力で逃げ出す。
そして、カーボンナノチューブで頑丈に作り上げたジンノジョウタワーは俺が自前で作った手作り爆弾の一撃で大きな音を立てながら,地面に倒れていった。
よく見ると、一番てっぺんのところが大気圏の摩擦熱でバラバラになり白い帯を立てながら、燃えているのが見えた。
さらに悪いことに、その倒れる方向が俺の進んでいる方向とほとんど一緒だからたまったものない。
俺は必死になりながら逃げて逃げて逃げまくった。そんな俺の努力をよそに塔は嫌がらせみたいに倒れてくる。
そして、頭の中に走馬灯のようなものが流れ込んできたかと思うと、俺の機関車のすぐ隣で、大きな土煙とともに塔が倒れて閉まった。
思わず急ブレーキをかけて止まり、早鐘のように鳴る心臓を落ち着かせて、深呼吸した。「おい、アキラ大丈夫か?」
「お前、とんでもないことしてくれたな」
キム達が血相を変えながらこっちにやってきた。改めて俺の隣にある塔だったものを見つめると、ようやく自分のやらかしたことの重大さを改めて知ることになった。
三ヶ月後、俺は三豊シティの附属病院にある集中治療室で鉱石の除去手術を終えたモリスを眺めていた。
「どうですか、彼女の容態は」
「少なくとも、あらかたの切除は終わりました。ただ、このような症例は前例がないためどれほどの回復が見込めるか、現段階ではなんとも・・・・・・」
医者ははぐらかしているが、顔から見てやばい状態のなのはアキラかだった。
あの後、多数の犠牲者を出しながら、なんと奇跡を超えて信じられないことに、モリスだけはどういう訳か助かっていた。
そしてすぐに、ここに運ばれた訳なのだが、昏睡状態の上に,彼女の体は鉱物で繭のような状態になっていたため、除去するのに困り果てた。でなんとかめどがついて現在に痛っ訳だ。
「それにしても、ジンノジョウタワーを爆破するなんて、馬鹿な人がいるもんだな。おかげで町は完全に寂れて、こっちの商売もあがったりなのに」
「・・・・・・そうだな,馬鹿なことをしたやつもいるもんだな」
最も俺はその馬鹿なことしでかした張本になのだが。
俺はお医者さんから話を聞きながら、首につけていた二つの指輪をいじっていた。
「それは,彼女のプレゼント?」
「ええ、まあ、そんなところです」
「大切にしなさい、そして目が覚めたら、かならず渡してあげてください」
そう言って医者はその場を後にした。俺は目をつむったまま意識が全く目が覚めない彼女を呆然と見つめるほか無かった。
そのときかすかだが,指が動くのが見えた気がした。俺はすぐに幻覚でも見たのかと思って何度も目をこすりながら、確認した。今度はゆっくりと目が開くのが見えた。俺は喜んで胸の指輪を触った。ふと胸の中に何やら固いものが触れる感触を覚えた。
確認してみると、それは鉱物の形をしたきらびやかな結晶体だった。
了
汚れたじんのじょう @bigboss3
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