『KAC20248』メガネ派

シーラ

第1話

「可愛いよなぁ。」


「メガネ、マジでタイプ。」


昼休み時間。図書室に行って寝ようとしたら、大人しめの同級生2人が隅でコソコソと何かを読み合っている。


「運動神経良くて、このボディ。たまらん。」


「発情期は一年中!だってさ。他にないタイプだよな。編集も力入ってるよな。」


遠目で何か雑誌を読んでいるのは確認できた。こんな所でいかがわしい物を読むとは。俺も混ざろう。


「飾り気の無い愛嬌ってヤツかな。」


「わかる。」


俺は背後から近づいて、2人の背中をドンと叩く。


「お前メガネ派なの?俺はぁ……!」


言いかけて、2人の見ている雑誌が目に入る。そこに写っているのは『メガネザル』だった。


2人が俺の言葉の先を聞きたそうにしている。マズイ、そっちの話だったのかよ。必死に脳味噌を働かせて回答を探し出した。


「わぁ…わぁオキツネザル(ワオキツネザル)派だ!」


2人は俺の答えにニッコリと笑った。


「わかる。尻尾可愛いよな。」


「歩き方も可愛いよな。」


尻に変な汗をかいたが、何とか危機的状況は回避できた。やれやれと去ろうとすると、隣に腰掛けるよう誘われた。

ここで退散すると、疑われそうだ。仕方なく誘いに乗る。


「ワオキツネザルも良いが、シロテテナガザルも良いんだ。類人猿と呼ばれているだけあって、人に懐いててさ。

この前動物園に行った時に、飼育員さんからバッタを貰って食べさせたんだ。」


「そ、そうか。」


「知能が高いと人の顔も覚えるんだってさ。」


「あ、うん。そうか………。」


欠伸を噛み殺して2人の話を半分寝かけつつ聞く。俺の思っていたのと違う昼休みは過ぎていった。

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