三月の、夕日が彩る君の前髪。
源なゆた
三月の、夕日が彩る君の前髪。
三月の、夕日が彩る君の前髪。
その下では、いくらか透き通った赤い
「どうかしたの?」
私より頭一個分は低いところから、おさげの天使があどけない声を
窓から校庭を
「いや、今日も君は天使だな、と」
「なっ、もう、ここ教室だよ!」
そう。ここは教室。女子高らしく、華々しい
「大丈夫だよ、誰も居ないから」
「そういう問題じゃなくて。ダメだよ! 学校じゃ」
わざとらしく
「ダメだって、こーら!」
抱き寄せようとしたが、本気で
「今日が最後なのに?」
旅立った卒業生は、もう教室へは来ない。何か用事があっても、せいぜいが事務室までだ。あるいは教育実習という場合もあるだろうが……私達にはそういう予定は無い。
「最後だからこそ、しっかりしよ、ね?」
私の天使はあまりにも
浄化された先からまた湧き上がるのだが。
「一度だけ、ダメかい?」
「ダメだってば。……もう、『思い出作り』ってそういうことなの?」
二人きりでの思い出作り。わざわざ戻ってきた理由。口実とも言う。
「そんなわけないさ。第一、学校中を散々回っただろう?」
既に数時間、特別
この三年間、先生方には二人揃って可愛がって頂いた。そのお礼参りでもあった。……本当だよ?
「それは……そうだけど」
「あっ、ちょっと、ダメだってば!」
隙を突いて強引に抱き
「あんまり
「ダメだって……もーぉ」
耳元で軽く
ごめんね、私は悪魔だから、
「……しないの?」
天使の
「……したいの?」
意地悪してみたくなった。
「……知らないっ!」
耳まで真っ赤にした天使が、私にきつく抱きついてきている。
赤ずきんちゃん、
「ごめん、ごめんって。あまりにも可愛すぎて、からかいたくなっちゃったんだ」
「……」
「ごめん。ごめんよ。……ごめんね、
「……! ……!」
再び囁いたところ、猫パンチでももう少し威力があるだろう、可愛らしい拳が私の胸を叩いた。
少しだけその幸せな感触を
「キスして、いいかな? 唯」
「……さおちゃんの、馬鹿」
そよ風のような
「大好きだよ、唯」
「私も、大好き」
眼鏡越しのキスは、我ながら上手くなったと思う。
三月の、夕日が彩る君の前髪。 源なゆた @minamotonayuta
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